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葉子と夏  作者: 結姫普慈子
第二章 前日
15/23

15. ピザとドリンクバー

 お昼休みが終わった後、私は最後の授業中に先程の書きかけのノートの絵を書いていた。高層ビルの屋上にある木製のゲート。それを緻密に書き込んでいく。

 そしてそれは現れた。

 私は書き終えた。

 世界の果て。

 横でコソコソと雅が話しかけてきた。「何書いてるんだ?葉子」

「これはね、秘密なの」

「ずっとか?」

「それはわからないけど」と私が言うと、雅はふーんと言って目を授業中の先生に戻した。



 私はノートを机の中にしまって、代わりに真里が置いていった小説、「神々の白紙」を取り出した。そういえば返していなかったなと思ってからそのページを開く。

 そのページには・・・


 やがて授業が終わってから、担任の先生がやってくるとみんなに今日の学校の終わりを告げ、去っていく。

 私は雅の方へ向くと、「それじゃ何処へ行く?」と言った。

「高校生らしく無難にファミレスだな」

「わかった」

 私は真里に小説を返した後に雅とともに教室から出ていった。

 私達がファミレスに着いた時、辺りはもう夕暮れだった。店内は空いていて私達は直ぐに席に着くことができた。

 制服姿の二人を店員のお姉さんがチラチラと見てくるのがわかる。きっと初々しいカップルに見えているのだろうと私は思う。その事に私はなんだか嬉しくなる。

 きっとこれから始まるのだ。本当の始まり。

「なあ、何頼む?」

「そうね、ピザとドリンクバーでいいんじゃない?」

「ピザとドリンクバーな。ピザは三枚くらい頼むか」

「いいわね」私は心臓が喉から飛び出るようであった。ドキドキしている私。香水の効力がそろそろ切れる頃合いなので私はトイレに向かうことを雅に言うと、

「それじゃ頼んでおくからな」

「OK」私はそう言ってお手洗いへと向かう。


 手洗いに着くと鏡で自分の顔を確認する。顔は薄く汗ばんでいてそれをタオルでやさしくなでる。

 それからバッグからパルファムを取り出した。今朝着けたラベンダーの香水だ。それをうなじに落とし、制服のシャツをたくし上げるとおへそに垂らす。

 私の匂いがし始める。すーっと鼻でその香りを嗅ぐと段々と私は落ち着いてきた。トイレの曇りガラスの向こう側はオレンジ色だった。

 私はなんだかその明かりに目が滲んでしまって涙が出てきた。タオルでそれをそっと拭き取ると香水をバッグにしまい、軽く手を洗ってからトイレから出ていった。

 席では雅が待っていた。彼の後ろ姿が見える。少しだけ私はトイレの扉の前で彼を見ていることにする。

 彼はドリンクをストローでちゅーちゅーと吸っていた。ドリンクはメロンソーダだった。私もそれにしようとドリンクバーに向かう。

 棚からグラスを取り出してメロンソーダを中に入れる。ストローをすとんを刺すと席へと戻っていった。

「葉子もメロンソーダか」

「あら、お揃いね」

「うん。葉子からラベンダーの匂いがする」

「香水着け直したの」

「すっげー似合ってる」

「ありがと」

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