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悪役令嬢は退場しましたけれど、お幸せですか?  作者: せりざわなる
第1幕 リリアーナ・エルトリト
5/21

側妃たちの会合

ラ、ランキングがっ!本当ですかっ!

ありがとうございます…!

2年後。

私とルシーダさまが招かれ、シンシアさまの宮でお茶を楽しんでおります。


「ルシーダさま。王子とご一緒でもよろしかったのに」

「あの子はまだ、1歳になったばかり。周囲に興味を示して、動き回るようになったのよ。そして、すぐに寝てしまうの。だから、まだ私の宮から出せないのよ。ごめんなさいね」

「残念だけど、仕方ないですよね。私も王子にお会いしたかったですけど、健やかにに育つ為ですもの。ぷにぷにのほっぺたは我慢します」


私が問えば、ルシーダさまは謝りつつも、わが子を想って顔を綻ばせ、シンシアさまは残念がりながらぷう、と頬を膨らませる可愛らしい仕草を見せました。


「シンシアさまも、後三月もすれば、我が子のぷにぷにほっぺたと会えるではありませんの」


時を経ても、少女のような可愛らしさの残るシンシアさまに、私達は声を立てて笑ってしまいます。

シンシアさまも笑いながら、己の膨らむお腹を愛おしそうに撫でました。


「長いような、短いような……。学院時代では、想像もつかなかった現状ですねぇ」

「本当に。私も王太子殿下の第一子を授かるとは思ってはおりませんでした」


シンシアさまの呟きに応えたルシーダさまは、私を見ました。

私も、思いを巡らせます。

あの、王妃さまに呼び出された日。


エルトリト侯爵家第二子、リリアーナ。

ホルン侯爵家第一子、ルシーダ。

チャシリー伯爵家第四子、シンシア。


時間をもらって城の外で再び集い、改めて私たちは顔を会わせました

アメリさまの婚約が決まると同時に、候補に上がった私たち。話が寄せられた時点で、その事情を察しました。


貴族には派閥があります。

元国王陛下の御代は、宰相の派閥が大きくなりつつありました。私の侯爵家も含まれます。

代わって、アメリさまのラグゼンダール公爵家は、宰相側と拮抗している派閥。アメリさまの婚約も、力の均衡を量る為だったのでしょう。

かといって、こちら側から何らかの声が上がるかもしれません。そのために、私が側妃候補になったのではないかと思います。

ホルン侯爵家は中立派、チャシリー伯爵家は、新興貴族をまとめつつありましたから、候補になったのでしょう。

王太子殿下の為、国の為にと責を担う方々が、その時の最善を尽くして整えられた婚約は、1人の女性によって瓦解するところだったのです。


『今は、王太子のワガママを許しましょう。ですが、あの二人がいつまでもわからないままならば、決断する必要があるのです』

『まずは、1年様子を見ましょう』

『でも、王太子の子を、あなた達に産んで欲しいのよ。王太子妃には決して子供を作らせないから』


王妃さまは、己の心のままに振る舞った二人に、お怒りになってらっしゃいました。


王太子にも勿論、責はあるでしょう。

ですが、更に要らぬ混乱を招きかねないため、生まれながらに担う「王族」という責務は簡単に放り出させる訳には参りません。


ですから、逆に「ワガママを叶える」事にしたようなのでした。

セシリア嬢がラグゼンダール家に入れば、形は何も変わりませんからね。


しかし、当の二人が、この事態に気づかれていない事が問題です。

ですから、1年間、王太子妃の補佐をしながら、私達に見極めよ申し付けられたのだと受け止めたのです。


『お二人はどうなさいますか?』


ルシーダさまが問います。


『私は、受けますわ!学院でのあの女の振る舞いには、本当に怒りを覚えましたもの!王太子殿下の前では健気な事を言ってらしたけれど、結果はどうですの!不実な振る舞いを恥じる事なく、王太子殿下の手をとったではありませんか!』


シンシアさまは、常々セシリア嬢の行いに思うところがあったようです。


『私は、学院にいませんでしたから、お二人がご覧になった事はよくわかりませんが、告発された日に立ち会った遠縁にあたる家の子息が、無抵抗のアメリさまをとり抑えたそうなのです。しかも、当初は彼女を傷つけたのだから当然であると言い張っていたようですの。騎士を目指す資質もある良い子であったのに、そのような乱暴な振る舞いをした事が信じられなくて。そのセシリア嬢に何かあるのでしょうか。それは、知りたいと思いますわ』


ルシーダさまは、直接セシリア嬢に会った事はないので、見極めたいと思う部分があるようです。


『私は……。不思議に思っていた事がございましたの。セシリア嬢がアメリさまと会った時に、恐らく初めてで会ったはずですのに、ひどく驚いて警戒するような顔をしていましたの。それから、すれ違う度に怯えたり…。アメリさまの方が、何の嫌がらせをされているのかと思いましたわ』


思い出すと、腹立たしくなってしまいます。


『リリアーナさまは、アメリさまと親しくされていましたの?その……お家の方は』


シンシアさまが不思議そうに尋ねてきました。それはそうですわね。


『確かに、色々ございますが、アメリさま自身にお会いしたら、その素晴らしさには敵いませんでしたわ。アメリさまも、私に親切にしてくださって、友人だと仰って下さいましたの。…ですから、あのような告発はあまりにも酷いと今でも思っております』

『では、ルシーダさまも、リリアーナさまもお受けになるの?』

『3人とも側妃に、ということですわね』


私は頷き、ルシーダさまがそう締めました。







「……ですが、本当に1年ともちませんでしたわね」


思わず呟いてしまった私に、ルシーダさまが困ったように笑います。


「リリアーナさま。これで、本当によろしかったの?」

「ルシーダさま、それこそ何度お聞きになるのです。私たちはあれほど話し合って来たではありませんか。それとも、王妃さまのお話を受けた事、後悔なさっていらっしゃるのかしら?」

「いいえ。あの時の決断は間違っていなかったわ」

「そうよ。私、今思い返してもやはり許せないですもの!」


本当に思い返したのでしょう。シンシアさまの声が大きくなり始めて、私たちは慌てて宥めました。

シンシアさまも、己を抑えて声を小さくしますが、目には激情がまだ見え隠れいたします。


「もしかしたら、セシリア嬢を許せる時が来るかも知れないと思いました。彼女が自分がどれだけの幸運に恵まれたか自覚し、婚姻宣言の日の通りに励んでいたならば、認めざる得ない日が来ても仕方がないと。なのに、あの女ったら!」


また、声が大きくなりつつあったシンシアさまの手をとり、そのままこのいる腹に乗せて、ルシーダさまは上から優しく叩きます。ですが、窘める言葉はありません。

言葉にしませんが、私もシンシアさまと同じ気持ちなのですから。


「リリアーナさま。私は王太子殿下のお子を産まなくてはならないから、お手伝いすることはできないけれど、どうぞこの機会を活かして下さいませ」

「私も、王子は任せられますから、出来る事がありましたら、いかようにも仰って下さいませ」


くっと力強い眼差しが二つ、私に向けられます。

何故だかそれは暖かくて、私は泣きそうになりましたが、こらえた代わりに笑いました。





「はい。ありがとうございます。…準備は調っておりますから…、それでは始めましょうか」

国王直系……王太子の子も「王子」「王女」と呼ばれる事が許されるという説がありましたので、採用しております。


自分でハードルあげているような気がします。

ランキングの急上昇に、ビビっておりますが、まもなく完結予定です。


4/10 12時の時点で、

ジャンル別(異世界恋愛) 日別 2位。

総合 日別 (連載中のみ)5位、(全て)9位。

ありがとうございます。

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