残された走り書き
再掲「14話」です。
再掲に関しましては、お手数ですが5/9の活動報告をご覧ください。
●リリアーナ・エルトリト(作品主人公・侯爵家令嬢・王太子第一側妃)
家は対立派閥同士でありながら、アメリ個人とは友人関係を築く。学院でのセシリア騒動の途中から、アメリの様子に違和感を覚えるが、大切な存在ゆえに、最終的にアメリの意思を尊重する。しかし、セシリアのアメリに対する仕打ちには大変怒りを覚えており、王妃の意図を知ると、側妃になることを決意する。補佐をしつつも、他の側妃とともにセシリアを追い詰めていき、やがてそれは成し遂げられる。
●セシリア・ラグゼンダール(元男爵令嬢・ヒロイン・王太子妃)
転生者。乙女ゲームの記憶もち。逆ハーレム形成しつつ、最終的に王太子と結ばれる。
婚姻後、ゲーム攻略チートはなくなり、生来の性格で過ごすも、一般人の価値観を変えられず、恋愛主義のために知識が興味が向かなくて身に付かない。王太子の言葉のみにすがって過ごすうちに、王太子を含め周りは成長し、1人取り残されているが気づかない。やがて王太子にも見捨てられ、排斥に動いた周囲によって、その生を終える。
●ルシーダ・ホルン(侯爵家令嬢・第二側妃・新王太子妃)
王太子らより年上のため、セシリアをめぐる学院の騒動を知らない。しかし、遠縁の騎士団長子息の行動に疑問を覚え、セシリアにはあまりよい印象がない。他の側妃の感情と行動をいざというときには抑えようと側妃になる。中立派であるが愛国心が強いゆえか、セシリア嬢と接するうちに国に害になるとの判断。排斥の動きに協力する。
王太子とは夫婦でありながら、弟のように世話をやいていたが、王太子が自己を振り返り成長するにしたがって、包み込むような愛情をもって支えるようになる。王太子の第一子(王子)をもうける。
●シンシア・チャシリー(伯爵令嬢・第三側妃)
王太子らより年下。家は、小さいながら一つの勢力になりつつある、新興貴族の取りまとめ役。もてなす事が好きで男女問わず好評であり、彼女自身も可愛がられている。セシリアとは積極的に交流を持とうとしたわけではないが、庇護下の下位爵位の学院生徒に対するセシリア男爵令嬢の傲慢な態度に不快感を持っていた。王太子の事は好きでも嫌いでもなく、側妃という役割を割りきって楽しんでいる。男性社会より強かな女性の社交場を把握し、物事の裏側からの手回しに大いに活躍する。王太子の第二子(王女)をもうける。
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王妃『それにしても、気付かれなくて良かったわ』
ルシーダ『リリアーナさまは、ご自分も避妊の薬湯を飲んでらっしゃいましたけど、王妃さまに知られていないと思ってらしたしゃったようですね』
シンシア『上手く逆の効能のものにすり替えられて何よりでしたわ。リリアーナさまはやっぱりいてくださらないと』
王妃『あなたたち。リリアーナを利用するつもり?』
ルシ『王妃さま。私達はリリアーナさまに去って欲しくないだけですのに』
シン『そうですわ。私達は公私共々、3人で丁度よい均衡を保っていると思います。いずれ新しい側妃を迎えるにしろ、漸く落ち着いたところですから、暫くは3人で殿下を支えていきたいですわ』
王妃『それでは、以前と変わらないではないの』
ルシ『そうでしょうか。憂いがない分、自分の成すべき事に専念できます。それに、私は厳しく出来ないところがありますから、リリアーナさまに指摘していただかないと』
シン『私も女性の流行は得意ですが、夫人方の旦那さまにも通じる話題や物は、全くわかりません。夫人方の力になるにはそういった知識も必要ですから、リリアーナさまにぜひ教えていただかねば』
王妃『やっぱり、利用したいのではないの?』
ルシ『…王妃さまもご存知でしょう?リリアーナさまは、一旦懐に入れた者には、献身的に振る舞われる事を』
シン『時に腹を立てながら、それでも力を尽くして下さいますの。私達、そんなリリアーナさまが大好きなのですわ』
王妃『…………その中には、王太子も入っているのかしら』
ルシ『それは……』
シン『今後の殿下次第だと思いますわ』
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●国王陛下
アメリの逃亡に力を貸す。王太子を試す
●王妃
わざとセシリアを囲いこんでから排斥をする計画をたてる。側妃達を気に入っており、後宮から出すつもりはない。
●王太子リヒャルド
乙女ゲームの攻略対象者。学院でセシリアと恋に落ち、己の愛を貫く為に権力をもって、幼き頃よりの婚約者アメリ・ランドールを追放。セシリアを公爵令嬢に据えて、強引に婚姻をする。感情のままにセシリアを愛するも、セシリアの成長を妨げ堕落させる結果となった。その後、学院以外の世界を知り、己自身は側妃を受け入れ、政務に励んで成長する事ができた。そして、現状が見えるようになるほど己の愚かさを知り、それでもセシリアへの責任を果たそうとするが、既に遅かった。王妃を筆頭にしたセシリア排斥の動きはとめられず、ルシーダを新王太子妃とする事を承諾する。
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国王『リヒャルド。少しはわかったか?』
王太子『父上』
国王『力のある者が感情のままにそれを奮う事の愚かさを』
王太子『…はい』
国王『愛する者と添い遂げたいという気持ちは誰にもある。だが、王族としての責を軽く見てはならぬ。だからこそ、アメリをお前の妃として選んだ。彼女ならば、お前の気質を充分に知った上で支え、お前の願いを出来る形で叶えただろうに。結果、彼女らを不幸にしたな』
王太子『……』
国王『これからも、愛しいと思う女は現れよう。だが、2度と間違うな。今回はまだ子供であったがゆえ、事をこちらで納めたが、今はお前の後を継ぐ者もいる。順番が少し早まろうと構うまい』
王太子『父上!』
国王『父として、子を失うのは我とて避けたい。だから、王太子よ。………存分に励め』
王太子『…………御意』
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●アメリ・ラグゼンダール(元公爵令嬢・悪役令嬢・現修道女)
転生者、前世記憶もち。ヒロインと出会ったことで記憶を取り戻す。王太子の婚約者。幼き時より王太子妃教育をうけている。淑女の中の淑女と呼ばれる。記憶を取り戻した後は、ゲームの死亡エンド回避の為に動き、見事、修道院での静かな日々を手に入れる。孤児の少年ミトと出会い、長い時をかけて男性として意識するようになるが、リリアーナの手紙を受けて、修道女としての人生を続ける事を決意する。
●ミト(元孤児・修道院の御者)
元孤児。奉仕活動中の修道女マリアと出会う。一目会った時からマリアに惹かれ、マリアに積極的に関わるようになる。子供時代からの関わりがある為か、青年期になってもマリアはあまり恐れない。初めから好意を訴え続け、漸く意識してもらえるようになったが、マリアの事情でまたもや現状維持となる。それでも側にいられる事に満足している。マリアに対して「今度こそ、守らなければ」という気持ちが強いが、その理由はミト自身にもわかっていない。
●マルセル・タチバンナ侯爵
ニホリ国の特使。旅をすることが好きで、国内外を動き回っている。その間地域の騒動を納めたり、未交流の国との国交のきっかけになったり、結果的に国に利益をもたらした功績によって受爵する。リリアーナがもてなした来賓の中では一番親しい間柄。マルセルはリリアーナに恋心をもつが、自分の心に折り合いをつけ妻を迎えて、リリアーナの幸せを願う。リリアーナが愛妾となる噂が出ると、面会もままならなくなると寂しくなっていたが、保留となりほっとしている。
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リリィ「私は可哀想ですか?マルセル殿」
マルセル「それは……」
リリィ「大好きな人がいました。夢がありました。でも、今、私はここにいる。学院時代の私が見れば、私は不幸かも知れませんね」
マルセル「今は違うのですか?」
リリィ「どうでしょう。周りも私もそれなりに成長しました。必ずしも、夢が叶わなかった事が不幸であるとは限らない事は知っています。それに、まだ叶う可能性は残されていますわ」
マルセル「あなたは、ご自分の価値をご存知でない。王族はあなたを離さないでしょう」
リリィ「でしょうね。私が子を授かった事もそうでしょう」
マルセル「それは、気づいていたということですか」
リリィ「発言は控えますわ。でも、私も利用いたしました。王族を、同じ側妃を」
マルセル「あなたは……お人好し過ぎませんか」
リリィ「私はわがままだったと思います。勝手に憤り、勝手に逃げ出す計画をたてて…自分の思いだけを晴らす事ばかりしていました。それなのに、残されたのはあなたの気持ちのような暖かいものばかり。少し自分を見直さなくてはと思ったのですわ」
マルセル「王族はそんな、暖かい気持ちではないかもしれないですよ」
リリィ「……その時はその時ですわね。どちらにせよ。私もこのままではいられません。色々考えてはいますわ」
マルセル「では、彼女達を許すと?」
リリィ「ふふふ。マルセル殿でも女の世界はご存知ないのね。私もルシーダさまシンシアさまは好きですわよ。友情を感じています。でも、王太子妃をルシーダさまにお願いしましたし、この国の貴族社会に深く名を刻むのはシンシアさまにお願いしました。私はいつだって逃げ出す用意はしていたのです。友情と自己中心的な思いの駆け引きは両立するのですわ。二人はわかっていたのでしょうね。今回の駆け引きには負けてしまいました」
マルセル「複雑ですね。何と言えばよいか。あなたが愛妾になられていたら、政務を任される事はない。こうしてお会いする事もできなくなったでしょうから。でも、あなたは幸せでいてほしい」
リリィ「まあ。ありがとうございます。でも、幸せですか。それはどんなものでしょうか」
マルセル「リリアーナさま?」
リリィ「例え、私の生き方が不幸に見えても、私自身が選択してきた事です。後悔はしていません。それに、もう一度考えて見てください。私には、優秀な夫がおり、強く結ばれた同士がおります。そして、心配してくださる異国の友人もいて……」
王子「かぁーたまっ!」
リリィ「まあ、ルーノ。お客様の前ですよ」
王子「まーるさま、こにちはっ!」
リリィ「仕方ありませんね。こちらへいらっしゃい。抱きしめてあげましょう。ふふふ。相変わらず柔らかなほっぺですね……。マルセル殿。こんなに愛らしい私の子がいるのです。これが不幸ですか?」
マルセル「いえ」
リリィ「確かに思い描いた幸せとは違います。でも、形を変えた幸せは側にあったのですよ。これを受け止めるかどうかも私次第ではありません?」
マルセル「………」
リリィ「マルセル殿。そんな顔をさせるつもりはございませんでした。ご心配下さってありがとうございます。でも、この答えはそう簡単に出るものでもありませんから………最後に笑顔で終えられたらよろしいわね」
マルセル「では、その時を見届けて差し上げましょう」
リリィ「まあ……では、我が国とニホリ国の交流は続きますわね」
マルセル「そう来ますか。流石は側妃さまです」
リリィ「では、末永くよろしくお願いします」
マルセル「はい。末永く」
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ケイン・タチバンナは自分が調査した「リリアーナ・エルトリト」の資料の束をまとめる。
祖父・マルセルの没後、彼の書斎に隠されていた「リリアーナ」とだけ書かれた小さな姿絵。
祖父からも、家族からも聞いたことのない名前の女性をを、彼は興味本意で調べていた。
ある国の第1側妃リリアーナ。国内外に興味を持ち、実際に飛びまわっていた祖父が出会った彼女はとても気性の会う女性だったようだ。
リリアーナは王子を産んだ後、第1王子との後継者争いが貴族の派閥間で起こり初めたのをきっかけに、身を引く準備を始める。
体調不良を訴え、第2王子を王太子妃の子として養子縁組みをし、新側妃に政務を引き継ぎ、自分自身は王家直轄地に籠って静養に努めた。
時折、王太子や他の即妃、ある修道院から呼ばれる修道女が訪れたりしていたものの、穏やかな日々を送っていたそうだ。祖父は王城での面会を終えた後で、許可をもらい会いに行っていき、ただ語りあってニホリ国に戻ってきていたようだ。
こうして調べても、祖父がこんな行動をとる、リリアーナという女性の魅力はわからない。
ただ、こうして妻や子を設けてもなお、大切に隠しておきたいほど大切な存在だったのだろう。
ケインは資料を拾い上げ、バサリと燃え盛る暖炉の火の中へ投げ込んだ。そして、絵姿も手に持った。
「……そんなに大切なら、一緒に持っていけよ、じいさん」
その絵姿も、躊躇なく火の中に投げ込まれる。ケインはすっきりしたように、それから背を向けた。
炎の中のリリアーナは、微笑んでいた。
国王夫妻が、めちゃくちゃ適当ですね。
この編は、後に修正(情報追加)するかもしれませんが、基本は変わりません。