幸せなエピローグ
短編?というくらいに長くなったので、数話に分けました。
「セシリア・ラグゼンダール公爵令嬢を、わが妃として迎える!」
高らかに王太子自ら宣言された日。
輝かしい未来への始まりでした。
愛おしい眼差しを向けて差しのべられた王太子の手を取り隣に並び立つセシリア嬢は、恥じらいながらも愛される喜びに溢れ、元よりの美貌を更に輝かせています。
二人は本当に一枚の絵のよう。
この時すでに、平民にまで伝わる彼らの恋物語を知っているからか、ほうとため息をつく者までいます。
私も思わずそっと扇で口元を隠しました。
そう。
元、男爵令嬢であったセシリア嬢が、時が満ちて入学した学院で、王太子殿下との運命の出会いをした恋物語。
私も、当時は在学しておりましたから、よく知っております。
爵位は元より、平民の母を持つという出自も貴族社会では眉をしかめるような身でありながら、当初はまるで汚いものを見るような扱いを受けた男爵令嬢が、王太子殿下と出会い、嫌がらせを乗り越え、交流を深める内に惹かれあっておりましたようでしたわ。
互いに立場もあり、想いを交わしていなかったのですけれど、あわや生命に関わる事態となるまで激化した、嫌がらせの主犯者が王太子殿下と婚約を交わしていたアメリ・ラグゼンダール公爵令嬢と判明してから、状況は一変しましたわね。
学院内でも王太子殿下を支えていた宰相子息、騎士団長子息、最高神官長子息と水面下で調査し、学院の卒業式典で大々的に告発したのでしたわ。
会場は騒然としましたが、アメリ嬢は告発を毅然として受け止めていまして、ある意味その姿はとても美しゅうございました。
その後、アメリ嬢は、婚約破棄はもちろん、ラグゼンダールの籍から外され、北地の修道院に身柄を移されました。
ラグゼンダール公爵家にも責を問う声がありましたが、「公爵家」であることと、これまでの実績と人望、そもそも王家から公爵家への「政略結婚」等の裏事情もあり、被害者であるセシリア嬢を養子に入れ、その支援を約束させる事でその責を果たすと致しました。
こうして、公式に「公爵令嬢」となったセシリア嬢は、身分も問題なく王太子殿下の正妃として迎えられる事になったのです。
「セシリア。ずっと私と一緒にいてくれるね」
「殿下。まだ、不安はございますが、王太子妃という立場に相応しいよう努力し、殿下をお支えして参ります」
「無理はしなくていい。君はそのままで良いのだよ」
「まあ、…殿下」
微笑ましいお二人の様子に、その場にいた王族貴族はその輝かしい未来を祝福すべく、拍手と笑顔でそれを受け入れました。