冒険者ギルド②
「・・・・・」
「「・・・・・・」」
静寂が部屋を包み込む
「はぁ、仕方ない」
リョウはそう切り出すと観念したように話し始める
「俺はつい最近王城に召喚された者の一人だ」
そういうとボイスとケイトは目を見開き
「なんと!?近々召喚の儀を行うという噂を聞いておったが、そうかおまえは異世界の勇者だと言うんじゃな?」
「でも召喚された勇者は3人と聞いた気もしますが・・・」
ボイス、ケイトの順にそう口にする。
(勇者の召喚は割と有名なことなんだな、まぁ大昔にもやっていたような伝記も残っているようだし童話にでもなっていたりするのかも?)
事実先日リリが話してくれた話は有名であり、子供たちが一度どころか何度も耳にする話なのである。
「いや、少し違う。俺は勇者と同じように召喚されたが、称号ってやつに勇者という文字はなかったはずだ」
「む、確かにそうじゃな。ならどういうことじゃ?」
「恐らくだが、こちらに転移する際に何かしらのエラーがあったのかしたのだろう。俺と同じ様に召喚された他の3人は勇者の称号があり、レベルは1だったと思う。俺も元の世界では他の3人と同じ学生をしていたし、レベルとは無縁だった。俺は勇者に選ばれた3人の近くにいたため一緒に召喚されたが、さっき言った通りなんかのエラーでレベルっていったものが大きな数値で、でたのではないかと思う」
リョウは早口でなんかもっともらしいことを言う
「うーむ、このレベルは知識もそうじゃが戦闘能力を主に測定するために使用される。おまえさんはそのような経歴があるんじゃないか?」
「いや、元の世界でそういった経験はないな」
リョウはあっさりとそう伝える。
確かに元の世界、地球では特にそういった経験はない。
「そうか、まぁ今後このギルドで活動するんじゃろ?その時に嫌でも実力といったものがわかる。自分では知らない力があるのか、何か隠したいものがあるにしてもな」
ボイスはそう言いながらカードを差し出す
「これはこの冒険者ギルドの会員証となる、これで無事冒険者ギルドの一員じゃな。詳しい説明は後程ケイトにでも聞くがいい」
ボイスにそう話をふられてケイトは小さくうなずく
「いや、さっきカウンターの横にある板で大体のことは確認してある。あれに書いてあること以外になにか確認する必要があるものはあるのか?」
「リョウさんは只今よりHランクの冒険者となります。特にランクについての依頼受注の制限はございませんが、依頼を失敗すると違約金が発生することや、依頼遂行中にケガもしくわ死亡してもギルドに責任はないこと。あとは違う町に移動した時は、それぞれのギルドに報告がほしいくらいでしょうか。これは特に絶対ではありませんが、居場所を確認することにより、特定の冒険者に依頼があったときギルドが便利であるといったことがありますね。」
「なるほど、なら実力に合わない依頼は受けないほうがいいということか」
「そうですね。あ、それからもし町の外で魔物を討伐し、それを持ち帰ると換金することもギルドではできます。これは依頼とは別で常時受け付けていますので、もし特定の商人に売るつもりがなければ利用してください」
「わかった、なら是非利用しようと思う」
「うむ、大体のギルドの説明も終えたな。時間を取らせたな、もう帰ってもいいぞ」
ボイスがそう言うと、ケイトは扉を開けて横に立つ
「あ、俺が召喚された人ってのは秘密にしてくれないかな?あんまり目立ちたくないんでね」
「わかった、できる限り秘密を厳守しよう」
ここで絶対と言わないとこが少し引っかかるが
「あぁ、たのむよ」
そういって一階へとリョウは降りていく
部屋にはボイスとケイトの二人が残る
「どう思いますか?」
ケイトはドアを閉めて振り返る
「そうじゃなぁ、あいつはレベルの誤作動と言っておったが・・・。それはありえんじゃろうな。確かにエラーはあるのかもしれん、しかしあいつはあからさまに『力』を隠しているようだった。あまりにも不自然な魔力量、そしてあの体さばきは隠しきれないほどに身体に染みついているものであった。」
「そうですね、私には詳しいことはわかりませんでした。が、初対面のギルドマスターにあそこまで堂々と会話をする人を私は見たことがありません」
ボイスは過去にランクAの冒険者として活躍していた冒険者である。
その実力は引退した今でも中々のものであり、威圧感や覇気といったものを常にまとっている。
慣れた者であれば多少平気ではあるが、一般人や低ランクの冒険者についてはまともに正面で会話することは難しいであろう。
これについてボイスはもちろん覇気や威圧を故意的に抑えることもできるので普段は特に問題ない、しかし先ほどリョウと会話しているときは常に威圧、覇気をだしており、慣れているケイトですら少し緊張していたのである
「うむ、ケイト、今後あいつの動向に注意しておいてはくれんか?」
「わかりました。他の職員についてもそれとなく伝えておきます。もちろん少し見守る程度といった内容でではありますが」
「それでいい。しかし異世界の勇者か、本当にいるとはなぁ、魔王復活は真実だったのかのぉ?」
「それについてギルドは特に情報はありません。何人か信頼のできる者に調べるように言いましょうか?」
「いや、それはいい。王城がまだ勇者の存在を隠しているのも気になるが、魔王については我々ギルドが解決することではないだろう。今は傍観ってところじゃな」
「そうですね、それでは私は仕事に戻りますね」
「あぁ、戻ってくれ」
そうボイスは言うと机の上に積まれた書類に目を向け、ケイトは一階へと向かうのであった。
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(そらまぁ、注目されないってことは無いよなぁ。仕方ない、早めにこの町を出るとしますか)
リョウは魔法を使い先ほどのボイスとケイトの話を一階の待ち受けの席で聞いていた
話が終わると同時にリョウはギルドをでて、日の暮れはじめを確認すると宿に向け歩き始めるのであった。