メイド再び
「んーーーーっ!」
外はもう日が出ており、町中には活気が少しづつ出てきている
(今日はなにすっかなぁ)
異世界、このハイケント王国に転移して1日がたった
リョウの朝は昔からの癖でいつもは日が出る前、結構朝早く起きるのが日課となっていたのだが、思った以上に身体が疲れているようで、ゆっくりとした起床であった。
リョウはこの世界の服を着ると、食堂へ向かった。
「あら~おはようリョウ君♪」
「・・・・・・・・」
朝一番の髭面メイドのインパクトはすさまじく、絶句する
「どうしたのん?」
「い、いやなんでもない。それより朝食を食べたいんだが」
「じゃあ好きな席でまってて、すぐに持っていくからねん♪」
そういうと髭面メイドことミーちゃんはフリフリスカートをなびかせながらカウンターの奥へと向かっていった。
(やべぇ、あと少しで気絶するとこだった)
リョウは少し早くなった動悸を抑えようと胸を押さえながら、窓際の一番奥の席へと座った。
(今日は昨日回れなかった場所をみてこようかなぁ、いやそれよりも・・・)
考え事をするリョウのところに
「はい、お待たせ♪」
ミーちゃんが朝食をもって現れる、
「あ、あぁ、ありがとう」
「どーいたしまして♪それよりリョウ君、何か考え事?」
今日の朝食はパンが2つとソーセージ、あとはサラダとスープであった。
「うーん、簡単にお金を稼ぐにはやっぱり冒険者しかないのかなぁと」
「そうねぇ。商売とか住み込みとかいろいろあるけど、簡単といえばそうよねぇ。もしかしてリョウ君は出稼ぎか何かなの?」
この町には地方の村から出稼ぎ、つまりお金を稼ぎに町にでてくる若者が多くいる。
そういった者たちは町に永住するつもりが無いので、短期間で多く収入を得ることを目的としている。
冒険者ギルドでは町の雑用仕事を多く斡旋しており、主に日雇いがメインである。もちろん町の外に出て魔物の討伐や、鉱石や植物の採取などもある。しかしこれらは危険がかなり高くなるので、出稼ぎの若者では無く、この町を住みかとする傭兵や流れの者が行うことが多い。
もちろんこれらは一例であり、例外も多く存在はする。
「いや、そうじゃないんだが・・・な。ちょっと旅をしようと思ってるから、その軍資金がね」
そう言うとリョウはパンとソーセージをほうばる
「あら、いいわねぇ~。じゃあやっぱり冒険者ギルドに登録する必要があるんじゃないの?」
この世界での成人は15歳からであり、16歳のリョウは特に子ども扱いされない。
もちろん成人していない子供が旅などといったら止められるのではあるが。
そもそも成人していない者は冒険者ギルドに登録は出来ないし、村を出ることもあまりない。
「やっぱそうだよなぁ。なぁ店主、おすすめの武器屋ってないか?」
冒険者ギルドでの仕事は雑用もあるが、あまり稼ぎはない。それに比べて魔物の相手や素材の回収は収入がよく、もちろん荒事になるため武器類は必須なのだ。
ミーちゃんはリョウが戦いの知識や技術があるのかを考える、
(この子、ちょっと普通の村の子とは違う感じがするわねぇ、なんか雰囲気とゆうか女のカン?)
「それはいいけど、私の名前はミーちゃんよ♪」
「あ、いや、おすすめの」
「ミーちゃん♪」
「・・・ミーちゃん、教えて・・・ください」
笑顔で凄味をきかせてくるミーちゃんに根負けし、リョウはそう言うのであった。
「いいわよ~ちょっとまってね~♪」
ミーちゃんはそういうとカウンターに戻って紙に何かを書き始める
「はい♪この店に行ったらいいわ、ミーちゃんの紹介だっていえば良くしてくれるはずよん♪」
「あぁ、ありがとう。この後早速行ってみる」
朝食を終えたリョウは早速ミーちゃんに教えてもらった武器屋へと行くのであった。
(ええっとぉ~、確かこの辺りだと思うんだが)
「あ、あった・・・けど」
『戦場のメイド武具』
(うおい!!なんでここもなんだよ!名前に無理があるだろ!)
そんなことを考えていると、
「あらぁ~♪あなたここに何かよ~ぉ?」
「うお!?」
店の扉から出てきたのはミーちゃんに負けづ劣らづの髭面メイド、そして更に2メートルの長身、筋骨隆々といった男?が出てきた
「あ、あの、俺は・・・」
「いいの、いいの♪武器を買いに来たんでしょ?」
それなら入って♪と言いながらリョウの背を押し店の中に招き入れる
(あれ?この世界っていろんな意味でやばいんじゃね?)
そんなことを考えながら青ざめた顔のまま店に入る
+++++++++++++++++++
(ほぉー、見た目のわりに細かい仕事してるなぁ)
リョウは店の中に入り、静寂のメイド亭のミーちゃんの紹介だと伝えると、『やだ、あの子の紹介なのぉ~?あの子見た目怖いでしょ~、仲良くしたってねん♪』と言われたのだが、
(あんたのほうが見た目やべぇーよ!!)
とは口が裂けても言える相手ではなかった。
「で、リョウ君はいったいどんなものがお好み?」
「そーだなぁ~・・・」
リョウは過去に両手剣、片手剣、弓、短剣、鉈、槍、など多くの武器を使用してきた。
武器は一つ一つ特徴があり、メリットの代わりにデメリットももちろんあるのだ。
そのため、これが一番良いってものは特になく、リョウについても特に思い入れのある武器何てない。
そのため改めて何を使うかと問われると、悩んでします。
(といってもなぁ・・・・ん?)
リョウが目にやったのは、篭手とナックルを合わせたような物で、すべてが真っ黒であった
「ん?あ~それねぇ」
「これは武器なのか?防具なのか?」
「それは腕と手に付けて、腕の部分は楯の代わり、手の部分はナックルになっていて、徒手格闘のための武器になってるのよん♪」
そういって店主はリョウにそれを手渡す
「でもやっぱり魔物との戦いで使うにはリーチが短すぎるでしょ?徒手をメインにする子達も主に腕に刃がついているものを選ぶの。だからそれはもう長いこと売れ残りよん」
「そっか、かなり良い作りをしてるのにな」
真っ黒な全容はすごくシンプルなつくりをしていて、腕の部分も厚みがなく私生活で付けたままでもたいして気にならなさそうである。
「あら、ありがとう♪じゃあそれにする?あんまりおすすめはしないけど」
「そうだな、じゃあこれにするわ!これなら防具を買う必要もないからな」
リョウは今まで徒手格闘をメインで戦ったことはない、しかしどの武器を使用するのも徒手格闘は必ず必要となる。なんたって武器を手放すことがあれば、素手で戦わなければならない、それは戦いの中で強くなったリョウにとって必要なことだったのだ。
「あら、鎧とかはいいの?」
「あぁ、動きを阻害するようなものは徒手格闘では命取りになるからな、当たらないように避けることにするよ」
そういってリョウは篭手を取り付ける
「わかったわ、じゃあお代は・・・・・・よ♪」
そしてリョウはニコリと笑い
「やっぱりやめます♪」
リョウは手持ちのお金があまりないことに気が付いたのだった。