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千年蛇

「おいおいねぇちゃん、冗談はやめろよ」


 早速絡んでくる冒険者がいた、そう先ほどのズールといった冒険者である。


「私は冗談など言ってはいないのですが・・・。」


 少女はなぜそんなことを言っているのか心底不思議そうに首をかしげる、


「千年蛇なんざ、物語に出てくるような勇者ぐらいじゃねぇと討伐できやしねぇ。ましてやここのHランク冒険者のガキなんざにこなせるもんじゃねぇだろ」


 ズールは別にリョウを馬鹿にしたのではなく、それは当たり前で決して恥ずかしいものではないと言いたげな様子であった


「ねぇちゃん、そいつの言った通りだぜ?千年蛇なんざ本当にいるのかも怪しいくらいの伝説級の生き物だ、強いやつを探してその依頼を頼みてぇならここより王都にでも行ったほうが腕利きは多いぜ?」


 と、カウンターの中から職員の男が話しかけてくる


「いいえ、今この依頼を受けようとしたこの方でしたら間違いなく()()()()。」


 そう少女はリョウの手をとった


「だ、そうなんだが・・・その依頼受けても大丈夫か?」


 リョウはそう言ってカウンターに向き直る


「はぁ、わかったよ。その代わり失敗したときは違約金が発生するからな?それは理解してんのか?」


「わかってるよ、やばいと思ったら逃げ帰って違約金を払うとするよ」


 職員はひとつ大きなため息をつくと依頼の手続きをはじめに奥へといった


「まぁ、リョウなら千年蛇なんざすぐ終わるじゃろう」


「なんだリリ?この魔物のことしってるのか?」


「当然じゃ!わしをだ・・・・」


「あの、依頼を受けてくださってありがとうございます!」


 依頼主である少女はリリの声を遮りリョウの手をとってきた


「あ、あぁ、まぁ何とかなるだろうし安心しな」


「はい!期待しています!あ、自己紹介がまだでしたね」


「いや、名前ならさっき依頼書で確認している、サユリさん、だろ?」


「そうなんですね、はいサユリと申します。今後よろしくお願いいたします。」


 そういってサユリは大きくお辞儀をしてきた


「のぉサユリとやら、なんでリョウなら大丈夫だと確信したのじゃ?千年蛇なぞ人にとっては難儀な魔物なんじゃろ?」


 さきほど会話を遮られたリリは特に気を悪くした様子もなくサユリに問いかけた、


「それについては俺も聞かしてもらいてぇなぁ」


 その返答についてはサユリではなく、さっきから放置されていたズールのものであった


「別に俺は千年蛇をどうにかできると言えるほど自惚れてはいやしねぇ、しかしなぁ、そこの成人してるかしてねぇか分かんねぇガキより弱えといわれるのは我慢できねぇ」


 そういってリョウを睨みつける


「それになんとかなるだって?えらく大口たたくじゃねぇか」


「いや、まぁ何とかはなるし・・・なぁ?」


「なぜわしに話をふってくるのじゃ」


 リリは半眼になりながらリョウを見上げてくる


「ほらよ、依頼の手続き完了したぞ。ってなんで険悪な雰囲気になってんだよ」


「おい、トール、訓練所の使用許可をだしてくれ!」


 ここでやっと判明したのだが、どうやらこのギルド職員(男)はトールというそうだ


「また余計なことを・・・、まぁズールにてこずる様じゃ千年蛇なんて逆立ちしたってむりだしな。」


 そういってトールはリョウ一行とズールをギルドの奥にある訓練所へと案内するのであった


「めんどくさいのぉ、リョウよさっさと終わらすんじゃぞ?」


「はい、リョウさん。早く終わらせて千年蛇の元へ行きましょう!」


 2人は悪びれもなく大きな声で言うと、ズールをさらにイラつかせるのであった


「へぇへぇ」


 もちろんリョウもこの様子であり、更にズールは怒りを加速させるのであった


「え、えらく余裕じゃねぇか、さっさと始めるぞ!」


 ズールはそう言うと、訓練所の隅に置いてあった木剣を手に取った。


 この訓練所はどの町の冒険者ギルドにも大抵作られており、冒険者ギルド裏にあるひらけた場所のまわりに簡単な木の壁を取り付けただけのものが多い。ここの訓練所も同じようなものであり広さについては25mプール二つ分ほどのおおきさである。壁際には木でできた剣の他に、メイス、短剣、斧、ハルバードなど様々な武器が置いてあり自由に使うことができるようだ


 リョウは深いため息を一つつくと黒姫をリリにあずけてズールの向かいに立つ


「何のまねだ?」


「いや、さすがに木でできたナックルは内容だし俺は素手でいいかなぁと」


 この世界では武器屋で言われた通りであり徒手格闘をメインとするものは少なく、あくまで武器を失って仕方なく徒手による戦闘を行うといったものである。そのため訓練は特に力を入れられておらず、もちろんこの訓練場についてもそのようなものは置いていない。


「どこまでも俺を馬鹿にしやがって!おい、トール!合図しやがれ!」


 そう言うとズールは両手剣を前に構える


「はいはい、それじゃあ始めるぞー?」


 両者にトールは目配せをすると、手を大きく下に振り下げ


「はじめ!」


 ドーーーーーーーーーーーンッッ!!!!


「へ?」


 トールの開始の合図とともに大きな音が鳴る


 訓練場にはリョウしか立っておらず、ズールは訓練場の隅に吹き飛ばされていた


「な、な、勝者!り、リョウ!」


「いやいやいや、俺何もしてねえぞ?」


「へ?」


 そう、開始の合図からリョウは何一つ動いておらず、勝手にズールが吹き飛んでいったようであった


「なぁなぁリョウ」


「なんだよ」


 リリは力なく、それに対しリョウはだるそうに答える


「なんだか面倒事じゃが」


「皆まで言うな・・・」


 そう、リョウとリリの視線の先には額から角を生やし、背から翼を生やした何かが訓練場の上に浮いているのであった。







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