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鳥の国  作者: 熊田魔璃
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再利用

 空。いつもは見上げている空。人間が機械の力無くして踏み入ることの出来ない不可侵領域である。今、自分はまさにその未知の聖域へと足を踏み入れている。


 見渡す限りは雄大な平原である。矮小である人間如きの視線の高さからは見えなかったが、遠くへ見えていた木々は更にその先の遥か彼方へと手を広げていて壮大な木の群れを築き上げていた。森林とゆう字は木を五つ書く。しかしこの木の群れを字で表すならば森森森林とでもいうのであろう。

 首をチョコボの右翼の先へと向けるとこれもまた雄大な大河川が飛翔方向と平行に奥へ向けてドシリと構えていることに気付いた。

「まりちゃん。右手の方に見える川を上流の方へ飛んでいけばリラクの泉だよ!」

「うん! よろしくねチョコちゃん!」


 更に左翼の方を振り返って見てみると青空の背景に黒字のアルファべットのVが出来ている。

「チョコちゃん! あのV何なの?」

「あれはツバメのV字編隊だ。渡り鳥だよ。寒い冬を越す為にみんな暖かい鳥の国へ帰ってくるんだ」

 なるほど。確かに目を凝らしてみれば数百の鳥がブーメランのような形を成して飛んでいたのであった。

「そうなんだ! ウチの近くにもツバメの巣あるよ。あのツバメ達もこの国まで飛んで来るんだ! でも何でVの形をしてみんな飛んでいるの?」

「んーと……」

 救いを求めるようにチョコボはやや後ろを飛んで来ていたテリーを見た。

「人間世界の乗り物、自動車にはターボチャージャーという部品が付いたものがあるそうです。その機械は排気の力を再利用することでエンジンの出力を高めるものです」

 ターボというものは聞いたことがある。スポーツカーなんかについているイメージだ。だがそれがどうしたというのだろう。

 テリーはそんな自分の疑問に気付く様子もなく坦々と続けた。

「V字編隊は鳥の世界のターボといったところです。Vの字を作ることで先頭のツバメが作った気流を後ろのツバメたちが有効利用しているんですよ。いわば先頭リーダーの排気の力を再利用するわけですね。これが長い距離を飛ぶ為の省エネになるんです。ただしリーダーは恩恵を受けられない為に労力が大きい分、ローテーションで交代するのです」

「そっかー。ツバメちゃん達もみんな賢いんだねー」

 

 こうしたテリーの雑学話を聞きながら飛んでいるうちに前方に大きな泉が見えてきた。水色とはまさにこの泉の色のことをいうのだろう。そう思わせられる程に天空から見たその泉は澄んだ美しい色をしていた。

「あれがリラクの泉だよ!」

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