贈呈品
チョコボは自分の愛するペットだ。チョコボはどんな時でも味方でいてくれる。
悲しい眼をした自分を温かい眼で受け入れてくれる。
チョコボといる時は幸せな気持ちになれる。チョコボの存在が自分の存在意義になる。
チョコボが幸せでいてくれるから自分も幸せになれる。
チョコボは食べるとマシュマロのような味がする。チョコボは尾羽のラインがとても美しい。
チョコボは檻の中にいて自由に幸せに生きている。
そんなチョコボが私に恩返しをしてくれた。ここは鳥の国だ。
チョコボは徐に立ち上がり自分を温かい眼で見下ろした。この上ない幸せだった。眼に映るのは自分を包み込み得る抱擁の力に満ちたチョコボの膨よかな体唯一つだった。
自然と自分も立ち上がりチョコボを見上げてドップリ幸せに浸った。
「まりちゃんがいつも私のお世話してくれてるお礼だよ! まりちゃん! まりちゃんにこれをあげたかったんだ!」
どこから取り出したのかチョコボはガリゴリとした嘴に大きな青菜の草切れを咥えている。チョコボはその草切れを自分に渡してくれる。自分が普段チョコボに与える食事だ。
チョコボは人間とは異なる動物だ。相手の気持ちを理解できない。しかしチョコボは真の愛で草切れを送ってくれる。そこに企みの類などはない。
「チョコちゃん! ありがとう!」
私はチョコちゃんからもらった青菜を食べる。それはホウレン草のお浸しにゴマだれをかけて食べたような美味だった。
(おいしい……)
鳥の国に俗世でありがた迷惑と言われるものは存在しない。幸せな世界。
愛から産まれたものは愛に還元される。生き物の生き物らしい理想郷である。
自分はふと疑問に思いチョコボに話しかけた。
「チョコちゃんはどうして日本語が話せてるの?」
アニメや漫画などの虚構世界でよくある話だ。何故か人間の言語を動物や異星人が使っている。
それは違和感に等しくあり得もしない虚構物だ。
「ここは鳥の国だからだよ! まりちゃん! 私たちには言葉は必要ないんだ。私たちの感情は思ったがまま相手に伝わるんだよ」
「テレパシーなの?」
「言葉でコミュニケーションをとる人間からすればそれに近いかもね」
最後の言葉をチョコボはボソリと呟くように言った。
自分の中でうまく理解はできなかったがそれを消化する必要はそこにもはや無かった。何故ならここは鳥の国だからだ。
「そうなんだね! チョコボからのプレゼントすごく嬉しいよ!」
「私もまりちゃんに喜んでもらえてとても嬉しい!」
自分は心から幸福を感じニコニコしていた。
ふとその時自分の肩の後方にある気配のようなものを感じた。自分は軽い気持ちでそれを振り返り見た。
自分の右斜め後ろの五メートルほど先に全体が三メートルほどの大きさの薄靄のようなものがかかっていた。全体が乳白色のクリームのように見える。緑の草原っぱの中でその白靄は目立つ存在になっていた。
(なんだろう……?)
薄靄は最初はボヤボヤとそこに浮かんでいた。しかしさらに目を凝らし凝らし見ると薄靄に過ぎなかったものが次第にはっきりと輪郭が定まってきた。
それもチョコボと同じ程の大きさもある一匹の鳥だった。しかし濃い黄色をした橙がかった桃色の嘴はチョコボの二倍程も長くS字フックのような首を真っ白な胴体から生やしていた。
それは一羽のペリカンであった。
しかし何より目を惹いたのは嘴の上にはチョコリと老眼鏡のように見えるメガネが乗っかっていることだった。メガネの上にはみ出した眼は何を見ているのか解らない、何を考えているのか解らない一文字の眼だった。
しかしその眼にははっきりとチョコボと同じ純然たる純粋さが感じ取れた。