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神様の願い事  作者: 空の海
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1話 神様のお迎え(1)

  空枝そらえだ ふう、享年14歳。

 車に轢かれそうになった女の子を助けようとし、

 奇しくも、間に合わず、

 無駄死に、か。


 んっ、何だい?無駄と称されたのが不満かい?

 でも、これは事実だ。

 君だって、手遅れだと気づいていただろう。

 なのに、君は助けようとしてしまった。

 全く、呆れざるをえないね。


 あぁ、すまない、君を怒らせるつもりはないんだ。

 ただ、死んで仕舞えば、どうしようもない事を

 胸に留めておいて欲しいんだ。


 無駄話が過ぎたね。


 察しの通り、君は死んだ。

 自らの意思で命を捨てた。

 けど、終わりじゃない。

 君はまた、別の生を歩むんだ。


 今度は間違ってはいけないよ。

 求める結果に辿り着くにはそれ相応の力と覚悟がいるんだ。



 不安に思う必要はない、。

 君はただ願えばいいんだ、。


 己の道理に見合うなら、きっと、その願いは叶うさ。






 第1話


  説教やら教訓めいた話を聴き終えて暫く。

 最初はフワフワと揺蕩う存在でしかなかったが、

 徐々に体の感覚が戻ってきた。

 そうして、視覚も戻り目の前の景色が映ったわけだが、。


 ぼんやりと見えてきたのは、洞窟を形作る岩壁。

 天井も左右の壁面も、手を伸ばせるぐらいの余裕があり、

 窮屈さは感じない。

 少し先の天井に隙間があり、そこから光が差し込んでいる。

 外に出るにはあそこを通るのが、手っ取り早い。


 大人1人が何とか通れるくらいの大きさ、

 けれど、僕が通るのには十分だろう。


 こけないように足場に目をやり、その隙間の近くへ少しずつ歩いていく。

 一歩、また一歩。


 骨が落ちていたりといったことはないが、

 無機質な空間そのものが、

 何となく不気味な雰囲気を感じさせる

 夜になると、コウモリとかが飛んでいたりするのかもしれない。


 穴の真下まで近づくと、青空が覗いて見え、

 差し込む光で、周囲もはっきりと見渡せる。


  よじ登るための足場がないか、岩壁の凸凹を注視する、。

 掴めるくらいの出っ張りが、所々にあるので、

 これを手繰っていけば、すぐに外へ出られるだろう。

 早速、間近の岩の窪みに手を掛け、上へと向かう。



  次に足を引っ掛けようとした所で、後ろから歪な音が耳に響いた。


  恐る恐るといった感じで、

  ゆっくりと後ろを振り向く。


  声の主は2匹の狼



 灰色と茶色が混ざった毛並みが逆立ち、こちらを睨みつけている。

 大きさは中型犬くらいだが、嚙みつかれれば、

 僕の肉ぐらい簡単に引き千切られるだろう。


 今すぐ逃げようとしても、もう間に合わない。


 僕としては、もうお手上げだ。


 何とかしたいところだが、

 この二匹を倒すのは僕の身体能力

 を考えれば到底無理だろう。


 こうなれば、転生により何か特別な力が

 付与されているといった、

 主人公特性を期待するしかないが、


 主人公は死んではいけないから

 そういった能力を持っているわけで、


 僕は主人公でも何でもないのだから

 ここで死んでも誰かに迷惑を

 かけることもない。


 よって、期待するだけ無駄である。


 まあ、僕に2度目のチャンスをくれた神様(?)

 ぐらいは、僕の死を悼んでくれるかもしれない。


 もしかしたら、今頃、お経でも

 唱えているかもしれなぃ。

 

  そんな危機に瀕した状況でさえ、

  僕のお腹は空腹を訴え、

 

  和やかな音声が僕のお腹から鳴り響く。



 頭の中に自然と、食べたい料理が思い浮かんで、

 それが、更に空腹を加速させる。



 お腹、空いたなぁ、と


 ほのぼのとした思いを心の中で呟いて


 寸刻、頭の上に何かが

 乗っかっていることに気がついた。




  二匹の狼を見てみると、さっきまで僕に向いていた視線が、

 僕の頭上へと向けられている。



 それが何なのか、気になるのは山々だが、

 得体がしれないので、触れるのを躊躇してしまう。


 少し重たいが、感触としては平べったい。


 恐る恐る、手を伸ばし、底の両端を掴んで、

 そっと下ろして見てみる、



  すると、ただの肉、


 お皿に載った牛肉のステーキだった。


 それは、さっきまで、僕が頭の中に

  思い描いていたものそのもの。


  信じられない話だが これが夢で無いのなら

  僕の願いが叶った、そう考えざるをえないだろう



 気付けば、狼たちは、僕に目もくれず、

 生肉に目を奪われ、

 口を開けよだれを垂らしていた。



 食べたいのだろうか?


 確かに、食肉の価値からすれば、

 僕よりもよっぽど、この牛肉の

 方が品質は上だろうけど、


 お腹壊したりしないかな?


 いや、人間を食べようとするぐらいだから、

 きっと大丈夫だろう。


 それにお腹いっぱいになれば、僕のことなど

 どうでもよくなり見逃してくれるかもしれない。

 あわよくば、食べている間に

 逃げられるかもしれない。



  善は急げと言うことで、


 飢えた狼たちの目の前に

 置き食べさせてやる。


 一切れじゃ足りないと考え、


 頭の中で、さっきと同じように、肉の事を思い浮かべて、

 念じてみると

 再び追加の肉が狼達を取り囲むようにして表れた。


 二匹の狼は、食べることに夢中になっていて、

 僕に見向きもしない。


 これなら、逃げるのは容易だろう。


 焦って、警戒を滾らせてしまってはいけないので、

 心を落ち着かせ、

 ゆっくりと逃避行動へと移る。


 さっき立てた算段通りに壁を登って行く。

 精々が腕の長さぐらいなので、

 登るのに大して時間はかからなかった。


 隙間の穴から這い出して外に出る。


 軽く汚れを払って立ち上がると、

 木漏れ日が目にあたり

 眩しさで手をかざす。


 周囲では、幹の細い木々が互いに

 間隔を開けて立っていた。


 地面は殆どが土一色で、

 短草が木々の周りに疎らに

 生えている。



 さて、これからどうしよう?


 通常なら人を探すべきだけど、。

 僕、身元不明だしな。


 怪しまれるのは避けられない。


 なんだかよく分からない少年を迎えてくれる

 寛大な、心優しき慈愛に満ちた御老人が、

 目の前を横切ったりは

 しないものだろうか?


 念じてみる、、。


 音沙汰無しだった。


 神様は、そこまでの面倒は

 見てはくれないようだ。


  代わりと言ってはなんだが、

(全く変わりになっていないが)


 二匹の狼さんがアクロバットに上空を滑走し、

 僕の目の前に着地した。


 見事な着地だ。

 これを動画サイトに投稿していれば、

 賞賛の拍手が巻き起こっていたに

 違いない。


 そんな彼らが僕に何の用だろう?

 保存食として狩るつもりだろうか、

 それとも

 住処を見られたからには生きて返しはしない

 といった敵撲滅運動の一環だろうか。


 猟銃でも頼んで出してもらうか。


 いや、素人の僕じゃあ、

 到底役に立ちはしないだろう。


 檻を出して、その中に閉じ込めるとかは?

 うん、これならいけるかもしれない。


  出すタイミングを定める。

 と、そこで、狼達の様子に

 何か違和感を感じた。


 僕を警戒している様子が、全くと言っていいほど

 見受けられないのだ。




 かと言ってこいつは格下に違いないと

 見下しているだけかもしれない。


(少し様子を伺ってみるか、。)


 何時でも檻を出せるように、

 気持ちは切らさぬようにして、

 できるだけいつもの歩調を心掛け、

 狼達から遠ざかる。


 すると、二匹の狼達は、同じぐらいの速さで、

 僕の後ろをついてくる。


 僕について来たところで

 何も良い事はないばずだが、。


 まだ僕のことを

 狙っているのだろうか?

 それなら、檻に閉じ込めて

 僕自身は退散するべきだろう。


「もう、肉は持っていないよ。」


 歩くのを止めずに、身振り手振り

 を交えて、狼達に伝えようとする


 すると、狼達は足を止め、顔を見合わせた後、

  僕の方を一瞥する。

  その後、踵を返し、来た道をゆっくりと

  引き返して行った。


  何だったのだろう?

  全くもってわからない。

  取り敢えず、神様にありがとう

  と言っておこう。



  心の中で告げながら、これからも無事で

  いられますように、と 心の中で祈るのだった








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