噂も真になるときもある。
平和とは何だろうか?
自らの手で勝ち取るものだろうか?
誰かに作られるものだろうか?
そう、平和が私を殺し始める。
(平凡だ。そう、平凡で穏やかで何の変哲もない世界。これを平和と人は言うのだろうか?世界は、愚かし いほど均等と均衡であふれていた。競争社会などもう、死語となりかけている。特徴のない景色、平均で 作られた外見、白で塗り固められた世界。そう、平和だ。ここは、誰もが一度は夢見る理想郷で間違いな い。だけど、私には平和すぎる・・・。そう、平和は私の首をじわじわと締め上げて窒息死させようとし ているのだ。)
「ねぇ、レイラ・・・。レイラ・・・。レイラったら!」
「え・・・?」
おもむろに顔をあげる。
そこには見慣れた景色と共に人懐っこい笑顔が目に入る。
「あぁ・・・。」
「もう、大丈夫?」
「うん・・・。ごめん。」
「レイラったら、いっつも突然意識無くなったみたいにボーとするんだもん。」
「そんなつもりはない・・・って、ちょっと。」
ミイナの手がレイラの額に当てられる。
その手は、ひんやりとしていて気持ちの良いものだった。
「熱は・・・ないね。」
「いつも言ってるでしょ?体調は悪くないって。」
「まあ・・・そうだけど、そうそう聞いて聞いて!」
「なに?」
「また、おもしろい話聞いたんだ!」
「面白い話・・・ね。」
「うんうん、今ね劣化病っていうのが流行ってるんだって。」
「それって病気なの?」
「うん、突然体が腐り始めて2日もしないと完全にチリになっちゃうらしいよ。怖いね。」
「はぁ・・・。」
レイラはため息をつくと次の時限の用意を始めた。
「ちょ、ちょっと!聞いてる?」
「あのさ、この世界には病っていう概念はもうないんだよ?」
そうこの理想郷には、既に病という概念はなくなっていた。
病院や医師、薬というのはあるがケガをしたとき応急手当をする程度のためだけにいるだけだ。
「まあ・・・都心伝説なんだけどさ。」
「ほらね。そうだと思った。」
「だけどだけど!本当に、最近謎の病が流行ってるんだよ!」
「はいはい。」
「例えばさ、3組のセツナ君。ここ2週間来てないらしいよ?もしかして・・・劣化病かも・・・!」
「そういうのいいから。」
「あ、ちょっと待ってよ!」
レイラが教室から出ていく。
その後をちょこまかと走りながらミイナが走り出す。
そう、この時は冗談だとレイラ自身が思っていたのだ。だが、数週間後王政によってメシア討伐部隊が編成されたときレイラは、ミイナの話を信じることになったのだ。
その目的が劣化病の撲滅だったからだ。