結局学校へ(Bルート)
~ショウ視点~
誰かが叫んだ。
「敵襲か!警備兵、状況を報告しろぉ!」
俺が生まれて初めて放った魔法は何故かあたり一面を燃やした。炎が白いからきっと高温なんだろう。不思議と俺の半径一メートル位の所には何もない。安全地帯だ。レナさんは自分を水の壁で覆っている。流石は特殊任務隊。こんなことにも慣れているのだろうか。
炎は二十秒位で収まった。自然鎮火にしては早すぎるから、きっと誰かが消化してくれたんだろう。良かった。
レナさんが近づいてきた。
「今後許可が降りるまで魔法の行使を禁じます」
でしょうねぇ。しかし、何故あんな範囲魔法みたいな事になったのだろうか。対象が無いから魔力が四方八方に飛び散ったとか。うん、それっぽいな。
その後、レナード隊長と会話した部屋に連れていかれた。燃えた建物はなんとかなるそうだ。弁償とかじゃなくて本当に良かった。それでもレナード隊長は怒っていた。目が怖い。
「ショウ・ランドルフ君、以前に魔術を放った記憶はある?」
「無いです」
「火炎を制御していた感覚はあった?」
「無いです」
「そう」
全てノーと答えた。まあ本当のことだし。
長い沈黙の後、彼女は俺に極刑を宣告した。
「学校に行ってみない?」
「うぇ?あー…はい。行きます」
俺はノーと言えないジャパニーズだった。学校に行くという悪魔的な行為を受け入れてしまったのだ。何か最悪な一日だ。異世界に飛ばされて王立騎士団の兵舎をファイアして、学校に行けと言われる。何て日だ!!!!!!
俺が学校に行く理由としては、魔力量が計り知れない上に上位魔術師クラスの魔術が使える。だがそれが制御できない。王都でさっきみたいな魔術をぶっぱなしたら民衆が大混乱に陥る。それはちとキツいから学校で魔術の制御を学んでこい。ということらしい。
「無事に卒業したら騎士団への入団を許可するわ」
「マジすか」
ついでに仕事のアテもできた。
入学は早くても来週だそうだ。それまでにできるだけ沢山の事を学んでおく。
とりあえずこの世界について。世界は一年が十二か月三百六十五日で地球と同じだ。覚える必要がないのはありがたい。時刻もあるようだが、時計がないのできっちりと決まってはいないらしい。
今俺がいるのは白龍大陸で、もう一つ黒龍大陸ってのもある。この二つの大陸の間には灰龍海峡がある。覚えやすい。白龍大陸には人族を始めとした様々な種族が共に生活している。エルフもいるらしい。いつか会ってみたい。黒龍大陸は魔王が統治していて、実態はよくわかっていない。魔物が白龍大陸とは比べ物にならない位強いらしい。そんなところで暮らしている人々もさぞ強いことだろう。黒龍大陸は鎖国状態で、白龍大陸の国とは国交がない。
白龍大陸には大小いくつもの国がある。ほとんどが王国で、民主主義国家は無いようだ。経済的にも、軍事力的にも一番強いのが俺がいるトルネリア王国だ。領土が大きいので鉱産資源、海洋資源、食物自給など全て自分達だけで賄えるというとんでもない国なんだとか。ここに次いで強い国がネルモン神聖帝国。何が神聖なのかは知らないが、大きな宗教の本拠地があるらしい。ヴァチカンみたいなもんかな。
最近は戦争もなく平和な時代だそうだ。良かった。平和だからこそ学校に通えるんだ。そう思うとあれだが、まあ平和が一番だ。
ちなみに奴隷は普通にいるらしい。今はどうでもいいが。
次に俺が転入する学校について。どうやら超エリート校のようだ。その名も王立魔法学校。ホ○ワーツではない。魔法学校という名前の通り、魔法教育に力を入れている学校なんだとか。別にその他の事を学ぶことも可能だが、メインは魔法だ。生徒は自分のやりたいことをやる。勉強してもよし、ひたすらオリジナルマジックを開発するもよし。階段を登る女子を下から見上げてスカートの中を…みたいな事に明け暮れるもよしだ。何をしてもいい。日本の高校よりも自由だな。生徒の年齢は様々だ。十二歳位の子や、長寿な種族の百歳とか色々だ。おっさんもいれば、幼女もいる。うん。遊び呆けてもいいが、入学から五年後の卒業までに卒業論文のようなものを書かなければならない。内容次第で卒業後にもらえる資格が変わってくる。「王立魔法学校A級卒業」みたいな感じらしい。めんどくせぇ。
そんなこんなで転入当日を迎えた。
一応ジャンルは「学園」ですからね……