きゃわいい転校生
~顔合わせ前~
「佐川先生が顧問なんですか。改めましてこの度生徒会長になりました。三芳将です。何卒よろしくお願い致します」
「堅すぎるよ。よろしくね。それで、最初の仕事なんだけど、三芳君英語得意だよね?」
「嫌いなものは女子と英語です」
「そういうこと言わないの。それに英語は五だよね(五が最高の五段階評価)?海外派遣もやったし」
「英語得意です」
「良かった。それでね、イギリスから転校生が来るの。かわいい子二人」
「何年生ですか!」
「やっぱり男の子だね。一年と二年で、姉妹だって。生徒会には生活のサポートをしてもらいます。来週来日するみたいだから、空港まで行くよ。学校のお金でね」
「了解です」
~翌日、生徒会室(放課後)~
「と、言うわけで土曜日にその姉妹を迎えにいきます。ただ、お金がかかるので各学年二人かな。ちなみに俺は確定だそうで。できれば英語ができるやつがいい。んじゃ決めて」
土曜日に空港に行くらしい。成田空港はこの辺からは離れた場所にあるから、その子達が成田空港で飛行機を乗り継いで近くの国内線専用空港に来たところを出迎えるらしい。面白そうだが私は行けない。
「三芳くん、私、塾があるから行けないや」
「そっか…山村さんは?」
「行けるよぉ」
三年は三芳・山村、二年は西島・八瀬に決定した。いいなあ、楽しそうだなぁ。
学級委員長として刃坂君も行くそうだ。
~土曜日、空港~
俺はこの世に生を受けてはや十五年になるが、海外に行ったことがない。ちなみに将はイタリア、オランダ、オーストラリアに行ったことがあるそうだ。親が旅行好きらしい。実に羨ましい。
「なぁ康生」
「どした?将会長」
「俺実はさ、今年の冬休みにロンドンに行くんだ…」
うらや…けしからん。貧乏人に自慢するなど言語道断である。普段なら皮肉のひとつでも返してやるところだが、ここは学校ではない。空港だ。俺は社会的なマナーも弁えている。
今日空港に来たのは俺、会長、山村、佐川先生、西島、八瀬、一年学級委員長の勝田の七人だ。丁度昼飯時なので到着ロビーの椅子に腰かけてそれぞれ持参(三芳はしれっとその辺で買っていた)の昼食を食っていた。時間は十二時三十八分。転校生一家の飛行機は一時二十分到着の予定なので、まだ十分時間がある。
暇だから将とくっちゃべることにする。
「なぁ将」
「ん?」
「転校生ってさ、かわいいの?」
「佐川さんが言うにはそうらしいな」
「佐川せ・ん・せ・いでしょう?」
「ごめんなさい先生。それで、転校生はかわいいのですか?」
「そりゃあもうべっぴんさんよ。でも日本語がわからないからって、変なこと考えちゃダメよ?」
こういう事を言われたとき、変なことを一切考えていなくてもどもってしまう。これに共感を覚える人は多いのではないだろうか。
「そ、そんなこと考えてませんよ」
「思春期ねぇ」
「将、お前が言うな」
なんだかんだ言って佐川先生は楽しい人だ。好意に値するよ。
そんな感じでふざけあってたら時間になった。
ひたすら自動ドアを眺める。ドアが開く度にみんな柵から少し身を乗り出して外人を探す。俺は先生に渡されたボードを掲げる。それには転校生の名前が書いてある。そういや佐川先生は英語話せるんだろうか…
そして時が来た。
「わぁ…」
思わず見とれるような二人の美少女がこちらに向かって歩いてくる。俺が持ってるボードを見つけたようだ。やべぇマジかわいい。ちらりと将を見ると、あの女嫌いが口を開けて呆けている。これは奇跡だ。仕組まれた奇跡なのだ。定められた奇跡なのだ。
「刃坂君、見とれてないで挨拶して。私英語無理だから」
気づいたら二人の女神は目の前にいた。思わず胸に視線が落ちる。なんだよ、丁度いいじゃないか。
言葉が出てこない。日本語が英語にならない。やべぇどうしよう。
「こんにちは(日本語)。はじめまして。お会いできて光栄です。僕は三芳将といいます。ご自由にお呼びください。(ここまで英語)」
将さんまじパネェ。あのアホ面から立ち直るとは流石だ。俺も負けられん。落ち着け康生、冷静になれ…
どんどん会話が進んでいく。
「コンニチハ、ワタシノナマエ、ナマエ?ハ、アリス・ウォルコットデス。ドウゾ、アリス、トヨンデクダサイ(日本語)。こちらこそお会いできて光栄です、将さん。英語お上手ですね(英語)」
「ありがとうございます。アリスさんこそお上手な日本語でした。ところでそちらの女の子は…」
「そんなに堅くならないで。紹介するわ。私の妹、ペネロピよ。ほら、挨拶しなさい(英語)」
「ペネロピです…(英語)」
「こんにちは。三芳将です」
「ごめんね。人見知りなの。それで…」
俺は会話に入るのを諦めて、山村と一緒に一年生に会話の内容を通訳していた。西島はペネロピをチラチラ見ている。そんな彼を見る八瀬の目が怖い。まさか…
佐川先生はアリス達の両親と話している。ウォルコット夫妻は日本語が話せるようだ。二人とも整った顔立ちをしている。羨ましい。
アリスは身長百六十五センチ位で、綺麗な金髪。女子にしては背が高い。ヨーロッパだと普通なのか?そして細身で腰の位置が高い。何があっても横並びになってはいけない。胸は先程述べた通り丁度いい。大きすぎもせず、かといって小さすぎない。素晴らしい。白いワンピースがよく似合っている。
顔はもはや書くまでもないが、美少女だ。美少女すぎて美少女が美少女している。バラの大輪というよりはヒマワリのような透明感がある。艶かしい感じではない。汚れを知らない感じだ。実に素晴らしい。少し日焼けした肌には一切の汚れがなく、大きな青い瞳、すっと通った鼻、薄い唇。その全てが完璧なバランスでくっついているのだ。ちなみに俺はただの思春期少年であって変態ではない。大事なことだからもう一度書く。変態ではない。
ペネロピもアリスには劣るが十分美少女の域に入る。少なくとも西久保より上だ。あくまでも俺の基準だが。身長はアリスより少し低い。アリスと同じ金髪で、やはりアリスと同じく腰の位置が高い。胸は少し小さいように見える。服の上からだとわからないが。アリスとお揃いのワンピースだ。
顔も良い。アリスがヒマワリならペネロピは野に咲く小さな一輪の花といったところか。姉と同じく日焼けした肌。そして少しそばかすがあるのがチャームポイントだ。これも姉と同じく青い瞳だ。きれいだなぁ。ちなみに俺はただの思春期少年であって変態ではない。大事なことだからもう一度書く。変態ではない。
将とアリスが少し会話した後俺たちも自己紹介をした。俺は英語もできる。使うときが無かっただけでな。だから普通に挨拶した。
その後我々が学校生活をサポートする事を伝えてお開きとなった。いやぁ月曜日が待ち遠しい!
「お姉ちゃん」
「ん?どうしたのペネロピ」
「何であの将とかいう人とあんなに仲良くしてたの?」
「え、そりゃぁこれから日本で暮らすんだから、友達を作ろうと思ってさ」
「…ふーん」
「ちょっとトイレ行ってくるね」
「うん」
「…お姉ちゃんは私だけのもの。誰にも渡さない。三芳将には近づけさせない…!」
シスコン!