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生徒会役員選挙があるんだとか

 拙い文章ですが、よろしくお願い致します。

 六時間目の始まりを知らせるチャイムが鳴った。廊下にいた生徒がまるで吸い込まれるかのように教室に消えていく。この中学校には各学年二クラス、計六クラスしかない。中学校自体も、公立の特に特徴がない学校だ。二年生に問題児が多いという典型的な汚点がある。問題児以外にも二年生には問題が多い。

 二年B組に、変な奴がいる。そいつは先生が来ていないのをいいことに、授業(総合学習というもので、授業とはいえないかもしれない)が始まったにも関わらず本を読んでいる。

 隣の女子が声をかけた。このクラスでは可愛い方だ。


「チャイム鳴ったよ」


「知ってます(何でいちいち話しかけてくんだろ、という意味)」


 そう言って再び本を読み始めた。奴の口調には、関わりたくないという意思が滲み出ていた。いつもこんななので、クラスでは一部の奇人を除いて誰も奴に話しかけたりはしない。お互いに不幸になるのがわかっているからだ。今話しかけていた女子は奇人に属する。

 突然奴は何かの気配を察知したかのように本を閉じ、机の中に入れようとして思い直し、鞄に突っ込んだ。机の中が教科書で一杯でスペースが無かったのだ。本がしまわれるのと同時に担任が入ってきた。佐川先生といって、若い女性の先生で、社会を教えている。運動が大好きらしい。


「遅れました。じゃあ号令!」


 授業が始まった。授業といっても総合では行事に関することを決めたりすることが多い。ただ、夏休みが明けたばかりなので特に何もない。唯一あるのはこれだった。


「えー、もうすぐ生徒会役員選挙があります。朝言っておいたように、ここで立候補者を受け付けます。この時間だけじゃなくて、明日までです」


 生徒会は九月に選挙をやって次の年の九月まで活動する。時期が時期だから三年生は立候補できない。そして役員になったら一年間顧問の下で社畜の如く働かねばならない。この学校は生徒数が少ないので、生徒会長にすら特別な権限はない。むしろただ責任を負わされるだけの役目だ。生徒会長には二年生しか立候補できない。

 これらの事情から想像できるように、野心家は高校進学のための輝かしい実績を手にいれるためだけに立候補するのだ。もちろん学校を変えたい、という考えの人もいるだろうが、圧倒的に少数派だ。


「三芳君は立候補するの?」


「しない(全然仲良くないのにな。うざいな、という意味)」


 奴、三芳(みよし)(すすむ)は社畜生活よりも自由を選んだ。まあ、ごく自然な思考だろう。しかし、話しかけてきた女子、神崎(かんざき)梨華(りか)は何故将にそんな事を聞いたのだろうか。

 別に神崎は将のことが好きだ、というわけではない。また、彼女はそこまで積極的に男子と話をしない。答えは単純である。今まで将がエリート的な道を歩んできたからだ。

 まず、彼は中二の語学力で海外派遣生として夏休みにオーストラリアでホームステイ生活をしてきた。もちろん一切言葉はわからなかった。「ベッドの下にエロ本があります」とか「私はイタリアに行ったことがあります」という英文の作り方すらわからなかったのだ。自分では一度も勉強しなかった。なので中二の途中までに習った言葉で生き抜いたのだ。無駄に自分を苦しめただけだったが。

 海外派遣生に立候補した理由は、「なんとなく面白そうだったから」だ。そのとき感じたことを実行に移す(後先考えてないけど)。それが将の長所であり短所でもある。

 そして、こんなのが部長なのだ。これにも訳がある。簡単に説明すると、

体験入部(一年生の時)→部員数一人の文化部へ→三年生の部長いわく、「今年誰も入部しなかったら廃部なんですよ~」→情に流され入部→二年生になって部長に昇進する→部員が六人入る→海外派遣関連の用事でほったらかす→久しぶりに顔を出したら全員幽霊部員に→呼び戻すのが面倒→一人で活動→肩書きは部長

 という悲劇が起こったのだ。ちなみに、廊下で幽霊部員にすれ違う時は、自慢のエクボ(可愛いもの)があるにも関わらず黒く見える笑顔で挨拶している。

 という事で、神崎は将の出馬を予想したのだろう。しかし、生徒会には魅力を感じないし、流される情も無い。よって将は立候補しない。

 少し時間がたって、暫定だが二年B組から出馬する人が決定した。全員女子だ。ちっちゃいバスケ部員、前橋(まえはし)早苗(さなえ)。将の数少ない友人、つまり奇人の国本(くにもと)弥生(やよい)、明らかに実績として会長の座を狙っている学力トップクラスの西久保(にしくぼ)美樹(みき)。この三人が選挙戦を行うらしい。一応全員がそれぞれ可愛い(女なんて顔を剥いだらどんな本性晒すかわかったもんじゃない by三芳将)。

 チャイムが鳴った。


「じゃあ、立候補する人は明日の昼休みまで受け付けますからね。じゃあ、号令!」


 この日から三芳将の人生は狂い始めた。

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