ケンジャ
「この前は……変なもの見せちゃってごめん……」
「いえいえ……貴重な経験をさせていただきありがとうございました……」
帰り道、2人の賢者が現れた。
「あの人ってタケちゃんの彼女?」
「いいや。自分では違うと思ってるけど……」
「付き合ってないのにあんなことしてくるの?」
「いつものことじゃないか。あいつ、好きな人に向かってはいつもあんな感じじゃん。忘れたの?」
「あ、ああ。思い出した思い出した。そんな奴だよなあ」
正確にいえば知らない。とりあえず話を合わせた。
「で、タケちゃんとしてはどうなの?付き合うの?どうするの?」
「分かんない。もうちょっと落ち着いてからにするよ」
それがいいとおもう。さすがに今の状況では無謀だ。
気が付いたら家のベッドにいた。
また悪夢との戦いが始まるのか。
今度はいい夢だったらいいな。
……ん?
感覚はある。
よくわからない電子音も聴こえる。メトロノームだろうか。一定の間隔で鳴り続ける。
目は見えない。暗い。開かない。
触覚は?ある。シーツ。枕。大丈夫。
僕はまだ幸せな恋する高校生だ。
その時、聞こえたのだ。声が。
「ねえ、起きて。」
あの子だ!