リトライ?
「……で、最悪だったわけね?」
「……うん」
城ノ内さんと反省会。
やらかしてしまったわけだ。
念願の初デート。で、緊張のあまり最悪の結果に。
……はあ。もうチョー最低。チョー最悪、もう失態。
「あんた、もうほんとにどうしようもないやつね。こっちが恥ずかしくなっちゃう。でさ、具体的に、どんなデートだったのよ?」
「それがさ、覚えてないんだよ。なんか、緊張しすぎてて、記憶がパーっと飛んじゃった」
「なっさけない男。一ノ谷さん言ってたよ?スタバで隠しメニュー頼もうとした人初めて見たって。『あれにはさすがにドン引きした』って。それに、3時間も歩かせたって聞いたわ。もうあり得ない。最低。
それに……」
もうやめて!
僕は大声で叫んだ。
「そ、そこまで言うことないじゃない。ちょっとからかっただけ。でも一ノ谷さん言ってたよ。『ハヤト君って、冷静な時はカッコいい』って」
え、えっ?ホントに?
ちょっと嬉しくなった。
「わかった!あんたって、女性とかかわったことがないんじゃない?もちろんデートなんてしたことないでしょうに。タケちゃんを見てみなさいよ、あいつ女の扱い方上手よ。ま、酢月の甘え方が上手なんだろうけど。あいつの惚気話聞いてるだけで気分悪くなってくるもん。それに比べてあんたって……」
「もう……そんなに僕をいじめて何になるんですか。何か変わるわけでもなし……」
「練習よ。練習。わかる?」
この人、何言ってるんだろう。
「私と一緒に今度出かけましょう。そうしたら、私がみっちり教えてあげる。女性との付き合い方ってもんを。どう?」
「まあ、良いけど……これって、2人?」
「もちろんじゃない。それ以外に何があるっていうの。大丈夫。予定とかは私が決めてあげるから。費用の9割はあんたね。当然ね!」
「は、はい……」
城ノ内さんて、ちょっと怖い……
「感じる……感じるわ……」
「うわっ!びっくりしたあ!みづほさん、いきなりどうしたんですか!」
こんなタイプはちょっといやだ。精神的に来る。あの背骨に何かが走るあの感触が、とてつもなく嫌いだ。
「何か……熱のような……愛……ものすごく焼けた鉄板、いや、獲物食らう猛獣が、餌を待ち構えているような……」
「な、なんだよ、怖いこと言うなあ」
「気をつけた方がいい。食われる前に食うのよ」
その言葉だけが胸に突き刺さった。