リカイ
「タケちゃんおはよー」
「おう、ハヤトもおはよーさん」
少々眠いが、そんなこと言ってる場合じゃない。
「あのさ、朝一で悪いんだけどさ、酢月のことなんだけど」
「酢月ってタケちゃんの彼女……みたいな人」
「あいつすげえな。つい一昨日までお前のこと狙ってたけど無理そうだったから俺に乗り換えたんだってさ。
おかしな話だよな」
……?
心当たりがある。
最初の日の帰り道、僕に付きまとってきた女……
酢月だったのか。
僕は背筋がゾワッとした。ただものじゃない気がする。
僕はとりあえず「がんばれよ」とだけ言っておいた。
まあ、そんなに可愛くないわけでもないし、外見だけならお似合いなんじゃないか?
性格はアレだけど。
でも、最近はタケちゃんの事に振り回されて、僕のことがまったく出来ていないじゃないか。
僕は少しでも一の谷さんと仲良くなるために頑張らないといけない。
どうしたら仲良くなれるか、それを考えなきゃならない。
でも、思い付かない。とりあえずもうちょい様子見でいいか。
学校の授業は相変わらずつまらない。
「ひらがなのかきかた」なんて10年前にもうやった。
なのにみんな一生懸命だ。
ここまでして、何になるのか。
……ん?10年……前?
僕は一週間前に目が覚めた。それ以前の事は何も……
分かってきた。この世界と、昔の世界が。
僕が目覚める前、同じような高校生だった。
学校の授業はもっと難しい。
でも、いた人は同じようだけど、もっと多かった。
もう少しで、この世界が理解できそうだ。