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メザメ
――ん?
真っ暗だ。何も見えない。僕は寝てたのか?
目を開けてみる。開かない。
体を動かす。動かない。
もしかして、金縛り?
僕は体をジタバタさせ(ようとし)た。でも、感覚がない。
怖くなった。でも、どうすることもできなかった。
朝が来たようだ。
でも、分からない。僕は誰?ここはどこ?
とりあえず、階段を下りる。
そこには、見知らぬ女性(中年)がいた。
「あら、ハヤト、起きたの。早く朝ご飯食べちゃいなさい」
どうやら母のようだ。
「あ、あの……僕の、お母さんですか?」
「あんた何言ってんの?」
「分からない。分からないんだ」
「とりあえず、病院行ってみる?」
話がよくわかるお母さんだ。
「逆向性健忘ですね。要するに記憶喪失です。彼は高校生ですか?」
「ええ。そうです」
「計算や知識は衰えていないようですので、通学させて大丈夫ですよ」
え?普通通院とかしない?そのまま?
今日から学校。人の名前を覚えるのに一苦労するだろうが、まあやってみるしかない。