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ライバル店にて

「マスター!大変!大変ですよぅ!!」


 ここは冒険者の店”ガルフ”の店内。

 ガルフはカンタル通り沿いにあるこの都市で最大の冒険者のお店である。

 そこに一人の少女が大声を上げながら入ってきた。

 中にいた冒険者達も何事かと彼女に目を向ける。


「また、お前は…毎回言っているが声デケェんだよ!」

 店主のガルフレット・バンクは呆れた声を上げた。

 店に飛び込んできた少女はミリアリア・ガネット。

 小柄で、耳付きの白いフードコートを着用していること、ちょっとした事でもぎゃんぎゃんと大騒ぎすることから子犬の愛称が定着している。


「いいから!

このチラシを見てください!

冒険者カフェ"ウィリムス"っていう店が昨日できたんですよ!」

「…情報遅くねえか?

ミンタル通りに出来たカフェだろ?

つーか先週うちにも店主が挨拶に来たぞ。

それがなんだってんだ?」

「カフェだけじゃありません!いいから読んで下さい!」

「たくっ、なんなんだよ。」

ミリアリアがうるさいのでガルフレットはチラシに目を通した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

~冒険者カフェ"ウィリムス" 花の月14日 OPEN! ~

 当店はカフェと冒険者の店が一体になった次世代型カフェです。


 何かと時間のかかるクエスト受付の合間に美味しい紅茶やお酒、料理を堪能することができます。

 戦いで疲れたあなたの身体を癒す憩いの場を提供いたします。

 一般のお客様も大歓迎!


 OPEN記念としてご来店された方には当店自慢の紅茶をサービス致します!(今月末まで)

 皆様のご来店を心よりお待ちしております。


 *当店は冒険者協会認定店です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――



「冒険者の店って…同業者じゃねえか!聞いてねぇぞ!」

「だから大変だって言ったんじゃないですか!」


 先週店主が挨拶に来たが、同業だとは言っていなかった。

 ガルフレットは冒険者カフェを開業すると聞いて冒険者を対象にしたカフェを経営するものだと思っていたのだ。

 それはガルフレットの勘違いであったが、はっきりと冒険者の店だと告げなかったその店の店主に対して憤りを覚えた。(ちなみにアサギの言い回しが悪かったのが大きい)

 確かアサギと言ったか?


「昨日お客がちょっと少ないと思ったら、どうもその店に行ってたみたいなんですよぅ!どうしましょう~」

「ふん。どうもこうもしねぇよ。

この業界は新規参入が難しいんだ。

どうせ3ヶ月もすりゃ潰れるだろうさ」


 新しくできた冒険者の店はすぐに廃業してしまうことが多い。

 取り扱えるクエストが少ないこと。

 信頼や実績がないこと。

 協力な冒険者とのコネがないこと。

 などが、なかなか固定客がつかない要因になっている。

 ガルフレットは今回もその例に漏れず、すぐに廃業に追い込まれるであろうと思った。

 とりわけ対策など打つ必要もないだろう。だが…。


「だが…態度が気に食わねぇ。

業者だったらもっとしっかり挨拶しろってんだ!ふざけやがって!

俺はそういうなめくさった態度が大嫌いなんだよ!」

「えっと、どうするんですか?」

「なーに。開店祝いをくれてやるだけだ。

冒険者の店らしい、少々手荒なやつをな」


ガルフレットはにやっと笑い、ミリアリアに銅貨を何枚か渡した。

「エッジのやつに挨拶に行かせろ。どうせ昼間からエリカの店で呑んだくれてるだろ」

「うぇ。あの粗忽な人をですか…。流石にお店の人が可哀想ですよぅ」


 ミリアリアが思わず怪訝な顔をしてしまう人物、エッジ・ハイドはかつてA級冒険者として名を馳せた男だ。

 カランを中心に活動している冒険者で彼を知らないものはいない。

 と言っても今は冒険者としてではなくその素行の悪さで、だが。

 彼はちょっとした事ですぐに頭に血が上り暴れまわる。

 暴れまわると誰も止めることができず毎度毎度けが人は出るわ、物は壊すわで、至る所で厄介者扱いされていた。


「何言ってんだ。冒険者なんてキレやすいやつばっかだろう。うまく御せないならその程度さ。潰れるのが早まるだけだっつーの。ほら、さっさと行って俺の代わりにウィリムスへ挨拶に行くよう伝えて来い」

「うぅ、私あの人に近づきたくないんですけど…」


ガルフレットは少し悲しそうに言った。

「はっ。今のあいつに近づきてぇ奴なんていねぇよ。誰もな」




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