表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/27

人手不足を解消しよう

「「「ありがとうございましたっ」」」

現在の時刻は午後6時。

アサギ達は開店初日の最後のお客にペコリと頭をさげ、見送った。


 料理の味も好評で、売上もなかなか上々であった。

 特にサービスの紅茶が好評で、また来ると言ってくれたお客さんも多かった。

 しかし…順調なのはカフェの方の経営であり、冒険者業務はそうでもなかった。

 ナナギが手伝ってくれたおかげでアサギは冒険者の受付に専念できたのだが、冒険者達の反応はどれもいまいちだったのだ。


「えっ?この店C級クエスト取り扱ってないんですか?」

「この値段だったら、ガルフで売ったほうが高いんだけど…」

 等々、いろいろと不満を言われた。


 貴重な意見なので今後の参考にはさせてはもらうが、アサギは少し言い訳をさせて欲しかった。


 というわけで言い訳させていただこう。


>「えっ?C級クエスト取り扱ってないんですか?」


 国や自治体は魔物の討伐依頼だけでなくクエストの依頼も行っている。

 例えば、首都までの道程の護衛や、人探しなどが挙げられる。


 クエストは難易度に合わせてE~Sランクまであるのだが、新規店舗では取り扱えるクエストはEとDランクだけだ。

 これは新規の店では信用がないためだ。

 そういったわけでC級クエストは取り扱いたくても現段階では取り扱えない。

 そして客は店によって取り扱えるクエストに違いがあることを知らないことが多い。

 それというのも、この制度は1年前に出来たばかりでそれ以前に営業している店には規制がないためだ。


 取り扱えるランクを挙げるには報奨金制度、クエスト制度を活用し、ポイントをためていく必要がある。

 そしてポイント数が基準を満たすと次のランクのクエストが取り扱えるようになる。

 余談ではあるがこのクエスト制度は新規店舗の参入障害になっているのだが、現在のところ、この制度が見直される気配はない。


>「シルバーホーンの角がこの値段?だったら、カンタル通りにあるガルフで売ったほうが全然高いんだけど…。」


 シルバーホーンは言ってみれば銀色のサイみたいな魔物だ。

 討伐の証明としてシルバーホーンの角を引き渡すのだが、この角はすりつぶして粉状にすると滋養強壮薬となるのだ。

 報奨金としては、銀貨1枚がもらえるのだが、店に薬師が居る場合、そのまま店頭で薬として販売できるため買取が高値になるのだ。

 

 腕の良い薬師がいる冒険者の老舗”ガルフ”では角を高価で買い取れる。

 アサギの店には薬師は居ないのでそんなことはできない。実に羨ましい話である。


 このように魔物討伐の証明に提出する部位は薬や部品などに利用できるものが殆どで、報奨金制度を利用するよりも自分で作ったり、業者に売ってしまったほうが利益が出ることが多い。

 ただ、うちの店は当面報奨金制度を利用し、評価ポイントを獲得していく方針だ。

 当面の目標はAランククエストの取り扱い!

 そのため、材料を業者売り渡し利益を上げることは今すぐにはできない。

 まあ、売るツテがないというのもあるが。


 だが、こういった事情は利用する客にとってはなんの関係がない。

 高く買ってくれて、安く売ってもらえる店に流れるが当然だ。

 けれども、その差は現状では埋まることはないため、代わりにウィスムス独自のサービス、品質を提供していく必要がある。

 そして考えついた案の1つがカフェの経営である。

 普通冒険者の店はクエストの受付、換金などしか行っておらず、カフェを一緒に経営しているところなどない。

 また、これは自慢だがレイニーが入れる紅茶はめちゃくちゃ美味い。

 これが今のところのウィリムスの売りである。

 他にもアイデアを考えていかないといけないが、このあたりは鋭意努力が必要である。


 課題は他にもたくさんある。

 頭を抱えたくなることもある。

 けれども、少なくても今日はとても楽しかった。

 目が回るほど忙しくて疲れたが、この疲れも心地よい。

 これほどの充実感を感じたのは久しぶりだ。

 今日だけはこの余韻に浸っていてもいいだろう。


 そんなことを思っているとナナギが軽く伸びをしたあと、レイニーに声を掛けていた。

「レイ、今日はお疲れ様。それで悪いけどちょっと行くところがあるから片付けお願いしていい?」

「全然いいけど…もう帰ちゃうの?」

 

 レイニーは名残惜しそうにしている。

 アサギも同様だ。

 

 今日は本当にナナギに世話になった。

 ナナギがいなければこんなにうまくは行かなかっただろう。

 お礼もせずに返すのは心苦しい。

「そうだって、ナナギ。今日の礼くらいさせろよ。せめて夕飯くらい食べて行け」


 ナナギはアサギの言葉に頭を抱えると冷ややかな目をアサギに向けた。

「私もそうしたい所だけど、今すぐに行かなければいけない所があるのよ。

 と、いうか貴方も来るのよ?」

「は?」

何処に?何をしに??アサギが検討もついていないようなのでナナギは呆れてため息を1つ吐く。

「ウエイトレス、必要でしょう?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自分の小説が楽しいと感じるなら楽しめるはずです!…
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ