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閉店後

 冒険者カフェ"ウィリムス"はもう閉店時間である19時を過ぎていたが、そこにはまだお客が食事をしていた。

 バーチェとサーニャ、そしてドルチェである。

 とはいっても実際に食べているのはもうバーチェだけであったが。


「それにしても、このサババの煮付けはほんとうに美味しいわね」


 先程までの怒りはすでに何処かへ行ってしまったようで、バーチェはレイニーの作った料理を夢中で詰め込んでいた。

 どうやら体力と魔力を使わされてお腹が減ったらしい。

 レイニーはバーチェの言葉にかすかに口元をほころばせて答える。


「ありがと。良かったらこのワインもどうぞ。サババによく合う」

 そう言って、グラスにワインを注いでいく。

 営業時間を過ぎているのであんまりサービスしすぎるなよ。とアサギは言おうとしたが、それ以前の問題に気づいた。

「って。おい、レイニー! 未成年に酒なんか飲ますなよ!」


 レインはきょとんとした顔になる。

「ん? アサギ。この子は16歳だって言ってた。お酒飲んでも大丈夫」

「は?」

 アサギもそれを聞いて怪訝な顔をする。

 そこに口を出したのはアリサだ。


「アサギさん。この国では16歳で成人なんですよ。だから、お酒も16歳から飲めます。」

「あー。そうなのか。この国だと16歳で成人なんだっけ…。」

 アリサも16歳で孤児院に出ていかなければならなかったのだが、それはその歳で成人になるからなのである。

 アリサはアサギがエルフに偏見が無かったことからもしかしたら他国の人間ではないかと思っていたが、この一言でそれを確信した。

 そして、それに気づいたのはアリサだけではなかった。


「へー。そんなことも知らないなんて常識がないわね。その黒髪も珍しいし、あんたこの国の人間じゃないでしょ?」

 バーチェがサババを頬張りながら、アサギにフォークを向けてそんなことを聞いてくる。アサギはその態度が少し引っかかった。


「…あのさ、バーチェさん。今日何度か思ったんだけどさ、初めて会った年上の人間に態度がでかくない?

別にいいんだけど、人によっては礼儀がなってないと感じるぞ?」

 このバーチェという少女、実に態度がでかい。

 さっきのライセンス登録の時もだし、今も閉店時間を過ぎているが気にもせずゆっくりと食べ、平然とおかわりまでしている。

 店のことを気にしてサーニャ達が早く食べるよう言っているのに気にした様子がない。


「アサギ様。お店にご迷惑をかけて申し訳ありません。この子、いつもこんな調子なんです。私がいくら言っても聞かなくて…。できれば子供の戯言だと思って聞き流してやって下さい」

 サーニャはそう言ってバーチェをフォローする。

 この子はいい子だなぁと思っているとバーチェはそれを否定する。


「サーニャが謝る必要はないでしょ。それにいつも言ってるように、私はいずれ宮廷魔法師になる人間なのよ。態度はデカイくらいでちょうどいいのよ」

「もう、また出た。何処から来るの? その自信は」

「本当にお前は…。だから面接で落とされるんだよ…。」

「宮廷魔法師ってファスタリア王国で7人しかなれないっていうあれか?」


 ファスタリア王国軍には魔法師隊が組織されているが、それとは別に王族に直属で仕える魔法師がいる。

 それが宮廷魔法師である。

 宮廷魔法師は一部の人間のみが許される魔法師の最大の称号であり、その数は現在7人しかいない超エリート職業なのである。


「あのなぁ、バーチェさん。宮廷魔法師になるにしたってそんな態度だと痛い目にあうぞ。今のうちに直しておいた方がいい」

「たかが一般人が私に指図しないでくれる?それに私は人を見て態度を変えているの。敬うべき人物は敬うつもりよ」

「…いや、だから人を見て態度変えない方がいいと言っているんだけどな」 

 

 まあ、所詮赤の他人の話だ。

 あまりお説教じみたことをするのもどうしたものかと考えていると思わぬ来訪者がやってきた。


「おい。約束通り今度はシラフで来てやったぞ。」

「エッジさん…?」

 店の入口にはエッジ・ハイドが立っていた。


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