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暴虐のエッジ

時は少しさかのぼり、ウィリムス開店2日目の深夜。


「ちくしょう!あの野郎…!!」

エッジ・ハイドは荒れていた。

原因はウィリムスでアサギに容易く打ちのめされたからだ。


どいつもこいつも俺のことを馬鹿にしやがって…!!

エッジはアサギにのされたあと、鬱憤を晴らすように裏路地で暴れまわった。

エッジには道行く人が皆、自分のことを馬鹿にしたように映り、目があった奴らは片端から殴り飛ばした。


その後は行きつきの店であるウッドバーで酒浸りだ。


「おい!エリカ!!もっと酒持ってこい!!」

もうかなりの量を飲んでいたが、エッジは飲むのを一向にやめない。


「エッジ。もう今日はやめない?いくらなんでも飲み過ぎよ…。」

「うるさい!いいから持ってこい!」

「…」

ウッドバーの店主であるエリカは優しく諭そうとするが、エッジは全く聞く耳を持たない。


そこに5人組のガラの悪い男達がゲラゲラと笑いながらエッジのテーブルへやってくる。

「おいおい、エッジさんよぉ。普段偉そうなくせにただの喫茶店の店長に喧嘩で負けたそうじゃないか。

エリカさんに頼むまでもねぇ。酒がほしいんだろ?俺がくれてやるよ」


そう言って一人の男が手に持っていた酒をエッジの頭に注ぐ。

その様子を見ていた他の客達がどっと笑う。


瞬間、頭に血が昇ったエッジは酒をかけた男を殴り飛ばす。


「てめぇ…!」

「そうだなぁ、ダセェよなぁ。だが、そんなダセェ男にのされるお前らはもっとダセェよな?」

「馬鹿が!こっちは5人だぞ!やっちまえ!」


 5人の男たちがエッジに殴りかかる。

 が、エッジは体捌きで攻撃を受け流し、一番恰幅の良い男にカウンター気味に掌打を打ち込む。

 顎に掌打を打ち込まれた男は他の男達の方へと倒れこみ、他の4人はそのまま押しつぶされる形となった。

 体勢を崩された彼らはそのままなすすべなく、一方的にエッジにやりこまれ、彼らは意識を失った。


「槍を使うまでもねえんだよ。チンピラども」


 くそっ!そうだ、俺は強いはずなんだ。

 なのに何なんだあの野郎は!

 俺の槍をあんなに容易く止めやがって!

 飲み過ぎていたせいか?

 いや、そうだそうに違いない!!

 次は確実にのしてやる!!

 そう胸中で考えているところに声をかけられる。


「ちょっと!!やり過ぎよ!!」

 エリカがエッジの腕を掴むが、逆にエリカの腕が掴まれて、関節を決められてしまう。


「うるせぇんだよ!お前もボコボコにしてやろうか!?」

「…それで貴方の気が済むのならやればいいわ。全部、私のせいだもの…」

 エリカは痛みに耐えながら、唇を噛み締めて目を伏せる。

 エッジはその顔を見て本当に殴りかかろうとした所、また腕を掴まれる。


「おい!エリカに当たるな。その辺にしておけ」

 そこにいたのは冒険者の店”ガルフ”の店長ガルフレットであった。


「ガルフ…!はっ、普段ろくに会いにこない癖に、こういう時は顔を出すんだな」


「当たりめーだ。普段はてめえの顔見たら殴りたくなるからな。だが、依頼がこなせなかったとなれば別だ。 開店祝い、届けそこねたみたいじゃねえか。」


「うるせぇ!飲んでたところに挨拶に行かせたてめぇが悪いんだろうが!!

酔ってなければあんなことにはなんねぇよ!次はちゃんとやってやるよ!」


 そうだ。

 酔ってなければあんな無様なことにはなっていない!!

 今のエッジにはそう思い込むことしかできなかった。


 ガルフレットはエッジをじっと眺めたあと、もしかしたらとつぶやき、その言葉に首を振った。

「あの店の態度がムカついたからお前を向かわせたが…もういい。行く必要はない。依頼は取り消しだ」

「次はちゃんと依頼をこなせると行っているだろうが!!」


 ガルフレットは哀れみと悲しみと怒りを織り交ぜたような表情でじっとエッジの瞳を見つめ、掴んだ手を離した。

「そうかよ。なら約束してくれ。もしできなければ…もう、冒険者はやめろ。新しい仕事を探せ」


「…!!」

 それを聞いた瞬間、エッジはガルフレットに殴りかかるが、その時には既にガルフレットはエッジから十分な距離を取っていた。

 エッジは近寄ろうとするが、思うように動かない左足では一向に近づくことができなかった。


「その足でどうして冒険者が出来る?もう、諦めろ。俺達の夢は冒険者でなくても叶えられる。そうだろ?」

「うるせぇぇぇぇぇ!!!」

 店内にエッジの叫び声が響き渡る。

 エリカとガルフレットはその悲痛な叫び声をあげるエッジを見てつらそうな表情になる。


「…約束だ。依頼がこなせなければ冒険者は諦めろ」

 ガルフはエリカにスマンと言い、高額なチップを渡して帰っていった。

 そのままエッジが立ち尽くしているといつの間にか気絶している5人を除いて他の客達もいなくなっており、店にはエリカとエッジの2人だけが残された。


「エッジ…」

「…。あの時、お前を助けなければ、こんなことには…」

「…」


そうポツリと呟いて、左足を引きずりながらエッジも店を出て行った。


誰もいなくなった店内ではエリカが一人、うずくまって嗚咽を漏らしていた。

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