ライセンス登録
ようやく退院しました!
いや、退院はだいぶ前にしてたのですが、痛みが引くまで本当に長かった・・・。(涙)
久しぶりに書いたのでいろいろと書き方とか忘れてしまってます。
文章、内容が変かもしれませんが、許してください。
ライセンス登録は冒険者レベルを選定しライセンス手帳を発行する作業である。
登録する場合、本来の趣旨では冒険者のレベルを見極めるのが最も大事だ。
しかし、冒険者協会では基本的にランクE、レベル1で初期登録するように推奨している。
それというのも冒険者協会ではランク、レベル共にざっくりとした基準しか設けられておらず、店によって審査がまちまちになってしまうためだ。
そして結局はライセンス登録認定の成績が良くても悪くても実力のある奴は黙ってても上がっていき、ない奴は下がって行く。
そのため、登録時はランクE、レベル1が今現在の暗黙の了解になっている。
申請者がよほど不服を言わない限りは登録の際に実力審査はしないのだが…。
「納得いかないわ」
ここに一人余程の不平をいう人物がいた。
不満を述べるのはバーチェだ。
先ほどまでの興味なさげな態度をしていた彼女だが、此処に来て主張をしはじめた。
ライセンス登録することになり、アサギは彼女らを店の奥の部屋の応接間に連れて行った。
そこでマニュアルを読みながら住所や年齢など必要な書類を記入してもらい、手続きは完了するはずであった。
アサギが考えていた問題は文字が書けるかくらいである。
ファスタリア王国では他国に比べて識字率は高いもののそれでもまだまだ5割位だ。
そういった点から言って2人はそれなりの教養を身につけていることがわかる。
最初は説明を聞き、おとなしく書いていたのだが最初はランクE、レベル1に設定しておくと伝えた途端バーチェが不満を言い出した。
「…えーと。バーチェさん。なにかご不満でも?」
「当然よ。私はこう見えて3級魔法師なの。それなのに棒に毛が生えたような素人と同じレベルにされるのは我慢できないわ」
胸に手を当てて自慢げな顔で言ってくる。
いわゆるドヤ顔だ。
ちょっとイラッと来る。
しかし、この歳で3級魔法師か…。
確かにすげぇな。
この世界では魔法師の素質を持つのがだいたい5人に1人である。
さらにその中で厳しい修行に耐えられ、正式に魔法師となれるのが50人に1人。
更にその中で高度な魔法を使いこなし、短縮魔法が使用できる3級魔法師となると100人に1人しかなれない。
なので、ざっくりいうと3級魔法師は50000人に1人しかいない。
それもバーチェのような若い娘だと数えるほどしかいないだろう。
「それに私はランクの高い依頼をどんどん受けて手っ取り早く稼ぎたいの」
「チェーちゃん…。でも決められていることみたいだから。あまり無理を言ったら駄目だよ」
サーニャが申し訳程度にそんなことをいうが、いつものことなのかバーチェは全く気にかけない。
「そんなことないわよ。ねぇ、ドルチェ兄。それに私、資料で見たわ。登録時の審査代は無料なんでしょう?」
「あー、まあな。でもあんまりやるやつがいないっていうか…審査って時間がかかるからさ。ほら、店に迷惑だろ」
アーマープレートの男|(ドルチェという名前だったらしい)は混雑している店の方をちらちらと気にしていた。
あんた、気配りのできる良い奴だな…。
そう、レベル選定やランクアップの時も審査をするのだが、この時しっかりと腕を見極めるため道場やけいこ場でじっくりと実力を見極める。
そのため、相当時間も費用もかかるのだ。
だが、こんな事もあろうかとアサギはしっかりと手間がかからないように準備をしていたのだ。
「問題ないぞ」
「本当か?
ガルフで審査すのるの2時間はかかってたぞ。
店主は店番の方はいいのか?」
「バーチェさんは魔法̪師だろ。だったら大丈夫だって。
ただバーチェさん。どんなランク、レベルになっても文句は言わない。
今回の依頼はちゃんと受ける。これだけは頼むぞ」
「…まあ、わかったわ」
一応は納得したのかバーチェは頷いた。
「良し。じゃあ、こっちだ。2階に来てくれ。
実は俺も早く試してみたかったんだ」
そういってアサギはにこっと笑い、今度は2階のとある部屋へバーチェを案内するのだった。
◆
辺りも暗くなりウィリムスも閉店時間が近づく。
バーチェを案内してから20分ほどが経っていたが、アサギはバーチェを部屋に案内すると店に戻って来客の対応をしていた。
サーニャとドルチェはバーチェを待っている間レイニーの料理を堪能していた。
特に味がカレイに似ているカーンという魚料理が郷の味に似ているらしく、えらくお気に召したようだった。
「おっ、終わったか。早かったな」
そんなところにバーチェがぐったりした感じで2階から降りてきて、怒りの表情でアサギに詰め寄った。
「何なのよ!あの機械は!私ずっと走らされたんだけど!!」
「何ってルームランナーだよ。お手製のな。ほら、記録表を渡してくれ」
アサギはこの店が始める前に苦心してルームランナーを作っていたのだ。
もちろんただのルームランナーではない。
このルームランナーは以前アサギは商工会(主にナナギとだが)ともめた事があり、その時に使われた魔法陣を応用して作った、魔法師用の魔力と体力の測定装置なのだ。
この装置は走者の魔力が動力源であり、魔力が尽きると止まってしまう。
また、速度は走者の魔力の制御力によって変わるが制御力は精神力と体力によるところが多いため、この装置では総合的な実力が判断できるようになっていた。
エコな上に魔力、体力が同時に測定できるという優れものなのだ。
作っている最中は他にやることがあるでしょうとナナギに白い目で見られたが…。
アサギはこの装置を使えば人によって選定がまちまちになってしまう事が無いため、そのうち冒険者協会に売りだそうと考えていた。そのため早く被験者が欲しかったのだ。
バーチェがしぶしぶ渡した記録表を受け取り、走行距離と時間から魔力量や体力などを割り出し、そこからランク付け、レベル付けをしてライセンス手帳に記入していく。
「ほい、お疲れさん。これがバーチェさんのランクとレベルだよ」
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【種族】
人間
【名前】
バーチェ・トーウィン
【年齢】
16
【職業】
魔法師(3級)
【ランク】
E
【レベル】
17
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「同じじゃないの!なんでEランクなのよ!レベルも低いわ!」
「おいおい、文句言わないって約束だろ。それにこれは客観的なデータから算出した結果だからな。
おまえ…じゃなくてバーチェさんは体力があんまりないみたいだからな。総合的に考えてこんなかんじになったわけだ。
あと、レベルは駆け出しにしたら相当高いかなら」
アサギはなだめるように言うがバーチェの怒りは収まらない。
「あんな機械なんかでわかるもんですか!ちゃんと審査しなさいよ!!」
「いや、まあ確かに機械で測定したが…ざっと俺が見る限りそんなもんだって。俺はこの審査結果に自身があるからな。あとはクエストをこなして頑張って上げてってくれ」
なおも抗議を続けようとするが、そこにサーニャが割って入る。
「まあまあ、チェーちゃん。アサギ様も困っているでしょう?
もう遅いからとりあえず御飯食べようよ。ここのサババすごく美味しいんだよ!村にいた時と同じ味がするの!食べてみて!」
「サーニャ!私はまだ話が終わってー」
「まあまあ。はい一口」
サーニャは手慣れた感じでバーチェにパクっとサババを食べさせる。
バーチェは怒りの表情でモグモグとやっていたが、飲み込むと憮然として少し恥ずかしそうな表情でつぶやいた。
「…美味しい」
意外なことにバーチェは食べ物に弱いらしい。
あれだけ怒っていたのに…。
年頃の子はそんなもんなのかね?っていうかこの二人仲いいな。
アサギは呆れ半分、ほほえましさ半分ででそんな2人のやりとりを眺めていた。
これから彼女たちとも長い付き合いになるのだが、アサギはなにかとこの二人には奢らされたり、面倒事に巻き込まれたりすることになるのだが、この時は微塵も思っていなかった。




