空の旅
扉の先には・・・・
ふつうの洋式トイレがあった。
特に変わった様子もない・・・・。
僕はあきれた。
「なんだよ。何かあったと思うだろう?」
僕はルイに少し怒り気味に話しかける。
しかし、ルイからの返事はない。
痺れを切らして肩を強く揺さぶる。
それでも一言も発しないルイ。
僕は急に怖くなってきた。
いつも明るいルイが静かになるときは
予想の遥か斜め上をゆく事実が待ち受けているのだ。
僕はもう一度扉を開いた。
やはり、変わった様子はない。
今度はしっかりと中に入って、くまなく調査する。
異常は見られない。
そして、僕は最後にまだ見ていないトイレのふたに手をかけた。
そこには・・・・。
「なんだよこれ・・・。」
そこには、ばらばら解体され、おり曲げられえぐちゃぐちゃになった人間の骨と、
キャビンアテンダントの制服、
そして、目を見開いき、光を失った変わり果てた姿の女の顔があった。
たまっている少量の水は赤く染まっていた。
僕はその女と目があったような気がして、思わずその場で吐いた。
その姿を見てルイが僕の背中をさする。
「この仕事はこれからもこんなのをたくさんみてくんだよ・・・。
この程度で吐くようじゃやめたほうがいい。」
ルイは無表情のまま僕に言葉を発した。
僕は、吐いたせいか、無意識的に涙を流していた。
「・・・・大丈夫だ・・・。」
僕には弟がいる。
もし、ここで任務を遂行しなければあいつに何をされるかわからない。
たった一人の家族を死なせるわけにはいかない。
というよりも、ただ単に一人になりたくないのだ・・・。
壁に手をつきながら立ち上がり、口元を手で拭う。
「もう、犯人は動き出したようだな。」
「ああ、」
ルイは原形をとどめていない彼女に手を合わせてから、立ち上がった。
「快適な空の旅にはならないな・・・」
「そうだな。」
僕もルイに続いて手を合わせる。
「ユイナには頼めないか・・・。」
「え?」
「これをこのままにいしてたら、乗客に発見されるのは時間の問題だ。
だから、その前に『今』に彼女を移すんだ。」
「・・・そんなことできるのか・・・。」
僕は、あの地味な少女がそんな力を秘めているとは思えなかった。
「あいつは、組織の中でもずば抜けてる。あいつは必ず狙った場所に飛ばすことができるんだよ。」
それが、どんなにすごいのかは、僕にはわからなかった。
「でも、さすがにこれは見せられないね・・・。」
飛ばすということはそのものに深くかかわることになるそう。
「だよな・・・・。」
ああ見えても一応女子だ。
なんだかんだ言ってルイは紳士的なんだよな・・・。
「まあ、正確性には欠けるけど、とりあえずタケルに頼むか。」
タケルとは僕らの同期で、ユイナほどの力ではないが能力が少しあった。
「ああ、あいつなら大丈夫だろ。」
僕もそいつと何度か話したことがあったので、ルイの提案の同意した。
ルイは、携帯でどこかに問い合わせると、
一瞬で便器の中がひかり、中のものが消えた。
「じゃあ、俺たちは犯人探しと行きますか。」
ルイは腕まくりをして乗客のいる場所に歩いて行った。
そして、僕は立ち入り禁止の乗務員室に向かった。