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僕らは高卒で下僕(イヌ)となった  作者: 星空 かけら
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飼い主とペット

校門を出て数分歩いたところのトンネルで足を止める。


「連れてきました。」


ルイは誰もいない真っ暗闇のトンネルに向かって膝をついた。


僕は訳が分からず彼に聞こうとしゃがもうとした時、


トンネルの奥にあるわずかな光に気付いた。


「ついてきて♪」そう言われ黙って後に続く。


しかし、工事現場で工事をする四十代の男性が僕たちを止めた。


「ここは、工事中だから通れないよ。この先行きたいなら別の道つかいな。」


親切そうに別の道へのルートを教えてくれる。


「おっさん、そこどいて。」


そんな愛想のいい彼をまったく気にせずルイはいつもの口調とは裏腹に毒を吐く。


「だから、君ね。ここ工事中なんだよ、怪我するからこっちの道通って。」


工事のおじさんは少し困ったように眉をハの字にしてルイに言った。


ルイはため息をついて


「・・・どいてよ・・・。」


とうっざったそうに言う。


「危ないからダメ」


おじさんはその一点張りだ両者どっちも引かない様子に、普段揉め事に真極力首を突っ込まない僕でさえ止めに入ろうとした。


「ダメ?」


ルイがこれで最後というように頼んだ。

「ダメだ。」


おじさんはなおもここを通そうとはしなかった。


「じゃあ、しょうがないね♪」


そういってルイは来た道を帰ろうとした。


僕もやっと終わったっと心の中でほっとしつつルイの後を追う。


おじさんもやっとかといったような感じ仕事に戻ろうと背を向けた。


その瞬間ルイは勢いよく振り返り黒い物体を持ち出した。


一瞬バンという音が聞こえたが思考回路がうまく回らずただ立ち尽くす。


数秒したうち、振り返ると血を流したおじさんが倒れていた。


手足が震えているのが自分でもわかった。


助けを求めるようにルイの方を見ると、黒い物体から流れる煙を息で消そうとしていた。ただ茫然とする僕。


目が合うといつもの笑顔で


「なに泣いてるの?」


そういてケラケラ笑い出した。


そして拳銃をしまいおじさんの方へ寄る。


「君ヘルメットかぶってたから頭ねらえなかったじゃん!僕心臓打つの嫌いなんだよね。なかなか死なないからさ~。」


そう言って冷たくなりつつある体を右足で蹴った。


「ここにいたら発見されるのはもうちょっと後だ。早く見つけてもらえるといいね。」


そういって興味ないといった感じで横を通り過ぎる。


「コウ、そんなとこで突っ立ってないでおいでよ。」


手招きするルイに恐怖心で逆らうことができず、おじさんの姿をできるだけ見ないようにしながら横を通る。


真っ暗な道を突き進むルイに僕は問いかけた。


「なんで・・・。」


ルイは僕の声に振り返った。


「なんでって?」


いつもの口調にもかかわらず僕はルイに恐怖心を覚えた。


「な・・んで・・お前がそん・・・なの持っ・・てん・・だよ・・・。」


できるだけ今の気持ちを悟られないように平常心を装うとしたが言葉がうまく喉からでてこなかった。


「コウもこうゆうの怖いんだ~。なんか意外だよね昨日の笑顔もそうだし、けっこう心は純粋だったりして♪」


聞いておきながら彼の言葉が頭に入ってこない。


僕は動揺して恐怖のあまり涙が出だのは初めてだった。


「別にコウを殺そうとかじゃないから安心して♪ただあの人は何回もチャンスをあげたのにそのチャンスを自分で無駄にしたんだよ?だから殺したの。しょーがないじゃん♪」


ルイは当然というように僕に言ってきた。


「・・しょう・・が・・ない・・・。」


最後の言葉だけ僕の中に入り込んでた。


「そ、しょうがないの!」


ルイはまた前に向きなおして歩き出した。


「しょうがないってなんだよ・・・。」


「え?」


ルイは僕の小声でささやいたことに気付いてもう一度振り返ろうとした。


それと同時にルイの襟をつかみ自分の方に引き寄せた。


「お前、人を殺したんだぞ、しかも足で蹴るなんて・・。お前それでも人間かよ。」


僕はいつもより声を張り上げて言った。


そんな僕の様子を見下した後、ルイは僕の腕を簡単に振り払い、今度は僕の襟を左でつかみながら眉間に拳銃を押しつけた。




「仕方ないだろ。俺の飼い主は時間に正確なんだよ。遅れればお前も俺も殺される。それに、さっきの男は上からの命令で殺した。俺の意志じゃない。お前が、そんなに正義感が強いなら俺についてこないで救急車とか警察呼ぶべきだんじゃねえの?できもしねえく正義感振りかざしてんじゃねえよ。」




いつものルイの口調ではない。


苦しい・・。


こいつこんなに力強かったんだな・・・。


そう思いながら僕は目の前に向けられた銃にいやな汗をかいた。


「冗談だよ。大事な友達撃つわけないだろ。もうちょっと待ってて。すぐ着くから♪」


彼はにこっと笑い僕から離れた。


そして銃をしまい歩み始める。


そして、少ししたところにある大きな施設の中に入っていった。


僕も中へ入る。


中には同じ制服を着た同世代位の少年たちが書類の整理などをしていた。


「こっちだよ。」


ルイに呼ばれ馬鹿でかいドアの前に立たされる。


突然開かれるドア。


そこには車いすに座る人がいた。


顔は隠されていてわからなかった。


「ルイ、お疲れ様。下がっていい。」


その声にルイは黙って従う。


ルイが外に出て僕とその人の二人っきりになる。


「あなたのことはルイから聞いている。すごく静かなお友達だって。」


僕は返事をせず、その人の声に耳を傾ける。


「あなたの様な冷静な子がいまほしかったの。」


僕から言葉が発せられないのは百も承知っといったように何も気にする様子はなく続ける。


「まだ、自己紹介もしていかったね。私はここの組織の責任者です。あなたをスカウトします。私たちと一緒に働かない?」


そう言って手を差し出した。


僕はその手を躊躇なく払った。


「・・・・お断りします。」


「なぜ?労働条件もそれほど悪くないわよ。それに、あなたならきっと向いているの思うのだけれど。」


「僕は、ここへ来るまでにあなたの部下が人を躊躇なく殺す場面をみました。ここが秘密の組織ならば誰にも言いません。他をあたってください。」


そう言って部屋を出ようとした。


「そう・・・。残念ね・・・。じゃあ、弟さんはお兄ちゃんを憎みながら死んでいくのね・・。かわいそうに・・。」


「・・・どうゆうことだ。」


弟のことをなぜこいつが知っているんだ。


それに死ぬ?何を言っているんだ・・・。


「・・・・これ、見て・・・。あなたが留守の間にあなたのご両親、亡くなったわよ。」


そこには腹部から血を流した両親が覆いかぶさるようになくなっていた。


「あなたに選択肢はないわ、もし、私たちにしたがわないのであれば・・・。」


そうして、奴は何らかのボタンを取り出した。


「これ、押して、あなたの弟さんの部屋にある爆弾すべてが爆発することになるけど?」


画面が親から弟の部屋の画面になる。


「あと少しで弟さんも帰ってくる頃かしら?ねえ?どうするの?」


僕は唇をかみしめる。


「安心して。あなたたちの両親は私たちが手配してあげる。弟さんに不自由しさせたくないでしょ。」


僕は黙って静かに怒りを覚えていた

「10以内に決めてくださるかしら?10・・・・・9・・・・・8・・・・・7・・・・・」


「俺は人殺しなんかできない。」


「人聞きの悪いこと言わないでよ。私たちは市民の見方よ。・・・・6・・・・・・5・・・・」


「できない・・・・。」


「弟さん、お兄ちゃんのこと死んでもうらみつづけるわね。・・・・4・・・・・3・・・・」


「・・・・・2・・・・・・・1・・・・・」


「・・・・0・・・・」


「わかった、わかったから弟のこと助けてくれよ・・・・。」


「いいわよ、約束は守るわ。」





そういって、奴は手元にあるボタンを強くおした。






その途端バアンというおとが画面越しから聞こえてくる。









「・・・・お、お、まえ・・・・。」


僕は崩れ落ちるように膝を地に着けた。



「話が違うじゃないか・・・。助けってくれるって・・・。いいたよな・・・。」


奴は僕の方を見て笑う。


「敵を欺くにはまず見方から。決っして人を信じてはいけないわ。」


「タケル・・・・タケル・・・・・。」


僕は弱弱しく弟の名前を呼ぶ。


「もう、そんなんじゃこれから真っ先に殺されちゃうわよ。」


「タケル・・・・。」


僕は頭が真っ白になった。









「もう、冗談よ。生きてるわよ、タケルちゃん。」






「・・・・え・・・。」




僕は自分でも驚くほどに間抜けな声が出る。


画面を見ると、そこにはさっきまで今で血を流していたはずの両親がタケルに向かってクラッカーを鳴らしていた。


「あなたの弟さん、今日お誕生日なんですってね。だからお祝いしてあげなきゃな~って。」


「・・・・・・・。なんで・・・死んだんじゃ・・・。」


「あ~アレ?。あれは私たちが送り出したここの社員よ。変装潜入の技術は一流の二人だからきっと、弟さんも気が付かないわ。」







「・・・。あいつ、たぶん気づいてる・・・。」


「え?」


「あいつは昔から場の空気に敏感なんだよ・・・・・。」


「そう。優秀な弟さんね。大きくなったらスカウトしちゃおうかしら。」



「・・・・やめろ・・・」

「もう冗談よ!あなたが二人分働いてくれるならそれで十分よ。」



「・・・・・・」

僕は返事をせず首だけコクンとうなずいた。


「でも、上司にその態度じゃだめね。」


僕は再び奴の方を見る。


「今日からあなたは私のイヌよ。飼い主にはむかうわけないわよね?」


「・・・・わかりました・・・・。」


「うん、いい子。」


「じゃあ、さがっていいわよ」


「失礼します。」


僕は飼い主に背を向け大きな扉を開いた。



季節は秋から冬へとなっていた。



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