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吸血鬼と国王  作者: 丘/丘野 優
終章
28/31

第28話 再会と決闘と

 俺とクーは順調に聖国へ侵攻した。

 結局、聖国は今までの勢いが嘘のように追い詰められていった。教皇が、出てこない。なぜなのか不思議だったが、クーはその理由が分かっているようで心配するなと言っていた。

 残すは聖都のみである。あそこには確実に教皇と、あの聖人がいるはずだ。


「なぁ、クー」

「なんだ」

「勝てると思うか?」

「なんでそんなに弱腰なんだ。こういうときはな、勝つぞ、と言うべきだろう」

「……勝つぞ」

「今さら遅い」


 聖都には武装した僧兵と、狂信的な目をした信者たちがひしめき合っていて、襲いかかって来る。しかしそんなものは問題ではない。まず必要なのは、教皇を潰すことだった。

 俺とクーは連れてきた将軍たちに指揮を任せ、聖都中心部に位置する大聖堂に向かった。


 *


「中はこんな風になってたんだな、クー」

「あのときは空から忍び込んだだけだったからな。フリルだらけの部屋を見たことしか覚えてない」

「今もあの部屋はフリルだらけなんだろうな」

「あの趣味は正直どうかと思う」


 軽口を飛ばし合いながら、警戒しつつ中を探索する。僧兵たちは皆、街に出払っているようで大聖堂の中はがらんどうだ。たまに物陰から飛びかかって来る者もいないではないが、クーの契約の力で殆どがなんとかなった。どうやら身体能力の他に第六感的なものも強化されているらしく、ほとんど未来予知に近いことができるようになっていた。魔人の力はかくもおそろしいものなのかと、契約を更改してから感心しきりである。

 そうして、大聖堂の中心部に辿り着く。そこは壁中が異様な文様に彫刻されている不可解な部屋でその中心部には澄み切った水を湛える泉がある。その前には数段の階段があり、そこに少女が一人、腰かけていた。


「あら、来たのね。ミスト国王と……魔人」


 歌うように言う少女。聖人はどこにいるのか、と周りを見渡すが、どこにも見当たらない。


「あら? レオを探しているの? ふふふ。そう、じゃあ、レオ。姿を見せておあげなさい」


 少女がそう言うと同時に、背後から強烈なプレッシャーを感じた。

 振り返ると、あのときの聖人がそこで前を変わらない姿で笑っている。


「お久しぶりですね、お二人とも。仕方のないことです。あのとき申し上げたではないですか。私の契約者に近づく者は、排除しなければならないのだと」


 こつり、こつり、と一歩一歩近づく男に、俺とクーは恐れを感じた。段違い、の存在であると言わざるを得ない。前王は、こんなものと戦ったのか。


「お帰りは、あちらです」


 男はそう言って、前と同じように帰り道を示した。


「おや? 不思議そうですね。こんなことは言いたくないのですが、私も寄る年波には勝てませんで。ついこの間、若者と戦って少し疲れているのですよ。しばらくは、休憩が必要でね。ですから、見逃して上げますよ、いまならね」


 余裕ぶって、男はそう言った。

 けれど見ると、息が荒い。冷静に観察してみれば、男から感じるプレッシャーは以前とは異なり、大幅に減少している。今なら、勝てるのではないか。そう思わせるほどに。


「クー、すまないな」

「何がだ」

「こんなところまで付き合ってもらってさ」

「何を今さら」

「今さらついでに、これから俺がやることにも付き合ってほしいんだけど」

「それは、なんだ。言ってみろ」

「あいつを、」


――ぶっ潰す。


 言うが早いか、俺は腰の剣を抜いて聖人レオに切りかかる。剣にはクーの力が宿っており、大量の人を切り倒した今は魔剣と呼ぶべき位階に至っている。

 剣は正確に襲いかかるが、レオはそれをしっかり目でとらえて掴んだ。


「こんなものですか? 魔人の力を得ても」

「ふん。まだまだだ」


 余裕の表情で答える俺にレオは手刀で襲いかかる。その手は淡い光に包まれており、魔力的なもので強化されているのが分かる。

 とっさに剣で受けようとするが、直前でこれを受けてはまずいと体を思ひ切り捻って避けた。

 手刀は俺の後ろにあった柱に向かい、そのまま柔らかいものに触れたかのように何の抵抗も無く切れていく。

 もし剣にあたっていたら、折れていたかもしれない。やはり明らかに格の違う力だった。


「良く避けましたね」

「伊達に修羅場は乗り越えていない」

「ふふ、あなたはそうでも、向こうはどうでしょうね?」


 レオがさりげなく目をやった方向を見ると、クーと教皇が向かい合わせに立っていた。


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