第24話 反省と気晴らしと
戻ってきて、色々考えた。
聖人。教皇の強さの理由が明らかになった。
魔人領の村長から聞いていた。召喚が完全に成功した場合の異世界人を、聖人と呼ぶ。聖人は魔人とは異なり、世界から弾かれずに存在でき、また力も魔人より強大だと。召喚者と契約するのが通常だと言うことだから、きっとあの聖人は教皇により呼ばれて契約したのだろう。
あれを倒すことが出来るのか。それが問題だった。
ミスト王国は聖国と交戦中である以上、いずれあの化物と戦う羽目になる。そのとき対抗できるのは、私だけだ。しかしその私よりあの聖人のほうが強いのである。一体どうしたらいいのだろう。八方ふさがりで、どうしようもなかった。
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そんなことを私が悩んでいるとは露知らず、第一王子は出かけていた間にたまった仕事を片付け始めた。まずは国王直轄領の視察をする必要があるらしく、慌ただしく準備して出かけていく。
どうやら私への労いの気持ちもあるようで、その気持ちはありがたく受け取っておく。確かに、いろいろ考え過ぎて疲れていたのかもしれない。少しは休むことも必要だろう。
しかしそんな気分もそうそうに叩きつぶされてしまった。
てっきり第一王子と私、それに数人の従者と共に行くのだと思っていたのに、何か余計なものまでくっついてきたのだ。
その余計なものの名は、ミハ嬢と言った。どうやら名家の令嬢らしく、可憐で美しくしかも多才で親切かつ優しくよく気が利き更には武術の心得まであるというある意味では私よりも化物じみた女だった。
こんな女が第一王子に一日中、というか旅中くっついているわけである。これで落ちない奴は男ではないと思った。私の色々な淡い気持ちはこうやって消滅していくのだなと思った。
けれど、私は嘗めていた。よくよく考えれば第一王子に色目を使った女は数知れず、しかし彼は一切落ちなかったのである。
つまりそれは彼がかなりの鈍感であると言う事実を示していた。
実際、ミハ嬢が上目づかいや胸チラと言った高度なテクニックを極めて自然に使いこなし、ボディタッチ等も行いかつ自分の好意をさりげなく示しながら今後の交際についても匂わせつつデートの約束までとりつけるという離れ業で観客を魅了し驚愕の渦に巻き込んでいるにもかかわらず、まさにけんもほろろ、という雉もびっくりの雉ぶりを呈しているのである。本当に、鈍感もここまでくると救えない。
さすがにミハ嬢が気の毒になってきた私はさりげなく(もちろんミハ嬢には遠く及ばないさりげなさぶりである)、ミハ嬢は第一王子に好意を持っている旨、匂わせてみたのだが、第一王子はむしろ命令で無理して来てくれたのだろう好きな人もいるだろうに気の毒に申し訳ないからもう誘わないようにしないとなどと言ったことを考えていることが明らかになった。いくらなんでもこれはない。一応、そんなことにならないように止めておいた。ミハ嬢に私は感謝されてもいいのではないかと心から思う。




