第23話 戦争と教皇と
ある時、聖国が戦争に参戦してきた。聖国と言う国は教会権力が主導する宗教国家で、その首長は教皇であると言うことである。
問題は、その教皇の力だった。まるで魔人のごとくおそるべき力をもって、単騎で千の軍勢を滅ぼす。そんな教皇に、ミスト王国は次第に押され始めていた。
そんなある日のこと、第一王子が、教皇は魔人なのかと聞いてきた。私は違うと答えた。そんなことあるはずがないからである。魔人は魔人領で集落を作って暮らしている。国を作っても、意味がないからだ。契約者が亡くなれば、その時点でその国は滅んでしまう。そしてその後はただ見ていることしか出来ない。それが魔人である。魔人が国を作るはずがない。
だが、少し引っかかったのも確かだ。教会権力が主導する国。私がこちらに異世界から呼ばれたのは、神殿のような場所だった。そう言った技術を保有する集団こそが教会ならば、もしかして召喚を成功させたのではないか。そして私のような失敗作ではなく、正しい異世界人を味方につけたのではないか。つまり教皇は、異世界人なのではないか、ということである。
私は第一王子に言った。
「見に行くか?」
と。それは彼を慮って出てきた一言ではなく、ただ私が見たかっただけだ。
成功した異世界召喚の成果と言うものを、私は見たかったのだ。
*
聖国は非常に警備の厳しい窮屈な国だった。けれど聖都の中心にある大聖堂の荘厳さと言ったら、こんな建物はどんな場所でも見たことがないと言い切れる程の素晴らしさだ。これこそが、新興国の勢いと言うものかと思った。
肝心の、教皇と会う方法だが、単純に寝所に忍び込む、という方法を取ることにした。魔法を使えば簡単に出来る事だからである。魔法はここ数百年の年月で完全に衰退してしまっており、使えるものは指で数えられる程度しか残っていない。魔人領に行けば皆、使えるかもしれないが、少なくとも人間の使い手はここ百年は見ていない。魔女狩りが答えたのだろう。殆どの魔導書が焚書され、今や知識を伝える者すらいない状況なのだ。したがって、魔法技術はその存在がそもそも信じられていないレベルにまで落ちている。それに対する警戒など、するはずがないのである。当然のごとく、大聖堂の尖塔の窓は魔法による解錠が可能であると考えて間違いない。
夜になって、第一王子と共に忍び込んだ。案の定、大聖堂の西の尖塔の窓は魔法で簡単に開けられた。第一王子は元から開いていたものと勘違いしているようだったが、特に解説する必要性も感じないので黙っておく。
中に入るとフリルだらけの部屋が目に付いた。いくらなんでもちかちかし過ぎだろうとおもったものの、こういう趣味の女と言うのはいるものである。私はできるだけ気にしないで第一王子と共に教皇の眠るベッドに近づいた。
すると、後ろから呼び止められた。
驚くべきことに、そこにいたのは私と同じ存在である、聖人だった。
つまりは、召喚の成功者である。
私と異なりこの世界への顕現も含めて完全であるらしい彼は、私より強大な力を持っているようで、このまま教皇に近付くと消滅させられる危険すら感じた。
しかしどうやら今ここで私たちを消すつもりはないようである。彼は私たちは見逃した。




