第21話 受容と励ましと
血を吸うだけ吸って、満足し、冷静な頭に戻った後、しまったと思った。
なぜならあれだけ仲良くして築けたと思った信頼関係を、これで完全に失ってしまったと思ったからだ。
いたたまれなくなった私は部屋を出て、そのまま第一王子に顔を合わせないように常に国王の後ろに目立たないように控えるようになった。
もう合わせる顔がない。
化物だと思われてしまった。
いや、実際化物なんだけど。
自嘲気味にそう思いながら、自分は悲しくなんてないのだと言い聞かせてみた。
あまり効果はなく、日に日に寂しい気持ちが強くなっていった。
なんで我慢できなかったのだろう。あんなことはカルスだけのものと思っていたのに。
いじけながら毎日を過ごしていると、ある日、彼が私を追ってきた。
私は聞いた。私が怖くないのかと。化物がおそろしくないのかと。
しかし彼は意外にも、私のことを受け入れてくれた。
あれだけ血を飲まれて別にいいなどと言いきってしまう彼は大物なのかもしれないと思った。
そして、受け入れてもらえたことに私はほっとして、それからは今まで以上に彼と仲良くしようと思った。ただ私の口調はあまり可愛らしくないから、難しいかもなと心のどこかで考えていた。
*
しばらくして、第一王子が暗殺されかかった。暗殺自体は日常茶飯事だから、それは別にいい。問題だったのは、その主犯が彼と非常に仲のいい友人だったと言うことだ。
彼はまだ若い。友人に裏切られるなど、たとえ王族として他人を疑うべく教育されていたとしても、きつい話だろう。
だから彼はきっちり落ち込んだ。分かりやすい位に。
だから言ってやった。
「落ち込むなよ」
……もう少し良い励ましの言葉があったのではないか? と思わないでもないが私にはこれが限界だった。あまりにも低い自分の対人スキルに落ち込む。
しかし私が落ち込む訳にはいかないのである。何せ今もっともどんよりとした気分に陥っているのは第一王子の方なのだから。
彼は何を思ったのか、言った。
「僕は何を信じたらいいんだろうね」
と。そんな言葉も出てくるだろう。親友に裏切られたのだから。けれど、それが理由で私が信じられなくなってしまうのは嫌だった。私は、何があっても彼を裏切るつもりはなかった。いつまでも、どこまでいっても、彼の味方でいたい。
だから言った。
「私を信じればいい」
と。ただその後に付け加えた言葉が余計だった。よりにもよって契約のせいにした。契約は別に第一王子としているわけではなくカルスとの契約が残っているだけである。だからこれは私本心の気持ちであって契約なんか関係ないのだ!と言えればよかったのだが私にそんなことを言える度胸は無い。せいぜいが、負け惜しみ気味にそんなことを言うだけの事だ。
けれど、この一言は意外に彼の心に突き刺さったらしく、最後にはふんわりと笑ってくれた。非常にいい仕事をしたと思う。私。




