第14話 召喚と状況把握と
目覚めると目の前には真っ白いローブに身を包んだ壮年の男たち十数人と、豪奢な服に身を包んだ老年の男、そして煌びやかなドレスと顔が隠れるヴェールを纏った少女とがいた。
「ここは……」
私がそう呟くと、周りにいた人々は口々に何かを言った。
どうやらそれは私には理解できない言葉のようで、非常に困ったことになっていることが察せられる。
ともかく、状況を確認したかったが、そのときの私にはいかんともしがたかった。
ただ周りの人々はたいへん慌てているようで、焦るようにいろいろな言葉で私に話しかけたりしている。
しかし私には何を言っているのか良く分からない。首を傾げるだけが精いっぱいだった。
『なぜだ!召喚は成ったのだろう!』
『陛下。それはこの少女が存在していることからも明らかです。しかし言葉が通じておりません。となるとこれは……非常に由々しき事態です。早々に契約を為さなければ消失してしまいます』
『なんだと!?せっかくあれだけの費用を投入したと言うのに……なぜ言葉が』
『それは分かりませんが……』
人々が色々話しているが、私は本当に全くの置いてけぼりだった。一体どうすればいいのだろう。ただ、綺麗なドレスとヴェールを纏った少女だけがどうも私のことを気遣ってくれているようで、口元しか見えないが、そこを見ると優しげな笑顔を向けてくれていることが分かる。良く見ると肌は青白く、あまり健康とは言えない体なのかもしれない。一生懸命私を気遣ってくれているが、彼女の息は荒い。
『あなたはどこから来たの? 言葉、わからないかしら? わたしはエルと言うの。この国の王女なの』
今にして思い返せばそんなことを言っていたと言うことがわかる。ただ当時の私に理解できることではなかった。せいぜい、少女が自分自身を指さして言っている“エル”という単語がその少女の名前なのだろう、というくらい。私も礼儀知らずではないので、一応自分を指さして名乗ったりしてみたのだが、通じているのかは分からない。
そんな風に少女以外の人々にしばらく放っておかれると、驚くべきことが起きた。
すーっと私の体が透けていくのだ。まるで幽霊になるかのようなその光景に、私は驚愕した。
「ちょっと!これどういうこと!なんで!わたし消えてしまうの!?」
そんなことを喚いた気がする。若かった。慌てるのも仕方がないことだと言える。
たださんざん喚き散らしても、自体は一向に良くならない。
人々の叫び声やその顔に張り付いた驚愕の顔は一向によくならないまま、私は徐々に薄くなっていく。
このまま待てば私はこの世界から消えてなくなってしまうのだろう。しかし悲しいかな。事態を避ける方法が私には全く分からない。
残念だが、この世とおさらばしなければいけないときが来たようだった。
いまこそわかれめ、といつか歌ったが、こういうときのことをいうのだろう。
いざさらば。
そう思った瞬間、私の体は完全に見えなくなった、らしい。
人々は私を探してきょろきょろと周りを探していた。
けれど、“らしい”というのは、私にはまだ私の姿が見えているからだ。
透けもなく、普通に見えている。にもかかわらず、私の周りにいる人々には見えていない。そう言う状況のようだ。
困った。このまま出て言ってもばれないだろうか。
というかこのままここにいても見つけてもらえる公算は低いだろう。ならば食べ物でも探しに行くのが賢明ではないか。
そう思った私はさっさとその場所を後にして、外に出た。
外から今までいた建物を見るとだいぶ巨大な神殿のような形をしていた。
なぜ神殿に私が現れたのかはなぞだが、なにか宗教的な意味があったのかもしれない。
しかしもう私には関係のない話だ。私はそこを後にして歩き出した。




