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初恋の変換

帰り道で遠藤に会った。遠藤は俺と同じ団地に住んでいる。

広樹と雅也、俺と遠藤。小学校から今までずっと一緒だった。

遠藤加奈子。俺の初恋の相手。広樹と雅也の初恋の相手。二重ではっきりした目。艶やかな唇。白というより純白の肌。長く、繊細な髪。ガキの頃から遠藤は妖艶だった。

「健」

遠藤が声をかけてくる。俺は聞こえないふりをした。

「健ってば」

遠藤に肩を掴まれた。振り返った。

「シカトはないんじゃない?」

商店街の一画。遠藤は買い物袋を下げていた。今日の夕食。父の食事を遠藤が作っていた。遠藤の家には母がいない。中学三年の時、殺された。犯人は捕まった。真犯人は捕まらなかった。

真犯人ー広樹と雅也。俺以外にそれを知ってる奴はいない。

「気付かなかったんだ」

「いつから平気で嘘をつける様になったんだろうねぇ、健君は」

「考え事をしてたんだよ」

「何?恋でも始めちゃったわけ?」

「お前には関係ないよ」

関係あった。俺は遠藤を殺す。次の日曜。今日は木曜。三日後だった。

「つれない事言わないで、おねぇさんに相談しなさい」

遠藤が買い物袋を俺にぶつけながら言った。携帯が鳴った。ディスプレイの表示ー広樹。

遠藤がそれに気が付いた。顔に不穏が宿る。俺は通話ボタンを押した。

「はい」

「健、遠藤を殺すのは日曜だ。今勝手に殺る気じゃないよな?」

愉快そうな広樹の声。背後に視線を感じる。振り返った。遠藤の死角、商店街の出口の角に、広樹と雅也を見つけた。俺を尾けていた。

「解ってるよ」

「だったらいいが、変な事企んでると、お前が先に痛い目見る事になる。友達を痛い目に合わせたくないんだ」

雅也の笑い声が聞こえた。

「解ってる。これは偶然なんだ」

「ならいい。また明日な」

通話が絶たれた。隣で遠藤が心配そうな顔をしていた。俺は歩いた。家の方向ー広樹と雅也の反対方向へ。

「健、大丈夫?まだ、広樹と雅也…」

俺は遠藤を睨んだ。遠藤は黙った。胃がむかむかした。

二週間前、広樹が遠藤に告白したーふられた。

一週間前、雅也が遠藤に告白したーふられた。

遠藤が二人をふった理由。

遠藤は俺が好きだった。俺の初恋ー憎しみに変わった。遠藤が二人をふらなければ、どちらかと付き合っていれば、俺の事を好きだと二人に言わなければー。

俺が遠藤を殺させられる理由も無かった。

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