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追跡者

森は、さきほどまでの激戦が嘘のように静まり返っていた。


エリスはすぐに動いた。


「まだ息があります……こちらを!」


倒れている兵士のそばに膝をつき、両手を当てる。


淡い光が広がる。


裂けた鎧の隙間から見える傷が、ゆっくりと塞がっていく。


「……助かる、のか」


ガルドが低く問う。


「深いですが、間に合います」


優しい声。


だがその瞳の奥には、消えない悲しみがあった。


間に合わなかった者もいる。


レオンは立ったまま、森の奥を見つめていた。


黒い外套が消えた方向。


拳が自然と握られる。


ガルドが、倒れていた兵士の一人を抱き起こす。


「おい、しっかりしろ」


兵士はかすれた声で言った。


「……黒い、男……止めろって……言って……」


それ以上は続かない。


気を失う。


レオンが振り向く。


「ガルド、あいつは何者なんだ」


ガルドは少しだけ黙った。


それから、低く言う。


「“追跡者”アーク」


その名を、重く落とす。


「討伐隊の間じゃ有名だ。ダンジョン攻略を妨害する男。何度も現れては隊を壊滅させてる」


レオンの眉が動く。


「壊滅……」


「ああ。生き残りもいるがな。だが核までは辿り着けなくなる」


ガルドは血のついた地面を見る。


「腕は一流どころじゃねぇ。元は騎士だったって噂もある。王国の剣術に似てる」


レオンは思い返す。


無駄のない構え。

最小限の動き。

正確な踏み込み。


確かに洗練されていた。


「目的は?」


「分からねぇ」


ガルドは首を振る。


「ただ一つ言ってるらしい。“壊すな”ってな」


レオンの視線が鋭くなる。


「意味が分からない」


「だから厄介なんだ」


エリスが立ち上がる。


「応急処置は終わりました。動ける人は王都へ戻せます」


彼女の額には汗が滲んでいる。


それでも微笑もうとしている。


レオンはその様子を見て、少しだけ力を抜いた。


「ありがとう、エリス」


彼女は小さく頷く。


森を風が抜ける。


どこか、不自然な静けさ。


鳥の声が、少ない。


レオンは森の奥を見る。


「あいつはまた来る」


確信に近い感覚。


ガルドが肩を回す。


「だろうな。だが次は俺たちも本気だ」


エリスが静かに言う。


「でも……どうして止めようとするんでしょう」


誰も答えられない。


レオンは剣を握る。


「理由が何であれ、俺たちは進む」


その声は揺らがない。


倒れている兵士たち。


守れなかった命。


守れた命。


すべてを背負い、前へ。


森の奥――


黒き核が、待っている。

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