共鳴
水が爆ぜる。
アークの踏み込みは速い。
黒い刃が一直線にレオンの喉元を狙う。
――重い。
受けた瞬間、腕が軋む。
だが押し返す。
横からガルドが踏み込む。
「はぁっ!!」
大剣が水面ごと斬り裂く。
アークは回転し、最小限で躱す。
その背後に――
「拘束します」
フィルの魔法陣が展開。
水が鎖のように絡みつく。
動きが止まる一瞬。
レオンが踏み込む。
「終わらせる!」
剣が振り下ろされる。
アークは強引に鎖を引きちぎる。
だが遅い。
刃が肩を裂く。
血が飛ぶ。
アークの体が後退する。
膝をつきかける。
三人の連携。
昨日よりも精度が高い。
呼吸が合っている。
ガルドが低く笑う。
「押してるぞ!」
フィルが冷静に言う。
「出力低下を確認」
レオンが距離を詰める。
「どけ!」
アークは立ち上がる。
その目が変わる。
灰色だった瞳が、深い黒へと沈む。
外套の内側。
刻まれた紋様が光る。
空気が重くなる。
「……やはり」
フィルが呟く。
アークが地面に刃を突き立てる。
衝撃。
水面が凍りついたように静止する。
音が消える。
一瞬だけ、世界が遅れる。
レオンの動きが鈍る。
「また……あの力か」
ガルドが歯を食いしばる。
アークの声。
「壊せば、進む」
低く、かすれる。
「止めなければ……」
言葉は最後まで続かない。
レオンが強引に踏み込む。
動きが鈍っても、止まらない。
剣が火花を散らす。
ガルドが横から叩き込む。
フィルが強制干渉で空間の停滞を崩す。
「今です!」
三方向からの同時攻撃。
衝撃。
アークの体が大きく吹き飛ぶ。
柱を砕き、地面に転がる。
血が床に広がる。
静止が解ける。
音が戻る。
荒い息。
レオンは剣を向ける。
「終わりだ」
アークは倒れたまま、核を見る。
その視線。
焦り。
初めて、感情が滲む。
その瞬間。
――ドクン。
広間が震える。
全員が振り向く。
中央の核。
青だった光が、濃くなる。
鼓動が強まる。
「……共鳴しています」
フィルの声がわずかに揺れる。
アークが、血を吐きながら呟く。
「やめろ……」
核が脈打つ。
海の水位がわずかに変わる。
天井から水滴が落ちる。
ドクン。
ドクン。
鼓動が速くなる。
レオンは核を見る。
「壊せば終わる」
迷いはない。
だがエリスが、ほんの僅かに息を止める。
波の音が、聞こえない。
広間の外。
海が、静かすぎる。
アークが最後に言う。
「今なら……戻せる」
誰も意味を理解しない。
核の光が、白へと変わり始める。
ドクン。
その鼓動が、全員の胸と重なった。




