再突入
夜明け前。
海はまだ青黒く、空だけがわずかに白み始めていた。
「行くぞ」
レオンの一言で、四人は立ち上がる。
ガルドが大剣を担ぎ直す。
フィルは静かに魔力を整える。
エリスは小さく息を吸い、頷いた。
再突入。
昨日よりも静かな宮殿。
水は澄み、回廊はひび割れたまま。
だが空気が違う。
重い。
核へと続く最深部へ。
誰も言葉を発さない。
足音と、水の反響だけが響く。
やがて。
広間に辿り着く。
中央。
封じられた核が、青く脈打っている。
昨日よりも弱い。
だが確かに生きている。
フィルが短く言う。
「封印、維持されています」
レオンが前に出る。
剣を握る。
壊せば終わる。
その時――
「やめろ」
低い声。
広間の奥、崩れた柱の陰。
黒い外套の男が立っていた。
アーク。
無言でこちらを見ている。
以前よりも近い距離。
その姿がはっきり見える。
長い黒髪は濡れたように重く、片目にかかっている。
露出した片目は淡く光る灰色。
感情が読み取れない。
外套の下から覗く腕には、黒い紋様が刻まれている。
人のものではない、核と似た光。
傷もある。
昨日の戦いの痕。
レオンの一撃が確かに残っていた。
「またお前か」
ガルドが低く唸る。
アークは兵士たちを見ない。
レオンだけを見る。
「壊せば……進む」
それだけ。
短い言葉。
フィルが目を細める。
「何が進むのですか」
沈黙。
アークは答えない。
代わりに、一歩前に出る。
その足取りは重い。
だが迷いはない。
エリスが小さく息を呑む。
空気が張り詰める。
レオンが剣を構える。
「どけ」
即答。
アークは首を振る。
「壊すな」
それ以上は言わない。
説明もしない。
懇願でもない。
ただの事実の提示のように。
ガルドが前に出る。
「また邪魔するなら、今度は退かねぇぞ」
フィルの魔法陣が展開される。
水面が震える。
アークは剣を抜く。
黒い刃。
光を吸い込むような刀身。
「……止める」
静かな宣言。
レオンの視線が鋭くなる。
「俺は止まらない」
一瞬の静寂。
次の瞬間。
水が爆ぜた。
戦いが、再び始まる。




