表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/47

退路

封じられた核は、弱く脈打っている。


暴走は止まった。


だが空間にはまだ、重たい余韻が残っている。


フィルが観測を続ける。


「出力は抑制されています。ただし封印は不完全です」


ガルドが低く言う。


「また来るってことか」


「可能性は高いです」


レオンは核を見つめる。


壊せば終わる。


だが――あの圧倒的な力が、頭から離れない。


エリスが静かに言う。


「……一度戻りませんか」


「今は、止まっています」


それ以上は言わない。


疲労は明らかだった。


レオンはしばらく迷い、頷く。


「撤退する」


誰も反対しなかった。



数時間後 ――臨時拠点


海沿いの都市に設けられた会議室。


討伐隊の生存者たちも集まっている。


包帯だらけの兵士。


腕を失った者。


まだ震えが止まらない若い兵。


フィルが守護者の能力を説明する。


圧縮。


静止。


再封印。


ざわめきが広がる。


「止められてたってことか……あの男に」


「じゃあ俺たちは、暴れさせたのか?」


「違うだろ、あいつは指名手配犯だぞ」


「でも、あの力……あれがまた来たら」


声が重なる。


恐怖と怒りが混ざる。


一人の年配兵が立ち上がる。


「俺はもうごめんだ」


静まり返る。


「街が消えるのを二度も見た」


拳を震わせる。


「封じてるだけなら、また起きる。終わらせるべきだ」


数人が頷く。


若い兵が小さく言う。


「……壊せるなら、壊したいです」


それは憎しみではない。


ただの願い。


安心したいだけの声。


エリスはその様子を見ている。


何も言わない。


ただ、視線を落とす。


フィルが冷静に整理する。


「封印維持は不確実。再暴走時の被害は甚大」


「破壊できるなら、理論上は恒久的に解決可能です」


ガルドがレオンを見る。


「どうする」


室内の視線が一斉に集まる。


期待。


恐怖。


すがるような目。


レオンは息を吸う。


核を壊せば終わる。


世界は少しずつ安全になる。


少なくとも、そう信じられている。


エリスがふと呟く。


「……あの力、少し怖かったです」


静かな声。


「とても、静かで」


それだけ。


結論は言わない。


レオンは彼女を見る。


彼女は微笑む。


不安を飲み込んだ、優しい笑み。


その瞬間、レオンは決める。


「破壊する」


はっきりと言う。


ざわめきの後――


安堵の息が漏れる。


誰かが小さく拍手する。


やがてそれが広がる。


大きな歓声ではない。


だが確かな「期待」の音。


年配兵が深く頭を下げる。


「頼む」


若い兵が拳を握る。


「終わらせてください」


エリスはその光景を見つめる。


窓の外、夜の海が揺れている。


波の音が聞こえる。


彼女は少しだけ、その音を聞いてから目を伏せる。


レオンが言う。


「明朝、再突入だ」


誰も反対しない。


世界は、破壊を望んでいる。


少なくとも――この場にいる全員が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ