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砕けた封印

アークが消えた後も、空気は張りつめたままだった。


回廊の奥。


青い光が、さきほどより強く脈打っている。


ドクン。


ドクン。


規則正しかった鼓動が、乱れている。


フィルが眉をひそめた。


「……魔力の流れが不安定です」


「不安定?」


「誰かが強制的に触れています」


レオンは奥を見る。


「アークか」


フィルは頷く。


「おそらく、核に直接干渉しました」


四人は最後の扉の前に立つ。


扉は半開きになっていた。


壊されたわけではない。


“内側から”押し広げられたように。


中へ踏み込む。


巨大な円形空間。


中央に浮かぶ、青白い巨大な核。


その周囲に、黒い紋様が刻まれている。


剣のような線が幾重にも絡み、核を縛っていた。


ガルドが目を細める。


「なんだあれ」


フィルが息を呑む。


「封印術式です」


「封印?」


「核の出力を抑制している構造です。外部から刻まれたもの」


レオンが低く言う。


「アークがやったのか」


答えの代わりに、核が強く脈打つ。


黒い紋様が、ひび割れている。


斬られた跡。


あの戦闘での衝撃か。


あるいは――アークが無理に触れた反動か。


エリスの胸がざわつく。


(止めてた……?)


ドクン。


核の光が爆発的に強まる。


黒い紋様が、一つずつ砕けていく。


パキン。


パキン。


ガラスが割れるような音が、はっきりと響く。


今度は、音が消えない。


フィルが叫ぶ。


「封印が崩壊します!」


最後の紋様が砕ける。


その瞬間。


核が真っ二つに割れた。


内部から現れたのは――


人の形をした“何か”。


色がない。


水でもない。


光でもない。


輪郭が揺らいでいる。


守護者。


それはゆっくりと足を地につける。


着地音は、ない。


レオンが踏み込もうとする。


だが。


足が動かない。


床に縫い止められたように重い。


ガルドが大剣を振り上げる。


だが振り下ろす前に、刃が止まる。


空中で。


見えない壁に押し返される。


「……何もしてねぇぞ、あいつ!」


フィルが叫ぶ。


「周囲の“運動”を止めています!」


「止めてる?」


「動こうとする力そのものを奪っている!」


守護者が指をわずかに動かす。


その瞬間。


レオンの剣に亀裂が入る。


ミシッ。


次の瞬間、粉々に砕け散った。


触れていない。


ただ、“動こうとした力”が打ち消された。


レオンが息を呑む。


「……なんだ、こいつ」


エリスだけが、一歩前に出る。


重い。


だが動ける。


守護者の視線が、彼女に向く。


静かで、整った空間。


衝撃も痛みもない。


ただ、すべてが“止まる”。


エリスの胸が締めつけられる。


(これが……本当の姿?)


争いも、災害も、波も、風もない。


完璧な静止。


一瞬だけ。


ほんの一瞬だけ。


それが、穏やかに見えてしまう。


だが、違う。


「……だめです」


はっきりと言う。


「止まったら、生きていけません」


守護者が腕を上げる。


今度は明確な攻撃。


空間が圧縮される。


空気が固まる。


四人を押し潰そうとする力。


ガルドが歯を食いしばる。


「ぐっ……!」


フィルが叫ぶ。


「これは核の本来出力です! アークはこれを抑えていた!」


レオンの目が見開かれる。


「じゃあ、あいつは……」


「破壊を止めるためではなく、完全解放を防ぐために来た可能性があります!」


守護者の力が強まる。


足場が軋む。


石が砕ける。


エリスが両手を広げる。


「守ります!」


光が爆発的に広がる。


圧縮と、光が衝突する。


空間が歪む。


白い閃光。


衝撃。


視界が消える。


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