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砕ける青

水の巨人が再び腕を振り上げる。


圧が、先ほどより重い。


足場が軋む。


「次で決めるぞ!」


レオンが叫ぶ。


「任せろ!」


ガルドが真正面に踏み込む。


巨人の拳が振り下ろされる。


激突。


石が砕ける。


だが今回は受けない。


ガルドは一歩引き、衝撃を流す。


「重さは読めた!」


横薙ぎの一撃。


水の腕が弾ける。


再生する前に、フィルが詠唱。


「蒸散」


熱が走る。


水が一瞬だけ霧散する。


核が、薄く見える。


「今じゃない!」


フィルが叫ぶ。


「振動が合ってません!」


巨人が足を踏み鳴らす。


足場が沈む。


周囲の水壁が収縮し始める。


空間そのものが狭まる。


圧殺する気だ。


「逃げ場がなくなるぞ!」


ガルドが吠える。


レオンは歯を食いしばる。


(長引けば不利)


エリスが前へ出た。


「レオンさん」


静かな声。


「三秒、作ります」


「無茶だ!」


「無茶じゃありません」


彼女は両手を胸の前で重ねる。


光が強くなる。


今までより、濃い。


「守護拡張」


光が広がる。


足場全体を包み込む。


水圧が、わずかに押し返される。


巨人の動きが鈍る。


「今です!」


フィルが即座に合わせる。


「凍結拘束、最大出力!」


水の下半身が凍る。


完全ではない。


だが動きが止まる。


核の光が脈打つ。


一秒。


二秒。


エリスの額に汗が浮かぶ。


光が揺れる。


三秒。


「レオン!」


ガルドが叫ぶ。


レオンはもう走っている。


水を蹴る。


圧が強い。


肺が潰れそうになる。


だが止まらない。


跳躍。


核へ一直線。


巨人の腕が再生し、横から薙ぐ。


間に合わない。


その瞬間。


エリスが叫ぶ。


「届いて!」


光がレオンを包む。


衝撃がわずかに逸れる。


軌道が、ほんの少し変わる。


それで十分だった。


レオンの剣が、青い核を正面から貫く。


硬い。


だが、止まらない。


「――ッ!」


全力で押し込む。


ヒビが広がる。


蜘蛛の巣状に。


核の光が暴走する。


巨人が絶叫のように震える。


水壁が崩れ始める。


「離れろ!」


ガルドがレオンを掴み、引き抜く。


次の瞬間。


核が砕けた。


青い光が弾ける。


水が一斉に崩壊する。


巨大な波となって空間を埋める。


エリスが最後の力で光を広げる。


「守ります!」


衝撃が襲う。


足場が割れる。


視界が白に染まる。


やがて。


静寂。


水はただの水に戻っていた。


壁を形作っていた力は消えている。


巨人の姿はない。


中央に、砕けた青い欠片が沈んでいるだけ。


レオンが膝をつく。


息が荒い。


ガルドが笑う。


「やったな」


フィルが淡々と言う。


「防衛個体、完全消滅確認」


エリスはその場に座り込んでいた。


呼吸が浅い。


レオンが駆け寄る。


「大丈夫か!」


彼女は少しだけ顔を上げる。


微笑む。


「はい……誰も、欠けてませんよね?」


最初に確認するのは、それ。


自分の消耗ではない。


全員の無事。


ガルドが腕を回す。


「問題なしだ」


フィルも頷く。


「損傷軽微」


エリスは、ほっと息を吐く。


その時。


砕けた核の欠片が、水に沈みながら淡く光った。


一瞬。


本当に一瞬だけ。


空間の水が、完全に静止する。


波紋すらない。


止まった世界。


エリスの胸が、ひやりとする。


(……また)


だが次の瞬間、普通の水に戻る。


気のせい。


そう思うしかない。


レオンが立ち上がる。


奥を見る。


さらに続く通路。


より濃い青の光が、かすかに脈打っている。


フィルが静かに言う。


「これは中枢直前の防壁です」


「つまり」


ガルドが笑う。


「本命が待ってるってことだな」


レオンは剣を握り直す。


「行こう」


エリスも立ち上がる。


少しふらつくが、足は止めない。


救うために。


壊すために。


中ボスは倒れた。


だが、静けさは増している。


まるで奥へ進むほど、世界が整っていくかのように。


四人は、さらに深部へ向かった。


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