表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/33

深淵の番人

扉の向こうは、巨大な半球状の空間だった。


天井は見えない。


壁はすべて水で覆われている。


水が――縦に、立っている。


巨大な水の壁が、空間を囲っていた。


中央には円形の足場。


そこだけが石でできている。


四人が踏み込んだ瞬間。


水の壁が、波打った。


低い振動。


今度は、わずかに音がある。


水が持ち上がる。


集まる。


圧縮される。


そして――形を成す。


巨大な人型。


全身が水で構成され、内部に青い核のような光が揺れている。


顔はない。


だが、確実に“見られている”。


フィルが息を呑む。


「……防衛個体。さきほどの群体とは格が違います」


ガルドが構える。


「中ボスってやつか」


水の巨人が、一歩踏み出す。


その瞬間、足場が沈んだ。


水圧。


重い。


空気が押し潰される。


レオンが前に出る。


「俺が引く!」


巨人の腕が振り下ろされる。


水の塊。


だが質量は岩のよう。


レオンが横に跳ぶ。


着地と同時に斬り上げる。


刃が水を裂く。


だが、手応えが薄い。


斬った部分が即座に再生する。


「物理耐性、高いです!」


フィルが詠唱に入る。


「圧縮体です。拡散させないと意味がない!」


巨人のもう一撃。


ガルドが正面で受ける。


「ぐっ……!」


大剣で受け止めるが、膝が沈む。


床の石がひび割れる。


「重てぇぞこれ!」


レオンが横から連撃を叩き込む。


水が散る。


だが、核は遠い。


内部の青い光は胸部中央。


厚い水層に守られている。


その時。


水面が揺れた。


足場の周囲から槍のような水柱が突き上がる。


「下も来る!」


エリスが光を放つ。


「加護を!」


淡い膜が三人を包む。


水槍が弾かれる。


だが衝撃は残る。


ガルドの腕から血が滲む。


エリスが即座に駆ける。


「じっとして!」


手をかざす。


温かな光。


傷が塞がる。


だが彼女は、そこで止まらない。


巨人を見る。


「……止めます」


静かな声。


レオンが振り向く。


「無理するな!」


「無理じゃありません」


彼女の目は、揺れていない。


“これ以上、誰も傷つけさせない”


それだけが軸。


フィルが叫ぶ。


「核の振動周期、三秒ごとに弱まります!」


「三秒か!」


レオンが息を合わせる。


巨人が腕を振り上げる。


ガルドが正面から挑発する。


「こっちだ、でかぶつ!」


叩きつけ。


衝撃。


その瞬間。


レオンが走る。


水圧で動きが鈍る。


だが踏み込む。


一秒。


二秒。


フィルが魔法を放つ。


「凍結拘束!」


巨人の下半身が一瞬凍る。


三秒。


核の光が、わずかに弱まる。


「今!」


レオンが跳ぶ。


全力の一閃。


水を貫く。


深く、深く。


そして――


青い光に届く。


硬い。


だが、確かな手応え。


ヒビが入る。


巨人が絶叫のように波打つ。


水が暴走する。


全方向へ衝撃。


四人が吹き飛ばされる。


足場が崩れる。


エリスがとっさに両手を広げる。


「守って!」


光が弾ける。


衝撃を和らげる。


だが完全ではない。


レオンが床を転がる。


立ち上がる。


巨人は崩れかけている。


だが――


再び水が集まり始める。


「……再生してる」


フィルが低く言う。


核のヒビが、ゆっくり塞がっていく。


エリスが歯を食いしばる。


「……まだ足りない」


彼女は震える手を握る。


怖いのではない。


悔しいのだ。


救いきれない現実が。


レオンが剣を構え直す。


「もう一回だ」


ガルドが笑う。


「いいねぇ。やっと楽しくなってきた」


水の巨人が、再び完全な姿を取る。


今度は、さきほどより圧が強い。


中心に近づいている証。


フィルが呟く。


「これ以上は長期戦、不利です」


レオンは頷く。


「次で決める」


静かな宮殿の奥。


巨大な水の番人。


本命の守護者へ辿り着く前に立ちはだかる壁。


四人は、再び走り出す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ