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討伐隊

王都の空は、高く澄んでいた。


広場には人が溢れている。


黒哭の森ダンジョン討伐隊の結成式。


城壁の上から王国の紋章旗がはためく。


ざわめき。

期待。

不安。


それらが混ざり合い、奇妙な熱を生んでいた。


レオンは群衆の端に立っている。


剣を腰に下げ、静かに前を見つめる。


壇上に立った王国騎士団長が声を張り上げた。


「諸君! 黒哭の森は災厄の核である!」


広場が静まる。


「ダンジョンを破壊すれば、森は浄化される!

 災害は止まり、世界は救われる!」


歓声が上がる。


レオンの耳には、その言葉がまっすぐ入った。


救われる。


それだけでいい。


団長は続ける。


「第一討伐隊は本日、森へ向かう!」


再び歓声。


人々の顔には希望が浮かんでいる。


子どもが叫ぶ。


「がんばれー!」


母親が涙ぐむ。


レオンは拳を握る。


――終わらせる。


あの森を。


あの黒い核を。


式が終わると、志願者たちは城内へ通された。


石造りの会議室。


壁には地図が広げられている。


黒哭の森の中心に、赤い印。


「これが核の位置だ」


騎士団長が指す。


「内部は魔物が増殖している。だが、構造は単純だ。

 最深部で核を破壊すればよい」


単純。


レオンはその言葉を疑わない。


一人の魔術師が補足する。


「核は瘴気を発している。近づくほど環境は悪化する」


「だが破壊すれば?」


「消滅します」


断言だった。


レオンは頷く。


迷う理由はない。


会議が終わると、隊は城門前に集結した。


鎧の音。

馬のいななき。

人々の視線。


城門がゆっくりと開く。


その向こうに、遠く黒哭の森が見える。


昼なのに、そこだけが暗い。


団長が声を張る。


「出立!」


隊列が動き出す。


レオンも歩き出す。


背後から声が飛ぶ。


「帰ってこいよ!」


「世界を頼んだぞ!」


その言葉が背中を押す。


街道を進むにつれ、王都の喧騒は遠ざかる。


空気が変わる。


風が冷たい。


森が近づいている。


やがて、巨大な木々が視界を覆う。


黒哭の森。


入口には既に瘴気が漂っていた。


足を踏み入れれば、戻れない。


レオンは森を見上げる。


静かだ。


異様なほどに。


団長が振り返る。


「ここから先は少人数で進む。

 各自、慎重に行動せよ」


隊が分かれていく。


レオンは剣を握る。


胸の奥がわずかにざわつく。


だが恐怖ではない。


覚悟だ。


「……行くか」


森の影が、彼を包む。


まだ知らない。


この森を終わらせることが、

何を意味するのか。


ただ今は――


救うために、進む。


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