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潮の止まる理由

リヴィエラ臨時討伐本部。


港に面した石造りの建物の中、簡易的な会議室が設けられていた。


すでに数隊の討伐隊が到着している。


鎧に潮風の跡が残る兵士たち。


疲労は見えるが、士気は落ちていない。


「第一ダンジョン攻略の英雄か」


隊長格の男がレオンに向き直る。


「話は聞いている。助太刀は心強い」


「情報を共有してほしい」


レオンは率直に言う。


机の上に広げられる海図。


静海宮の位置が赤く印されている。


「二日前に先行隊が接近した」


隊長が指で示す。


「外周は静かだ。だが内部に入った途端、水位が上昇。魔物が出現した」


「数は?」


ガルドが聞く。


「多い。水中型が中心だ。動きが速い」


フィルが地図に目を走らせる。


「潮流は完全停止ではない。微弱だが中心へ向かっている」


「中心へ?」


「はい。海そのものが吸い寄せられているような挙動です」


兵士の一人が口を挟む。


「嵐が起きないのは助かるが……海が死んでるみたいで気味が悪い」


室内が少しだけ静まる。


レオンは問いかける。


「守護者の目撃は?」


隊長が頷く。


「いた。巨大な影だ。核へ向かう道を塞いでいる」


「強さは?」


「第一の報告より上だろう」


ガルドが口角を上げる。


「望むところだ」


エリスは静かに兵士たちを見る。


包帯を巻いた者もいる。


「怪我人は?」


「致命傷はいない。だが、水中戦に慣れていない者が多い」


エリスは頷く。


「出発前に治療を回ります」


「助かる」


フィルが手を挙げる。


「提案があります」


全員の視線が集まる。


「正面突破ではなく、魔力流の逆算から中心部への最短経路を割り出します」


「できるのか?」


「理論上は」


少しだけ間。


「成功率は?」


「六割」


「微妙だな」


ガルドが言う。


フィルは淡々と続ける。


「ただし、皆さんの戦闘能力を考慮すれば七割五分まで上昇します」


「雑に上げたな?」


「希望値です」


真顔。


兵士の一人が思わず吹き出す。


張り詰めていた空気が、わずかに和らぐ。


レオンは地図を見つめる。


「明日、俺たちが先行する」


「危険だぞ」


「第一で核を壊したのは俺たちだ。道は作る」


隊長はしばらく考え、頷いた。


「分かった。支援は任せろ」


会議は終わる。


外へ出ると、海は夕日に染まっている。


波は静かだ。


港の木製桟橋が、きしりとも鳴らない。


ガルドが海を見て呟く。


「……本当に静かだな」


「嵐がないのは良いことです」


エリスが言う。


レオンは水平線を見る。


遠く、白い宮殿が光を受けて浮かんでいる。


フィルが静かに言う。


「魔力は確実に集中しています。時間は味方ではありません」


レオンは頷いた。


「なら、止めるだけだ」


海は穏やかだ。


あまりにも。


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