第4話 初報酬
人のような死体にナイフを突きつける。
ただそれだけなんだけど、精神的ハードルが高かった。
「何してるの! あたし達が生きて行くには必要なのよ! 食べ物だって手に入らないのよ! 早くしなさい!」
「う、うん……」
自分より年下の女の子に説教されてる。
確かに昨日から何も食べてない。
近くに生えていた雑草を口に入れて気を紛らわせていただけだ。
意を決して死体にナイフを突き立てる。
教えられた通り、そこから手を入れて小さなドングリを取り出してポケットにそれを入れた。
作業が終わった後、マイカが持っていた袋にポケットから取り出してドングリを入れる。
ズボンが汚れてしまうけど、そんなのは気にしている余裕はなかった。
「何個?」
「五個です!」
ルーイの問いにマイカが応える。
「じゃあ次行くわよ」
また、パーティーはゴブリンを倒す。
僕たちがドングリを拾う。
その間にルーイが少し離れて戻ってくる。
「何個?」
「七個です!」
「合計だけで良いわ」
「えっと、えっと、十二個です!」
マイカが一生懸命数えて答える。
「あっちに大きめの集団が居るわ、アイラ頼むわよ」
「まっかせて!」
この三人は相当強いらしい、十二匹も居たゴブリンがあっという間に倒された。
「何個?」
作業が終わった後にルーイが聞いてくる。
「えっと二十二個です!」
ルーイの目がちょっとだけ細くなる。
「二十二で間違いないわね?」
「は、は「二十四個です!」」
マイカがはいって返事しそうだったんで慌てて遮った。
「次から数は貴方が数えなさい」
ルーイが僕に向かってそう言う。
「お前、数えてないのに答えるって、どうやったんだ?」
「え、足しただけだよ」
マイカの質問がいまいち分からなかった。
「お前、計算できるのか!」
「簡単なやつならね、ソロバン教室通ってたし……三級で辞めたけど」
「ソロバン? よく分からないけど、お前凄いんだな、少し見直した」
その後も何回か戦う。
「休憩するわ、食事しましょう」
ルーイがそう言う。
「僕たちはどうすればいいの?」
小声でマイカに聞いてみる。
「我慢よ、どうして我慢出来なかったら、その辺の草で誤魔化すしかないわ」
「貴方達、これ食べなさい」
ルーイがいきなりパンを二個渡して来た。
「良いんですか!」
マイカが驚いてる。
「ウチじゃ、コレが当たり前だから気にしなくて良いよ」
アイラがそう応えてくれる。
「どうせ水筒も持って来てないんでしょ、コレ飲んで良いから喉詰まらせないでね」
パンを口に入れた時、もの凄くお腹が空いている事を自覚した。
今まで麻痺してただけだったんだ。
この世界に来て初めて食べたパンは硬かったけど、美味しかった。
……うそ、夢中になって食べたから、味なんて覚えてない。
でも、こんなに食べ物がありがたいと思った事はなかった。
「ありがとうございました!」
マイカがお礼を言う。
あ、夢中になり過ぎてお礼言ってないや。
「ありがとうございました!」
「休憩後も頑張りなさい」
「「はい!」」
それからも順調にゴブリン退治は進んで行った。
僕もドングリ拾いの作業に慣れて行く。
コレがあのパンに変わると思うと、むしろ楽しく感じてくるんだから、げんきんなもんだなって自分でも思う。
「何個?」
「三十七個です」
「素人引きつれた割には、まずまずの成果じゃない?」
「そうね、ゴブリンがすぐ見つかったおかげもあるけどね、この辺にして暗くなる前に帰りましょう」
そのまま城壁の中にある街まで戻り、冒険者ギルドって呼ばれる場所まで来た。
「じゃあ、報酬よ」
ルーイがドングリを二個くれる。
「「ありがとうございました!」」
「貴方達、明日と明後日ドングリ拾い出来る?」
「はい! 出来ます!」
マイカが即答した。
「同じ条件で良いなら、使ってあげるわよ」
「お願いします!」
マイカが即答した。
「そっちの子は?」
「あ、お願いします」
慌てて僕も頭を下げた。
その後、ドングリをギルドの買取りカウンターに持って行って銅貨二枚と交換してもらう。
「ねぇ、どうして最初から銅貨で報酬貰わないの? その方が早くない?」
「ドングリは使えば、経験値ってのが入ってそれが貯まればあたし達が持ってるレベルが上がるのよ、お金にするか経験値にするかは、あたし達の好きにして良いの」
「え! レベル上がるんだったら、レベル上げた方が良くない?」
「ドングリ何十個居ると思ってるのよ! それにひとつやふたつレベル上がったって何も変わらないわ、最低でもレベル5にならないと意味が無いってみんな言ってる」
「そっかぁ」
二人で一番安いパンを買う。
小銅貨七枚だそうだ、銅貨一枚で小銅貨十枚分。
パンを二個買って銅貨を二枚払って、お釣りが小銅貨五枚。
「おばちゃん、一枚足りないよ」
「あら、ごめんなさい、おばちゃん間違えちゃったね」
おばちゃん、今、舌打ちした音聞こえたよ。
絶対わざとだよね?
これがここの日常なんだろうな。
ルーイも再確認してくれたけど、間違ってるって指摘しなかったもんな。
騙されるのも、間違うのも、自分が悪いって事なんだろうな。
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