第22話 資料室とボス周回
「じゃあ、降りるよ」
「うん」
十階は今までと全く違って洞窟のような空間だった。
降りるとすぐにジャンプポイントがあって、五mくらい先に壁、その壁に両開きのドアが付いている。
そのドアが閉まって居るって事は誰も挑戦していない証拠だ。
想像と違って、ボス戦は逃走可能らしい。
ドアが開きっぱなしになって、ジャンプポイントまで辿り着いてしまえば脱出出来る。
ただ、この行為はダンジョン的には想定外っていうか、設定ミスっていうか、バグ技みたいなもんらしく警戒音みたいな、クイズのハズレ音みたいなブブーって音がダンジョンの入り口で鳴り響くらしい。
つまり逃げたのがバレる。
ダンジョン街ではボスから逃げる行為は恥ずかしいって認識があるらしく、バカにされるんだそうだ。
オッサンからも恥ずかしいから十一階から戻ってこいって言われたくらいだから、よっぽど恥ずかしいって思われるんだろうな。
ま、俺は気にしないけどね!
挑戦者がダンジョンから入り口に戻るか死ぬかで、ボスはリセットもしくはリポップされるんだから数をこなそうと思ったら、ジャンプポイントを何度も使わないとならない。
今までと同じような広さなんだろうから、十一階降りて戻ってたら時間がかかるし、正直面倒。
バカにされても時間効率と楽さを選ぶ!
扉を開けると祭壇のようになったところにボスが鎮座して居る。
そして、ボス戦開始! 運良く一発でネームドを引き当てる!
……
……
……
なんて事は無く、普通のボス戦だった。
ネームドと戦う事を想定して鍛えてきたんだから、普通のボスに負けるわけがない。
……っていうか、マイカの闇魔法が普通に効いちゃうんだよね。
見えなくなってフリーズしてるところを後ろに回って頸椎を一発殴って終わり。
「毛皮かぁ」
一応銀貨一枚にはなるからいいんだけど。
「ボスは大牙ってのが高いんだっけ」
「うん、牙だと銅貨五枚かな、八割毛皮が出るらしいけどね」
軽く話しながら、ドングリを増やして二個は俺、一個をマイカに渡す。
最初から決めてた配分だからね!
ボスのドングリは三個型だし、探し回らなくていいからコレは効率いいかも。
……
……
……
出ない。
ネームドってこんなに出ないもんなの?
「今日はもう帰ろっか」
「そうね、MPが尽きかけて来たし、ポーションもコレが最後だし」
十階のジャンプポイントから戻る。
珍しく四人パーティの冒険者に遭遇した。
向こうがこちらをチラッと見たけど興味なさげに出て行ったので、俺たちも気にしない事にした。
このダンジョンは過疎ってるってだけあって周回中も含めて、今のパーティともうひと組二人組のパーティにあっただけだった。
「戻りましたー」
目立たないようにドロップ品はポケットで増やしてない。
「毛皮四十二枚、牙十、大牙二対……お前……バカじゃねぇの?」
「倒して戻って、降りて倒してを繰り返すだけだから、こんなもんじゃないですか?」
「お前、十階から戻って来ただろ?」
「なんで分かるんですか!?」
「十一階からじゃ距離的にこんなにボス狩れるわけねぇんだよ! やり過ぎるとダンジョンがおかしくなるから止めろ」
「おかしく?」
「出るはずのねぇ階層で深い階層のモンスターが出たり、モンスターの数が異常に増えたり、最悪ダンジョンの外にモンスターが溢れだす」
「そうなんですか!」
「資料室でなにしてたんだ! 勉強したんじゃねぇのかよ!」
「だって、整理整頓されてなくて順番とかめちゃくちゃじゃないですか! あそこ! 十階の解説書の隣、ゴブリンを美味しく食べるのに挑戦って本でしたよ!」
思わず、読み込んじゃったけど!
ちなみに結論は何しても不味いでした。
あと、十階の事を書いてある本には、十一階降りてから戻れみたいなことは書いてなかった。
「いや、まぁ、それ言われると何も言えねぇけどな」
「どっちにしろ思ってた以上に色んな資料あったのでしばらく入り浸るつもりだから、整理もしておきますよ」
「そうか、なら掃除代で二人とも銀貨二枚出してやるよ、差し引きで一人銀貨一枚で合計銀貨二枚だな!」
「え! あたしは文字も読めないし……迷惑かけちゃうだけだから……」
「あ? こいつ一人だけなら銀貨一枚しか出せねぇから、やっぱり銀貨二枚もらうぞ!」
「マイカ! 勉強しよ! 文字読めるようになろう! 俺が教えるから!」
スキルの力で読めるだけなのに偉そうな事言えないんだけどね。
少しでもマイカの役に立ちたい。
「良いの?」
「もちろん!」
この日からボスと資料室の周回が始まった。




