第2話 ドングリ拾い
ヒーローについて行くと、親方って人の前に連れて行かれた。
「親方ぁ、新人連れて来た」
「そうか、名前は?」
大柄で何か鍛治をしているような赤い短髪と髭を蓄えたおじさんが、ジロリとこっちを見てる。
「あ……」
「名前は?」
「あ、えっと、リュウトです!」
「言いずらいな、お前は今日からリュウだ」
「え?」
「リュウだ、良いな?」
「あ、はい」
「マイカ、面倒見てやれ」
僕のヒーローはマイカって名前だった。
「うん、分かった! ついて来なよ!」
「うんじゃなくて、はいだ!」
「はーい」
「伸ばすな!」
「はいはい」
「一回!」
「はい」
その時マイカが、イィーって表情をした。
可愛かった。
マイカに付いて行くとボロボロのひとり用テントみたいな所に連れて行かれる。
「ここがアタシの住処さ! 面倒見れって言われたから特別にそっち側使って良いよ!」
「あ、ありがとう」
そっち側って言っても座布団一枚分くらいしかスペースがない。
しかも細長いから、横にはなれるけどそれ以外何も出来そうにない。
マイカも同じくくらいのスペースだから文句は言えないけど。
それでも小柄な彼女よりは少しだけ体格が良いから、僕の方が狭く感じる。
「じゃあ寝るよ」
「え? まだ夕方にもなってないよ?」
「起きてたら腹減るから寝るんだよ! それに明日は日が登る前からドングリ拾い行くから、寝ておかないと持たないよ」
ドングリ拾い?
食料を取りに行くのかな?
「おい! 起きろ!」
「ふぁい」
月明かりでボンヤリとマイカが見えた。
そう、まだ月が出てる時間だ。
多分夜中だと思う。
「寝ぼけてんじゃねぇよ! ドングリ拾い行くぞ! あーそうだ、お前ナイフとかなんか刃物持ってるか?」
「……」
無言で首を横に振った。
「仕方ねぇな、コレ使えよ」
少しの間ゴソゴソしてたマイカが、鋭利な三角柱に見える石を渡してきた。
「これは?」
「石ナイフ、そんなんでも無いよりマシだから、あたしはコレがあるから特別にお前にそれ貸してあげるよ」
そう言いながら、マイカは明らかに刃こぼれして、もっと明るかったら錆も目立つんだろうなって思える、鉄製? っぽいナイフを取り出した。
「あ、うん、ありがとう」
しかし、ドングリ拾うのに刃物なんているのかな?
こっちの世界のドングリは下から生えてて、コレで刈るのかな?
「ほら、急いで!」
「こんな暗いのにドングリ拾えるの?」
「何言ってるんだよ、場所取りしに行くんだよ」
「そうなんだ」
ドングリ拾うだけなのに場所取りしないといけないんだ。
結構競争激しいのかな?
「よし! いい場所取れた!」
少し離れた城門の出入り口のすぐに横の場所だった。
「どう見てもドングリなんて無さそうなんだけど、ここで良いの?」
「何言ってるの? あたし達だけで行くわけないじゃ無い、ここで拾ってもらうの待つのよ」
拾ってもらう?
拾いに行くのに?
なんだか、こんがらかってきた。
「はい、手繋いで」
「え! 急にどうしたの? いやぁ照れるなぁ」
「何言ってるの? 誰と誰がグループか分かりやすくする為につなぐのよ、じゃないとソロだと思われちゃう」
「えーっと、手を繋いでないとバラバラに拾われるって事?」
「そうよ、分かったら手を繋いで」
繋いだ手のひらは、想像よりずっと硬かった。
「貴方の手……柔らかいのね……」
「あ、うん」
「なぁーんも苦労しないで生きてきたんだろうね、ここでそんな調子だと、死んじゃうよ」
「心配してくれるの?」
「迷惑なだけよ、面倒みろって言われたのに死んじゃったら、あたしの格がおちるわ! だから死ぬならあたしと関係ないとこで死んでね」
「あ、うん、ごめん」
なんだか知らないけど、思わず謝ってしまった。
うっすらと夜が明けて来ることには続々と子供達が集まって来た。
身なりを見る限り、多分みんなスラム街かそれに近い所の子供だと思う。
そして、日が昇り城門が開く頃には道の両脇にびっしりと子供が並んでいた。
百メートルくらい続いているんじゃないだろうか。
そして、城門から武器を持ったガラの悪そうな人達が出て来ると、一斉に声を上げた。
「連れてってください!」
「俺もう何回も行った事あります!」
「自前のナイフ持ってます!」
「旦那ぁ! ここです! おいらはここにいますよー!」
思い思いに声を張り上げているのを呆気にとられて眺めていた。
「何してるの! お前も大声で叫ぶのよ!」
「えっと、何を言えば……」
「何でも良いのよ! 少しでも目立って拾って貰わないとならないんだから!」
よく分からないけど「お願いします」を連呼してみた。
何を言えば良いのかも分からないし。
ドングリ拾いに行くだけなのに、こんなに大変だと思わなかった。
みんな必死だし。




