集団転移
気がつけば石造りの広間に居た。
「え? ここは何処?」
記憶がなんかボヤけているような感じがする。
確か深夜バスに乗っていて……凄い衝撃があって……ダメだ、そこから記憶がない。
辺りを見渡すと、僕と同じように呆然としたり、キョロキョロしてる人たちが見える。
「今回は人数が多いな! ステータスを確認していけ!」
梅干しみたいな顔をした人が周囲の兵士っぽい人にそう命令をしている。
……兵士?
ファンタジー映画でしか見たこと無いような格好をしている。
なんで?
「お前たちは我々の世界に召喚された! 死にたくなければ抵抗はするな!」
梅干し顔の人がそんな事を言ってる。
「何わけのわからないこと言ってるんだよ! 俺たちを元の所に返せ!」
少し厳つい感じの男の人が大声で怒鳴り出した。
「そうよ! 帰して!」
小太りなおばちゃんも声をあげる。
その瞬間、兵士たちが数人集まって2人ともを地面に抑えつけて拘束した。
「こいつらのステータスを確認しろ」
「『大声』と『食い溜め』です!」
「なんだハズレスキルか……見せしめに殺せ」
「はっ! これは見せしめである! 抵抗しなければ殺さない! 繰り返す! これは見せしめである!」
兵士がそう叫んだ瞬間、二人の背中から剣が生えていた。
二人の断末魔の声が聞こえた。
頭の中が真っ白になる。
今目の前で起こっている事が理解できない。
大声で抗議しただけで殺させる。
「お前のスキルを確認するぞ『不思議なポケット』……なんだこりゃ?」
呆然としているうちに僕のスキルは確認されていた。
「鑑定士! こいつのスキルを確認してくれ!」
隣の兵士が誰かを呼んでる。
「ふむ、ポケットが不思議なポケットになると出てますな」
「不思議なポケットとはなんだ?」
「それが、鑑定しても、不思議な事がおこるポケットとしか出てきませんで」
「うーん大臣に判断を仰ぐしか無いか」
何が起きたかの説明も何をされているのかの説明も無いまま、僕の周りで何かが行われている。
どうして良いか分からない。
声を出せば、さっきの人みたく殺されてしまうかもしれない。
「おい! お前! ポケットの中を出してみろ!」
「え! あ、あの、何も入ってません……」
「どら! 本当に何も入って無いな」
兵士がいきなり僕のポケットに手を入れて確認してきた。
茶色のチノパンって呼ばれるタイプのズボンにグレーのスウェット姿なので、ズボンにしかポケットはついてない。
身体がビクッとなって、怖くて動けなかった。
「他の数値はどうだ?」
梅干し顔の人が兵士を連れて近づいてきた。
「平均より低いですね」
「いらんな、捨てて来い」
僕をジロリと一瞥して、すぐさまそう言った。
「は!」
いきなり両脇を二人の兵士に片方づつ持たれて引きづられる。
「え! あの、僕、どうなるんですか?」
「うるさい! 黙ってついて来い!」
そのまま荷馬車に乗せられ城壁の外まで連れて行かれると、乱暴に降ろされた。
ここまで来る時に見えた景色はまるで中世でファンタジー小説の世界だった。
「あの? あの! 僕はどうすれば! グェッ!」
いきなり兵士にお腹を蹴られた。
「うるさい! お前は捨てられたんだ! 抵抗しなかったから殺さないでやったが、この先は死ぬなり生きるなり好きにしろ!」
それだけ言い放つと、兵士を乗せた荷馬車が帰っていく。
ど、どうすれば……
……視線を感じる。
よく見ると捨てられたこの場所は、スラム街のようだ。
粗末なあばら屋がいくつも建っていた。
「お前、良い服着てるな」
風呂に一度も入った事のないような、子供がジリジリと僕に近づいてくる。
「くれよ! その服くれよ!」
他の子供がそう言うと、一斉に子供たちが群がって来た。
「やめてくれ! やめてくれ!」
必死に脱がされ無いようにに抵抗する。
「コラァ! やめろ! 新参者の服奪おうとするな!」
可愛らしい女の子の声が聞こえた。
その声で今まで僕に伸びていた手が一斉に引っ込む。
声がした方に目を向ける。
そこには腰まである真っ赤な髪と気の強うそうな表情をした十二歳くらいの美少女が魔女が乗るような箒を持って立っていた。
ヒーローに見えた。
「お前歳いくつ?」
「あ、僕は十二歳です」
「あたしより一つ年上じゃ無い! もっとしっかりしなさい!」
「はい……すいません……」
「まぁ、良いわ! 親方に合わせてあげるからついて来て!」
そういうと僕のヒーローは颯爽と歩き出す。
僕は慌ててその後ろをついていった。
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