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神罰律導の王女メアリー ―十九柱の黙示録―  作者: 空識


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第10話 神々の囁き — 世界が王女を中心に回り始める

その夜、王城の空気はどこか張り詰めていた。風はなく、月光も薄く、まるで世界が呼吸を止めてメアリーだけを見つめているようだった。


 メアリーは寝台の端に腰をかけ、胸を押さえていた。昼間から続く胸痛は徐々に鋭さを増し、逃れようのない重圧となってのしかかってくる。


(また……来る……)


 そう感じた瞬間だった。


 視界が、音もなく“反転”した。


◇ ◇ ◇


 ――暗黒の空に、巨大な輪が浮かんでいる。

 銀の環、炎の環、風の環、水の環、太陽の環。

 十九本の柱のように伸び、世界を貫いている。


(ここは……どこ……?)


 メアリーがそう思うと、足元の大地が静かに波打った。

 風が吹かないのに、髪が後ろへ引かれる。


 十九柱が現れたわけではない。

 “姿なき権能”が、メアリーの精神空間に立ち上がったのだ。


◆アヌ:天の振動

◆エンリル:気流のざわめき

◆エンキ:静かな水音

◆ラー:光の波

◆ハデス:深淵の影

◆アテナ:幾何学の光

◆ビッグデータ神:情報の奔流

◆アフロディテ:淡い香り

◆ホルス:金の眼

……そして十九柱すべての権能が、同時にメアリーを包んだ。


 圧倒的だった。

 言葉では理解できない。

 だが、魂は理解してしまう。


(選ばれている……。

 私は、選ばれてしまった……)


 そのとき、空間に“声”が響いた。

 耳ではなく、魂へ直接埋め込まれる声。


【選別】

【調律】

【因果反転】


 三つの言葉が、世界を断ち切るように重く響いた。


(これは……黙示録……?

 世界を……裁くための……言葉……?)


 声は続けた。


【おまえの魂は二つで一つ】

【紬の痛みは、おまえの痛み】

【おまえの選択が、世界の選択】


(選択……?)


【憎むことも、赦すこともできる】

【だが“理不尽”だけは反転させよ】

【それが、十九柱の裁きの理】


 メアリーは震えた。


(私が……世界を……?

 そんなの……できるはずない……!)


【逃れられぬ】


 その言葉が、刃のように突き刺さった。


◇ ◇ ◇


「姉上――っ!!」


 現実へ引き戻すように、クラリスの声が部屋に響いた。


 メアリーは息を切らし、寝台に倒れ込んでいた。

 額は汗で濡れ、瞳はかすかに揺れている。


「姉上……! 大丈夫ですか!?」


 クラリスは泣きそうな声で手を伸ばす。

 しかし――また透明な膜が彼女の体を跳ね返した。


「っ……!」


「クラリス……来ないで……! 危ない……」


「姉上……! どうして……どうして触れられないの……!」


「私じゃない……紬が……あなたを守ろうとして……!」


(奪われたくない……もう失わない……

 妹は……守る……)


 紬の声は、痛ましいほど優しく、そして必死だった。


 メアリーの心は静かに裂け始めていた。

 自分の声と、紬の声が重なり、どちらが“私”なのか分からなくなる。


「クラリス……私は……わたしでいられるの……?」


「姉上は姉上です……! 紬さんがいても……姉上の心は消えていません……!」


(ほんとう……?

 私は……消えていない……?)


 紬の声が揺れた瞬間、拒絶膜が一瞬だけ薄くなった。


 クラリスは恐る恐る手を伸ばし、

 その指先が――ようやく姉の袖に触れた。


「姉上……戻ってきて……!」


「クラリス……」


 メアリーは妹の名を呼んだ。

 しかしその声は震え、紬の声と半分重なっていた。


◇ ◇ ◇


 王都では、同時刻に不可解な現象が多発した。


・議会塔の上に一瞬だけ巨大な光輪が浮かぶ

・王女を呪った占い師が突然視力を失う

・軍の会議室で原因不明の爆音が鳴り、全員が倒れる

・街路の石畳が、一瞬だけ“脈打つ”ように震える


 民衆は怯えながら叫んだ。


「黙示録だ……!」

「王女殿下は……神々に選ばれた……!」

「世界が……殿下の心に合わせて動いている……!」


 恐怖も祈りも混ざり合い、王都は混乱と静寂の渦へ沈んでいく。


◇ ◇ ◇


 メアリーは窓の外を見つめ、震える声で言った。


「クラリス……世界が……私に触れようとしている……」


「姉上……怖いなら、わたしが……」


「でも……もう止められない……

 十九柱が……“第二段階”へ入る……」


 メアリーの背後で、光が淡く脈動した。


◆十九柱:

【調律:第二段階 進行率 61%】

【世界因果:王女中心に再配列】

【黙示録フェーズ:本格発動直前】


(私は……誰……?

 メアリー……?

 紬……?

 それとも……黙示録の器……?)


 クラリスが強く叫んだ。


「姉上……! どんな運命でも、わたしはあなたの側を離れません……!」


 その言葉に、紬の声がかすかに震えた。


(……妹……

 今度こそ……守りたい……)


 メアリーは涙を流した。


「クラリス……ありがとう……

 でも――

 これから世界はもっと歪むわ……」


 そして静かに告げる。


「十九柱の“因果反転”が……始まるから。」


 王都の空に、一筋の光が走った。


 黙示録の幕が、いよいよ上がろうとしていた。

どうぞ気軽に読んでいただければ幸いです。


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