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【完結済】訳あり元冒険者の復職支援 ギルド職員リタ・パルマのお仕事相談  作者: 夕波@「不良債権」コミカライズアンソロ1/8発売


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last case.冒険者ギルド職員リタ・パルマ 24歳 元Sランク冒険者(14)

「さて、これをどうする?」

ライオネルは部屋中に飛び散った血と二人の遺体を眺めながらリタに尋ねた。


「キマイラも何頭かいるので、私たちの手には負えませんね。ちょうどいい人がいるので、来てもらおうかと。」


リタはベッドサイドのチェストから押収されていた自分の鞄を見つけると、ごそごそと中を探りはじめた。そうして取り出したのは、通信用のクレインだった。

その翼に入っている刻印をみて、ライオネルはなるほど、と頷いた。


「前にクレインを預かった時に、ちょっとコピーさせてもらったんですよね。グレイさんとは極力関わりたくありませんが、もう一度くらいは連絡を取らなきゃいけなくなる気がして作ったんです。オリジナルより精度は劣りますが、騎士団本部まで行けば誰かが感知するでしょう。」


リタはそう言って廊下に出て窓からクレインを飛ばすと、その場に膝を丸めて座り込んだ。


「…お腹すいた。私、この家にケリをつけたら絶対に鉄板焼きに行こうって決めてたんです。」

ライオネルは小さく頷きながらリタの隣に腰を下ろした。


「お肉もお魚もきのこも野菜も、食べたいもの全部食べるんです。」

「鉄板焼きならいい店を知っている。行くか?」

「…私なんかが黒煙でも?」

「関係ないさ。会いたいという願いは叶って気は済んだ。食いしん坊のギルド職員と行きたい気分なんだ。」


リタはふふっと笑うと、ライオネルに寄りかかって頭をあずけた。

窓の外からは、辺境騎士隊が忙しく立ち働く声が聞こえてきた。



「終わったようだね。」

転移魔法でブレヴァール家を訪れたグレイは、大勢の部下を引き連れにこやかにリタに声をかけた。


「キマイラは離れの地下にいます。多分8頭。約束は守って下さいよ。」

「ああ。あちらは?」


グレイの視線は、使用人たちに混じって手当をうけるクロードをとらえていた。

「クロード・ブレヴァ―ル。次期当主です。魔力量の多さは私が保障しますよ。」

「なるほど。」


「ちなみにキマイラや人身売買には一切関係していません。すべて執事のブライアンが取り仕切っていました。まあ、何をしていたか知ってはいたでしょうけど。」

「身内をかばうのかい?」


「いいえ。私は孤児ですし。ただグレイさんは、ああいうタイプお好きでしょう?領主代理として事務仕事を真面目にこなしていたようです。どうせこの件は表に出なのなら、家を取り潰すよりうまく使いまわしたほうがいいかと。あれは人から認められることに飢えてますから、飼いならせば限りない忠誠を誓うと思いますよ。」


「キミは本当に、支援職に向いているんだね。あとで話をしてみるよ。」

「ありがとうございます。」


二人が話していると、フェネスト卿がやって来た。

「グレイさん、こちらは騎士隊の―」

「知っているよ。久しぶりだねアレクセイ。紫水晶の谷での防衛戦以来かな。」

「んな昔の話は忘れたな。出世したとは聞いていたが、まさか諜報部のトップまで上り詰めていたとはなぁ。」


二人は目尻に皺を寄せて懐かしそうに笑っていた。


「アレクセイも私も、血の盾出身なんだ。歳こそ違えど同期ってやつかな。」

「えっ…?」

フェネスト卿には死ぬほどしごかれたが、そんな話は一度も聞いたことがなかった。


「一人は諜報部に残って管理職に、一人は地元に戻って騎士隊のトップになった。それがここへきて、実に30年ぶりの再会というわけだ。」

「それは…おめでとうございます。」

「そうだね、実にめでたい話というわけだ。ところでアレクセイ、騎士隊は今どれくらい残ってるのかな。」


「執事がだいぶ削ったからな。まともに使えるのが2ダース。見習いが8人ってとこだ。」

「ふむ、悪くはないが、辺境騎士隊としては少々心もとないところだね。」

「相変わらず嫌味ったらしい奴だな。」


諜報部長官に向かってそんな軽口をきくあたり、若い頃の二人はそれなりに親しかったのだろう。グレイはスッと優雅な手振りで人差し指を立ててみせた。


「どうだろう、うちの若いのを派遣させてみては。」

「血の盾がこんな田舎まで来るとは思えないがな。」

「実戦経験を積ませたい若手が何人かいるんだが、王都じゃなかなか機会がなくてね。少々自己評価が高い者もいるから、1年ほどここで可愛がってくれると助かるね。」


にこやかに笑っているが、グレイの目は本気だった。フェネスト卿は小さく舌打ちすると尋ねた。


「どこまでしごいて大丈夫なんだ?」

「死んでも構わないよ。それくらいの覚悟で入団している者たちだ。老騎士にやられるような者はどのみちうちにいても死ぬからね。」


リタは二人の応酬を聞きながら、この地に派遣される若手団員たちを気の毒に思ったが、フェネスト卿はどこか楽しそうだった。

長く暗い翳が支配していたこの辺境領にも、少しだけ明るい光が差した気がした。


 

「さて、リタ・パルマ。」

グレイは足早に騎士隊の方へ戻っていくフェネストを見送りながら口を開いた。


「与えられた任務を短期間できっちりこなしたことは高く評価しよう。ただし、通信用クレインのコピーはいただけない。職務規定5条の違反だ。」


難癖をつけてまた面倒な仕事を押し付けてくるのだろうか。リタは身構えつつも反論した。


「私は騎士団に所属していないのでその規定は該当しません。手続きなしで貸与したグレイさんに問題があったのでは?」


口答え以外の何物でもなかったが、業務外で散々働かされたのだ。これくらい言っても許されるだろう。


「君の言う通りだ。だからといってこちらも黙って流すわけにはいかないのでね。転移魔法は使わせないよ。自力で帰ってくるといい。」


グレイはそう言って長距離鉄道の切符を2枚差し出した。行先は王都中央駅。

さすが諜報部というべきか、用意されていたのは一等特別室だった。

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