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【完結済】訳あり元冒険者の復職支援 ギルド職員リタ・パルマのお仕事相談  作者: 夕波@「不良債権」コミカライズアンソロ1/8発売


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case5. 都市遊民リュカ・アポリネール 25歳 元魔術師(23)


「素晴らしい魔力ですね。キマイラの餌にするにはもったいない。ボスの元にくれば好待遇で幹部入りできますよ。どうです?護衛から成り上がっては?」


屋上で小型のワイバーンに乗って逃走をはかろうとしていたカルメルは、余裕たっぷりに笑った。空に逃げられてしまえば、後を追うことはできない。


「残念ながら、私は冒険者ギルド正職員なので副業は原則禁止なんです。福利厚生の充実した仕事を手放す気はありません。」


リタは話ながら相手との距離を測った。最速で間合いをつめるのに10歩。その手前に屈強な黒服が8人。


「冗談でしょう?それほどの魔力に恵まれていながら、冒険者をサポートする側に回っている?」

「非常にやりがいのある仕事ですよ。」


ジリジリと、黒服たちがリタを囲むように近付いてくる。その間にカルメルはワイバーンの手綱をにぎりしめた。


「ギルド職員なんて、冒険者がいるから成り立っているような仕事でしょう。大した学歴も資格もいらない、所詮誰にでもできる底辺職。やりがいがある?あなたは分かっていないようだ。本当にやりがいがある仕事というのは、生きたまま魔力の高い子どもをキマイラに食わせて最強の生物兵器を生み出すことや、希少生物の乱獲やダンジョン荒らし、闇オークションの運営にこそ見いだせるものなんですよ。」


「そのやりがいのある仕事の詳細を、ゆっくり聞かせていただきましょうか。」

「残念ながら、時間がないようなのでまたの機会に。あとはうちの若い者がお相手しますよ。」


黒服がリタに向かって走り込んできた。若い女一人を、容赦なく叩きのめすつもりらしい。ワイバーンが夜空にひと啼き、羽ばたこうとしてあたりに風を起こした。

リタは両手を地面につくと、一瞬で屋上の地面の組織を作り替えた。

そうして、ワイバーンと黒服たちの足元をあっと言う間に岩で固めて身動きをとれなくした。


「ギィヤァァァァ…ッ!」

突然足元の自由を奪われてパニックになったワイバーンが大きく体を揺らし、カルメルが背中から振り落とされた。

リタはその隙を逃すことなくカルメルの首を右手で押さえて地面に叩きつけた。

「うぐぅっ…。」

「組織の黒幕は誰ですか?」

リタはほんの少し、右手の力をゆるめた。


「はっ、簡単に吐くと?ボスを裏切るくらいなら死んだ方がマシだ。」


その時、岩の拘束を無理やり壊した黒服の男が3人が、背後からリタに切りかかろうとした。

リタは地面から土魔法で錬成した長剣を抜き取ると、そのひと振りで男たちの足元を斬っていった。それからゆっくりと両手を地面につけて、再び土の組織を作り替えていった。


ボコッ…!

自由を奪われた黒服たちが、円筒の壁に囲まれた。石でできた筒の中に、身動きもできずぴったりと直立したまま閉じ込められた形だ。上にはふたをして、中は真っ暗になっている。それは、細長い無骨な墓標のようだった。


リタはカルメルを閉じ込めた筒に歩み寄った。彼だけは、首から上だけ見えるようになっている。


「このような組織を統率していたカルメルさんならご存知でしょうが、情報を引き出すのに一番効果的な拷問方法ってなんだと思いますか?」


リタはカルメルの耳元に話しかける。


「ははっ。そんな月並みな脅しで私が傾くとでも?脅しじゃなかったとしても、歯を抜かれようが、玉潰されようが、手足を切り落とされようが私は吐きませんよ。そういった『教育』を受けているのでね。試してみますか?」


虚勢でもなく、本気で言っているのだろう。カルメルの視線はぶれなかった。

やはりこの男に物理的な拷問は効かない。リタはふるふると首を横にふった。


「いいえ。痛いのは嫌なので、あと血も苦手なので遠慮しておきます。」

「そりゃあありがたいですね。」

「さて、一番効果的な拷問ですが、実は意外と地味なんですよ。」


リタはカルメルを喉もとまで捕捉している円筒に触れた。

みるみるうちに、カルメルの頭上まで筒が伸びて、蓋がなされた。

リタは円筒に向かって語り掛ける。


「人がひとり入れるサイズの真っ暗な縦穴の中に、人間を立ったまま入れるんです。座るどころか足をかがめることも腕を伸ばすこともできず、ただ暗闇のなかで強制的に立たされているだけ。

それだけかと思うでしょう?正気を失う寸前でお出ししますからご安心ください。ちなみに私の最長記録は56時間でした。これはその穴を持ち運び可能なタイプに改良したものです。私の魔術が破られない限り中からも外からも壊すことはできないので、頑張ってくださいね。」


筒の中から不格好な叫び声が聞こえた気がしたが、リタは気に留めることもなくその場を離れた。

それからワイバーンの捕縛を解くと、じっとその瞳を見つめた。

ワイバーンは知能の高い魔獣だ。どちらが上か瞬次に判断したのだろう。リタに向かった頭を垂れた。


「いい子ですね。少し背中をお借りしますよ。」

リタはそう言ってワイバーンの首筋を撫でると、横腹を軽くキックした。


ワイバーンは勢いよく飛び立って、リタに操られるまま急スピードで中庭へと向かって降下していった。

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