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【完結済】訳あり元冒険者の復職支援 ギルド職員リタ・パルマのお仕事相談  作者: 夕波@「不良債権」コミカライズアンソロ1/8発売


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case5. 都市遊民リュカ・アポリネール 25歳 元魔術師(4)

エヴァンスの自宅はBARサイハテから30分ほど歩いた場所にある、労働者階級が集まる落ち着いた住宅街だった。

1階がキッチンと広いリビング。2階に2部屋で、エヴァンスとニーナがそれぞれ使っている。


遠い西国に咲く花をデザインした壁紙や赤いベルベットのカーテン、それに凝った装飾の白いマントルピースまで、外観からは想像できないほど洗練された内装だった。


「素敵なお家ですね。」

「冒険者時代に買った家でな。けっこうな金額をかけて改装したよ。あの頃、いつ死ぬかもわからなかったのに、なんで家なんかに金かけるんだって自分でも思っていたが。今となっては正解だったな。」


そう語るエヴァンスに案内され、リタはソファに腰かけた。ニーナに、今学校で勉強していることを聞いているうちに、食卓にはあっという間に夕食が並んだ。


作り置きしてある野菜と豆のスープを温めている間に、エヴァンスが手際よく厚切りベーコンときのこのクリームパスタを作る。それをニーナがテーブルに並べていく。二人の生活のリズムや流れがもう出来上がっているのだろう。リタは完全にお客様だった。


「時間があればもっと凝ったものを出せたんだが。」

エヴァンスがそう言いながら保冷庫からデザートを取り出した。

トローニャの果実をたっぷりいれたゼリーだ。オレンジ色がグラスの上でふるふると可憐に揺れている。


「いえ、デザートまでいただけるなんて幸せすぎます。っはぁ~、清楚系美人。いや美ゼリー!」


「リタさん、ゼリーはご飯を食べてからですよ。」

10歳の少女にそう言われて、リタは笑顔で頷いた。


ありあわせだと言っていたが、厚切りのベーコンがごろごろ入ったクリームパスタは、きのこの風味と相まってコクとソースのなめらかさが段違いだった。あっさりしたスープは、野菜も豆も柔らかくなり、それぞれの素材の角がとれて、スープの中でまろやかに馴染んでいた。


リタはあっと言う間に完食すると、ふるふるした柔らかいゼリーを恐る恐るスプーンですくって口にいれた。

見た目の鮮やかさと違って、甘さを控えているのでシンプルにトローニャの甘酸っぱさが楽しめる。

リタはゼリーを大事に味わって食べた。


「本当にご馳走様でした。こんなに美味しいものが食べられて、私は明日エヴァンスファンに刺されたとしても本望です。」


「んなこと願うな。こっちもお前さんには借りがあるからな。メシくらいでそこまで喜んでもらえるなら良かったよ。」


「メシくらいだなんて。美味しいご飯は大事ですよ。ね、ニーナさん?」

今度は、ニーナが全力で頷く番だった。

 

 

「それで、妙な噂というのは?」

「ああ。まだ噂の段階だが、どうもまずいことになってるんじゃないかと思ってな。」


食後、ニーナはソファで絵本を読みながらくつろぎはじめ、エヴァンスはリタにお茶を入れてくれた。

夕飯に誘ってもらったが、自宅なら誰にも話をきかれる心配がないという理由だったのかもしれないとリタは思った。


「リバーサイドの東にお屋敷街があるだろう。」

「ああ、貴族の中でも比較的新しい家格が集まるエリアですね。」


「こないだ討伐で一緒になった若いもんが、ある屋敷で護衛の仕事を受けたそうだ。内容は、屋敷にいる子どもたちが危害を加えられないよう守ること。子どもたちは4歳くらいからニーナくらいまでのが10人ほど。アカデミーの送迎や買い物の時の護衛とか、誘拐を恐れて貴族が自分の子どものために冒険者を雇うのはまあ、よくある話だ。報酬は一日で金貨3枚。子どもたちは屋敷の外には出ず、立ってるだけの退屈な仕事だったそうだ。」


この手の依頼は人気があるのでギルドで張り出すとすぐに請け手が決まる、いわゆるラッキー案件だ。それにしても仕事内容と報酬が不釣り合いすぎる。


「子どもが10人って。ずいぶん兄弟が多いんですね。」


「いや、どうも魔力の高い孤児たちを保護しているらしい。魔力持ちはアカデミーに入れれば将来有望だからあ。貴族の養子に斡旋するんだと依頼主の男爵は言っていたらしい。」


「能力の高い子どもなら孤児でも欲しいという家は確かにありますからね。奴隷ならともかく、養子斡旋は合法。今の暮らしに慣れるまでは、魔力暴走を起こされると困るので外に出さないというのも、頷けます。仕事も、冒険者ギルドを通しているのですよね。怪しいけれど、立ち入り調査をするほどでもない、という状態ですね。」


「ああ。だからお前さんに話したんだ。身ぎれいにして部屋で大切にしてるのも、奴隷のカモフラージュじゃないかってな。」


「どうしてそう思うんですか?」

エヴァンスは右手を顎に当てながらふむ、と考えた。

「冒険者の勘、ってやつだな。」

その顔は、すでにベテランの上級冒険者そのものだった。

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