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禅譲は滞りなく行われた

作者: 小雨川蛙

 ある日、地球に侵略者が訪れた。

 とはいえ、彼らは人類と違いいきなり暴力に訴え出たりはしない。


「まずは話し合おう。血が流れないのであればそれが一番だ」


 そう言って彼らは地球の支配者を探した。

 とはいえ、調べるまでもなく人類が地上の支配者であるのは明らかだ。


「人類の中で最も正当な王は誰だろうか」

「決まっている。種そのものを最も体現している者だ」

「ふむ。では、人類の体現者は……」


 そんな考えのもと彼らは人類の歴史そのものと言えるものを探した。

 そして、遂に該当する者を見つけた。

 その人は流石に侵略者を見て面食らったが、彼らがまず話し合いを求めていると知って少し考える素振りをする。


「質問なのですがよろしいですか」

「何でも聞きたまえ」

「人類は愚かです。歴史が証明しています。今はあなた達が強くともいずれは負かされる可能性は十分にあります。この考えを聞いてどう思いますか」

「ふむ」


 侵略者達は黙り込む。

 そんな彼らを見て満足気にその人は告げた。


「提案をいたしましょう。あなた達は人類を滅ぼすというのはどうですか」

「なんと……人類の王の発言か?」

「人類の王だからこその発言ですよ。いいですか。人類は常に他者を蹴落とし、勝ち続けていたが故に今の繁栄があるんです。つまりそれは自らが負ける時は素直に受け入れる準備もあるということでもあるんです」

「しかし……」

「お優しいですね。ですが、宣言を致しましょう。あなた方はこの禅譲を受けなければきっと必ず後悔する」

「……分かった」


 侵略者達は深々と礼をする。


「偉大なる王に敬意を表する。私達は必ずあなた達に恥じない次代の支配者となろう」


 そう言って侵略者達は武器を構えた。


 そんな彼らを見て人類の王は。

『偉大なる勝者』と同じく長い人類の歴史の中で常に存在していた『虐げられていた弱者』は。


 ――即ち、人間という種の体現者。

『その片割れ』であった乞食は満足気に笑い人生を終えた。

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