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一次元転生  作者: K省略
第一章 蟲国編
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第一章 6話 壺

知識箱①

エネルギー:言語化可能な想像を現実にもってくるための動力源。

器:エネルギーを力に変換するための器官。すべての生物が大なり小なり器をもっている。

【──きて、起きて。ねぇ、ショウ!】

「──うわッ……うるさ」


 体内に目覚まし時計というのは、割といいのかもしれない。

 ショウは身体を跳ね起こし、左右を見る。西洋風の広い部屋に、大きなベッド。もちろん基本色は黒。そして窓から差し込む白い日差し。


【ほんと……ショウは全然起きないね】


 そして、相変わらず頭に直接語り掛けてくるジンの声。対してショウはまだ寝ぼけているのか、ボーっとしている。


「…………おはよ」

【おはよう、ショウ。さっきディオニスさんが朝ごはん置いていったよ。ショウが寝てるからお礼言えなかったじゃん】

「…………ごめん。あ、おいしそ」


 そう言って、ショウは隣に置いてある朝食に手を付けだす。

 パンはまだ暖かく、香ばしい。


「んまい。このスープも……うん、うまい。ほんと、家庭的な魔王だなディオニスは」


 食べ終わったころにはショウもいつもの調子を取り戻し、肩をクルクル回してストレッチを始める。

 ストレッチを終えたショウは(ジンの指示で)服を整え、髪を正し、城の玄関へ向かった。


***********************************************


「──うむ、時間どおりに来たようだな」


 城の門の前には、これまた黒い馬車と、仁王立ちのレーグ、そしてディオニスが荷物をまとめていた。


「おぉ、馬車だ! すごッ!」


 初めて見た馬車に興奮が隠せないショウは、黒い馬を撫でようとするが──


「あ、お前!あんまり不用意に触んじゃねェぞ。その馬一匹でこの城1つ建つぐらい高価なんだからよォ」

「…………まじかよ。なんで!?」


 ショウも流石に撫でようと差し出した手を引っ込める。


「あぁ……その馬は特別製でな。『騎国』から取り寄せた一級品なのだよ。たった一匹でこの荷台を動かすことができる馬力と、御者を必要としない頭脳を兼ねそろえている」


 その『騎国』とやらが一体何なのか全くわからないが、この黒い馬がどれほど凄いものなのかは、なんとなく理解できた。


「そんな高価なものが二匹も……ヒェッ」


 朝食によりせっかく上がった血糖値が、引いていくのを感じた。


「時間がない。話は馬車の中でしよう」


 レーグに急かされ、馬車に乗り込む。

 馬車の中は、外から見たよりも広く感じられた。


「俺窓際でいいですか?」

「クハハ、好きにしたまえ」


 馬車はいい。ガタゴトと揺れる荷台が、電車や船を連想させる。また、速度も上々で後ろに流れていく草原の景色もいい味がある。


「お、見て! 城がもうあんなに小さく見えるぞ!」

「…………へぇ。そりゃあ良かった」


 こちらを見ようともせず、ディオニスが返事する。

 お城、魔王──ここで、ショウの頭に疑問が一つ浮かんだ。


「ところでさ『魔王』って何人もいるもんなのか?」


 ディオニスは『魔王第四柱』と、レーグは『魔王第二柱』と名乗った。

 当時はそう不思議に思わなかったが、今思えばおかしい気がする。


「ああ。『魔王』は全八柱から成る一つの“勢力”よ。吾輩は『第二柱』であるといった具合に序列がある」

「序列?」

「まぁ……基本昔からいる順番だと思ってくれてよい」

「ふむふむ。でも“勢力”って?」

「うむ。よい質問だ。今この世は『六大勢力』と呼ばれる六つの勢力が力の均衡を保っている」


 レーグは右手と左手の人差し指で六本の指を立てる。


「──力を持つ八人で構成される『魔王』

 ──古龍人と古獣人、総勢七人で構成される『亜王』

 ──かつて魔龍討伐に貢献した六人により構成される『新王』

 ──世界の規律を維持する『ウラヌス教』

 ──七英雄が守る七つの国『七国』

 ──絶対の技術で強い武力を誇る『武装国家ヘキサ』

 この六つが『六大勢力』なんだが……」


 ──もはや常識。そんな様子でレーグは聞いてくる。

 しかし、ショウが聞いたことがあるのは辛うじて『魔王』のみだった。


「いやぁ、ほんとに分からないんだよな、この世界のこと。そもそも今から行くのがどこかなんてのも……」

「今から行くのは『魔王第七柱』のところだ。『孤高の姫君』と呼び声高い新参の魔王だな」

「……へぇ。『孤高』か」

「うむ。魔王位を得て以来、領地の外に出たことが無いらしい。外部ともあまり関わらないようにしているようでな」


 馬車はまだまだ加速し、森の小道へと入っていく。

 そして3時間ほどが経過し、ようやく馬車が止まる。

 馬車のドアが叩かれ、開けるとレーグが待っていた。


「──ショウ、ここからは歩くぞ」

「歩くって……どこに?」

「──こっからもう見えるだろォ」


 そうディオニスが顎で指すのは、少し高くなった土の丘だった。


「あれが『壺』……魔王第七柱ローリィ・センティピードの統治する地だ」


一章が本格的に始まります。

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